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ダンジョン

少し歩くと、大きい人の影が見えてきた。


「ガイアスさんですね」


「わかりやすいからいいよね〜」


近付くと、近くにタランがいる事もわかる。


何故かお互い遠慮しながら話してる。


「何やってるんですか?」


「あ、そう言えばあいつら初対面か。タランって一目で相手の強さがわかるからガイアスみて驚いてるんだろうな


「なるほど……」


『あそこがダンジョンですか?そうは見えませんが』


奥には高さ5メートル程の穴があった。それだけだ。


「ああ、あそこは入り口だよ。カードに魔法をかけて貰ったでしょう?それが有るとあそこの下に扉があるんだけどそれが開くんだ。……まあ、見たらわかるよ」




少し歩くとガイアスさんとタランと合流する。


「やっほ〜2人とも仲良くしてた?」


「あ、ローヴェン!この人がガイアス?凄いわね!」


「ああローヴェンさん。では参りましょうか」


3人でワイワイしながら奥へ進んで行く。


「ダンジョンか……冒険者っぽくなってきたね」


『ぽいではなく立派な冒険者ですけどね』


なんだかんだで私もワクワクしている。


「さあ!行こうか!」


『!?マスター!その言葉は前回を思い出します!』


「前回って何よ……」






ローヴェンさん達について行き洞窟の中に入るとそこには重厚な鉄の二枚扉があった。


鉄だろうか?どこか金属のような黒い扉は幾何学的な模様が紫色に光って幻想的であった。


「ここに適当でいいからカードをかざすんだよ。こんな感じで」


ローヴェンさんはそう言ってカードを扉に押し当てる。


すると、ゴゴゴと思い何かを引き摺るような音と共に扉が開く。




横開きで。


「そっち!?」


「わかるわかる。初めはパカって開くかと思うよね」


「私も初めは驚きましたね」


「私はどうだったかな?覚えてないや」


『非効率かと思えばこの魔法陣を崩さなくてもいい。理にかなっていますね』


魔法陣とはちょっと高レベルで尚且つ持続しやすい魔法を使うときに使う魔法だ。


一応私が呼び出された時も魔法陣の魔法を使ったらしい。


「じゃあ、これ1人しか入れないから。先に入って待ってるね」


すっと中に入って行く。


するとみんな手慣れた感じでどんどん中に入って行く。


私が行こう。


持ってるカードを扉に近づけると。


開いた。


「おお……」


『では次は私ですね』


「うん。先に入ってるからね」


そう言って中に入る。


中は赤い光、緑色の光が差し込む扉が更にあった。


『扉の次に更に扉ですか。面倒な』


いつの間にか後ろにイオちゃんがいた。


「お、きたね。じゃあ説明しよう!ここに来る前にも言ったと思うけど、あの赤い光が差し込んでる部屋が前に行った階層のポイントに行けるポイントだよ。あの緑色は一回層へ続く階段だよ〜今日行くのはあそこだね」


成る程。


「あの、一回って基本的なモンスターって何が出ますか?」


「ん?ごぶりんとかだよ?あ、ゴブリンじゃなくてごぶりんね。なんか戦えそうな感じではないよ。ちゃんとしたモンスターが出てくるのは10階層からだよ。今日は裏技使うからショートカットするけど」


「裏技?」


「さあいこうか!」


何か聞く前に扉に入ってしまった。


というかその扉は二枚扉なのに引き戸なのか。







中に入ると、そこは岩がゴツゴツしているまさにダンジョンって感じの場所だった。


「よーし!ガイアスやっちゃって!あ、みんな固まって」


何やるか知らないけど従った方がいいって体が感じとった。


『この男は何かしらやらかしますよ。私の手を離さないでくださいね?』


「う、うん……なんで恋人繋ぎ……」


イオちゃんが指と指を絡ませてくる。


「じゃあ行きますよ!直下型大穴くり貫き(ボウリング)


ガイアスさんがいつの間にか持っていた銀色の剣で床を貫くと……


「え?」


「え?」


『ほう?』


私達は真っ逆さまに下に落ちる。







どのくらい経っただろうか?少なくとも100層は破ったと思ったら、地面が見えて来る。


「!?【エア・クッション】!」


「【エア・クッション】」


「ひいいいいい!!!??え、【エア・クッション】!!!!!」


私、ローヴェンさん、タランの順だ。


【エア・クッション】のお陰で傷付かずに済んだ……


「ここは?」


「どのくらい?」


「そうですね。あのくらいの手加減だと大体160階くらいかと。多くても400階ですね」


「……え?」


「よん……ひ、ゃく?


私はちょっとよくわからず、タランは現実から逃げていた。


「よっし!じゃあここら辺で狩ろうか!取り敢えず10000体をノルマにしよう!大丈夫!10日分の食料と水ならある!」


「……え?いちまん?」


「え?なにいってんのこのひとたち?????」


『ルーネ様の分は私が負担します!』


「あ、じゃあちゃんと規則守ったらイオはルーネのこと好きにしていいよ。なんならこの媚薬をプレゼント」


「っふ、ルーネ様に最適の媚薬はもう私が作っていますが……貰っておきましょう」


何やってんのこの人たち?


「私はもう少し下で狩りますよ」


「もう少し下ですか、わかりました(10階くらいかな?)」


と、私が言えば。


「わかったわよ!やってやればいいんでしょう!400って確定してるわけじゃないもの!200の可能性だってある!(もう少しって、5階くらい?)」


タランが息を吹き返し。


「わかった〜じゃあ俺がこいつらを見とくわ〜(10000階くらいかな?)」


ローヴェンさんが手を振ってガイアスさんを見送った。






それからこのダンジョンを見渡す。


基本的に見晴らしが良いが、所々に仕切りのように道が分かれている。


イオちゃんを置いて少し出かけると、虎が現れた。


「……虎?」


「がるるるるるる……」


私を見るや否や臨戦態勢になる虎、それにつられて私も剣を抜く。


「グラガアアアアア!!」


雄叫びとともに私に向かって飛んでくるが。


「遅い」


右に少し避け、足を切り落とす。


足がなくなった虎はバランスを崩し不時着する。


「キャイン!」


……犬?


ま、まあいい。それから首を切り取る。


一瞬の後に虎が消えて、黄色い石だけがそこに残る。


「これは……?」


そう思って手に取ると。

ピっと機械音が響く。


音源をたどって見るとどうやらギルドカードから出たらしい。


「なんだろう」


見てみると。


==================================

冒険者カード

冒険者ランク E

名前 ルーネ


現在地 無限ダンジョン?階


討伐数1

===================================


なるほど、討伐数が上がったのか。


じゃあこれを10000にすればいいのか、多くないか?


どうしようかと歩いていると、とある場所にたどり着く。


「……これは……モンスターハウス……」


モンスターハウス、その名の通り大量のモンスター達が跋扈する空間である。


「……うん、ちょっとこれは無理だね」


諦めて普通に倒すことにした。



その後に石のことをローヴェンさんに話したら。


「ああそれ?換金できるよ黄色は中位。ってそっか、言ってなかったね。

魔石には位があるんだ。青、緑、黄、赤の順に位が高くなるよ」


との事だった。







「はぁはぁはぁ……」


今私は走っている。


すると銀色の何かが肩を掠める。


「っく!?」


後ろを振り向くとそこには仮面をつけた二本足で歩く鳥みたいな何かがいる。


名前は知らないが、明らかに普段いる奴よりも強い。


普段のやつなら十回切ればで倒せていたが、こいつは二十回切ってもなお平気だ。


強さ的には魔王軍の幹部クラスだろうか?


あの羽を飛ばす攻撃は10秒に一回しか撃ってこない。


次に撃ってきたら方向転換で剣を突き刺す!


「きしゃあああああ!!!」


鳥っぽくない声で羽を喚き散らす。


その瞬間。


「【エア・クッション】」


後ろに【エア・クッション】を展開し、羽を私の周りにそらす。


その瞬間方向転換。


見えた!距離は6メートルもない!


一歩で目の前に現れ。


そのコンマ1秒にも満たない間で魔石を傷付ける事なく三発剣で突き刺す。


「くけえええ!?」


相手がバランスを崩したところで足をかけ!


「くえええ??!」


「【ファイア・ボム】」


中級魔法の【ファイア・ボム】でとどめを刺す。


「く……くええええええぇ」


すると、鳥モンスターはしゅんと体が消えてコロンと軽快な音とともに赤い石が落ちる。


「魔石……」



カードを確認すると1998の文字が1999になっていた。


「あと8000体か……そこ」


ここは油断できない。カードを見るだけで油断していると思われて馬鹿な魔物に襲われるのだ。


いや、ここではモンスターと言うのだが。


どうやらダンジョンでできた魔物には魔石という強さに比例して大きく、色の濃い石が出て来るらしい。


そしてそんな魔物のことをモンスターと呼ぶ。


私がナイフを投げた先にはイノシシ型のモンスターがいた。


絶命はしていない。中々の生命力だ。


「今日は、イノシシ鍋かな?」


そんな冗談が言えるほどにはこの環境に慣れていた。


今日でこのダンジョンに来て3日目。


残りの期間は7.5日、残る討伐数8001






その頃〜


「やっぱり刺激がないわね〜」


とある女がいた。女はなかなか強く、階層もそこそこ行っていた。


そこで今日は前人未到(とか言われちゃってる)109階層に行ってみようと考えていた……そして女は穴に落ちる。


「え?え?あな?なんでこんなところに!?」


「いや!まだ死にたくない!だれか!誰か助けて!」


そう叫んでも誰も助けてくれない。


地面が見えて来た時に。


ああ、死んだな。


女は死期を悟った。


「あ、ごめん。まだ治ってなかったか」


だが女の命は1人の男によって助けられる。男の名前はローヴェン。


今日も今日とて女を落とすのである……





ダンジョンに篭って5日目になろうとしていた。


私の討伐数は6980。


これなら7日目位で10000体は倒せそうだ。


「あ、あなた。女なのにこの環境に5日もいてよく耐えられるわね?私そろそろギブアップしたいんだけど」


「お前まだ5000体しか倒していないのによくそんな口聞けたな。はい、食料」


「うるさいわよ!ここ200階層よりも強い敵がいっぱいいるもの!絶対ここ300階層よりも下よ!ありがとう」


何だかんだ言いながら最後はちゃんとローヴェンさんにお礼を言って食料を受け取る。


「はい、イオとルーネも」


「ありがとうございます……」


『私は要らないのですが、まあ貰っておきましょう』


そう言って()()()()を受け取る。

ビー玉くらいの大きさのそれは私達のご飯だ。


口に放り込むとこの世の全ての苦味を凝縮したような感慨深過ぎて唾液と涙が止まらない味なので噛まずに飲み込む。


「うげぇ……やっぱりこれ食べた気にならない……ローヴェンもっといい奴ないの?」


「え?そう?俺は錬金してる時はこれと不眠薬使って5カ月徹夜する時あるけど気にならないよ?」


『ルーネ様、あの男やはり可笑しいですね。人間ではありませんよ』


「言い過ぎ……じゃないかも……」


5ヶ月不眠不休で錬金するって何作ってんだこの人……


「いやいや!言っとくけど凄いからな?普通は10年で作るものを5ヶ月で済んでるんだよ?」


「何作ってるのよ……」


「え?ん〜〜〜〜〜教えていいのか?これ?まあいいか。俺が作ってるのは——」


「いや!辞めて!これ以上面倒な事に巻き込まないで!」


年相応に怖がっているタランを見ると、最初の頃が嘘みたいに思えて来る。


……まだ5日しか経ってない……ここ時間の感覚がおかしくなるんだけど……


『私の体内時計でわかりますし……ルーネ様、アドタファンをお忘れですか?可哀想なのですが』


……わ、忘れてないよ?


『まあ!ルーネ様には私1人がいればそれでいいのですけどね!』


「そうだね、随分頼らせて貰っちゃってるよ」


ニッコリとイオちゃんに笑顔を向けると。


『はう!ルーネ様!その笑顔はプライスレス……』


イオちゃんはくねくねしている。


「こいつら変よね……私よりも成績出してるから文句言えないけど……」


「はぁ、言っとくがイオは見たところ状況把握能力が圧倒的に高い……というか高すぎる。なんかスキル持ってる?それに武器も多く保有してる。イオみたいなタイプは武器が多ければ多いほど強いし制限されればされるほど強くなるからな。あと身体能力もかなり高い。ぶっちゃけBランクも貴族に気に入られれば直ぐになれるよ」


イオちゃん凄い!


『ふふふ、今日は機嫌がいいのでお前の事を認めてやりますよ白髪男』


イオちゃん単純……


「しらが……地毛……じゃあ無いけど老化で出来た色じゃ無いからね?で、ルーネは基礎がしっかり出来てるし、こういう長期の戦いは慣れてるのか精神的な動揺もあんまり無い。魔法を多彩に操れるからイオと同じ感じで手数を使って追い詰めるタイプだな。こういうタイプははっきり言って厄介だ。だから今のスタイルのままで突き進めばいいと思う。問題面は身体能力が低い事だな。強化魔法無しだと結構ここの相手はきついだろ?」


「そうですね……強化魔法を使わないとなると一撃必殺の待ち伏せ以外勝てる手段は無いと思います」


そう、それが私の弱点。

私は勇者としてこちらの世界に来たが結局は平和な日本の1人の少女だった。


そんな私が強いはずも無く、最初は魔力の使い方を習わなければいけなかったが、そんな事は御構い無しとリストリアーナ国王が魔王討伐に行けと言い私を追い出した。


そこでリャーナ達と出会い、リャーナに格闘技をフィーネに魔力の使い方を教えて貰ったのだった。


まあ、この世界に来る途中で神さま的な人から【無限の魔力】を授けると言われて私の魔力は尽きることがないのだが。


「まあそれはここで狩ってたら身体能力はあがるさ。今どれくらい上がったかわかるか?7000体近く倒したし結構上がってるはずなんだが」


「え、っと……」


どうしよう、全く実感がない。


「あのねローヴェン。この2人全く身体能力上がってないわよ」


どう言おうか迷っていたらタランが衝撃の事を言った。


『まあ、私の場合はそうでしょうね』


「……ううん……タランがそう言うのなら事実だろうし……まあ、取り敢えずは狩を続けよう」


「ちょっとローヴェン!私は!」


「え?タランは身体能力あるから技術と頭を使いましょう」


「それ前も聞いた!」


「前から身体能力以外技術が改善されてないんだよ!ガイアスは身体能力アホみたいに使うがそれでも技術なら最高峰の位置に君臨してるからな!」


「あの人間辞めてそうな人と比べないでよ!」


……行くか。


『行ってらっしゃいませ。私は少し上に帰って食料を補充して来ます』


「え?別にいいのに。まだあるよ?」


そう言ってビー玉くらいの大きさの黒い球を見せて来る。


『……ちゃんとした食事を取りたくないのですか?』


「私取りたい!ちゃんとした料理が食べたい!噛めるものを食べたい!」


「うん……私も食べたいかな……」


『と、言っておりますが?多数決で良いですね?』


「そ、そう?まあいいけど……」


なんでこの人こんなに困惑してるんだろうか?もしかしてこれ以外ちゃんとした料理を食べてない?


『……私が腕によりを掛けて作ってあげますよ』


イ、イオちゃんが同情してる。


『では』


そう言って赤い光に飲み込まれていくイオちゃん。


「行っちゃたか……よし!今日で10000体を狩ろう」


別にイオちゃんに嫉妬したとかそういう訳ではない。ただ、何故か今。無性にモンスターを倒したくなった。


「……それってただの戦闘狂じゃぁ……」


「ローヴェンさん人の心読まないでください!」






目の前にはあの仮面をつけて二足歩行で走る鳥のような何か。


最近はよく見るようになり、対策も出来ている。


現れた瞬間に奴に向かって走り出す。


「きくけぇえ!?」


やっぱり鳥っぽくない声を出して、銀色の羽をナイフのように私に飛ばして来る。


「【ストーム】」


それを私は風属性の初級魔法【ストーム】で迎え撃つ。


【ストーム】は自分の半径10メートル以内の指定した範囲に旋風を起こす魔法だ。


所詮は初級魔法。普通にやれば羽は風を突っ切り私目掛けて飛んで行く。


しかし。


「吹き荒れろ!」


【ストーム】に更に魔力を流し込む。


その魔力で【ストーム】は暴れまわり私の管理を聞かなくなる。


だがそれでいい。


暴れている【ストーム】は先程の【ストーム】のうん倍の威力を誇っている。


突っ切るかと思われていた羽は風に囚われる。


「【セイクリッドバリア】」


これは聖属性の魔法。


見えない壁を貼るだけの簡単な魔法だが、この魔法、私との相性が最高だ。


これは魔力を注げば注ぐだけ強度が上がる。


つまり無限の魔力を持っている私からすれば最強の盾になる。


まあ、使っている間は動けないんだけど。


「きぃい!きしゃああああ!!」


その間にも鳥が【ストーム】に向かって羽を飛ばしている。


そして。


「きいいいいい!!!」


【ストーム】から出てきた羽や小石が鳥を襲う。


「きゃ、ききゃきゃ、きゃ……」


そう言って声が聞こえなくなると【ストーム】を別の【ストーム】で打ち消す。


近くに赤い肉の残骸のようなものが転がっていて、少し経つと赤い魔石だけがコロンと落ちる。


魔石はモンスターの命だ。


なのであれくらいの攻撃ならば中にある魔石は壊れない。


のだが……


「流石にグロい……」


別に私もこんな光景を見たくはない。だが、これが一番効率的なのだ。


剣も痛まず体も傷つかない。


使用するのは無限にある魔力だけ。


あのモンスターは逃げないし、その上普通に強い。だから戦うだけ無駄なのだ。


しかし、あの光景を見たからか胸が痛い。


苦しい。


「っは……っく……ああ、ああ……」


おかしい。

胸が痛すぎて手をついてしまう。


「っぐ、あ、ああ……」


上手く言葉にできない。

まるで喘息の様な状態だ。


そんな中、私は魔石を【収納の指輪】に入れていた。


こんな時でも、体は動くようになったんだな……


不味い。こんな所で寝たら、モンスター……に……


急激に眠くなり、それに逆らえずに眠ってしまう。


ああ、私死んだな。








目を覚ますと、そこは雲の上の様な場所だった。


「ここは?天国?」


私はベッドの様なもので寝かされていた。


「ふふふ、そうとも言えるわね」


「え?」


突然後ろから声がして振り返って見ると、そこにはピンクの髪の羽を生やした女性がポツンとテーブルと椅子がある場所の椅子に腰をかけていた。


「貴方は?」


「あら?私の名前を聞いちゃう?いいわよ。私はガブリエル。貴方に力を与えた物の1人よ」


「はあ、力?」


話していると顔がよく見える。


とても美しい顔つき、しかし、何故だろうか、そこには恐怖を覚えてしまう。


「あら?ごめんなさいね。私の顔が怖かったかしら?」


「い、いえ、とても綺麗ですが……」


「ええ、わかるわ。綺麗なのに怖いのでしょう?私の美しさに頭が追いついていないから」


その通りだ。綺麗だが、どう表せば良いかわからない。ただ、言葉で表すなら……


「「怖いくらいに綺麗」」


「!?」


「あら、当たっちゃった!私達って以心伝心なのね」


「あ、あの。ここは?」


「あらごめんなさい。私ったらすっかり忘れてたわ。ここは天界。天使たちが済んでいる場所。私は天使のガブリエル。貴方を読んだのは他でもないわ。貴方の力を一部解放するため!」


解放?


「ええ!貴方のレベルがさっきの鳥ちゃんを倒したことで上がったのよ。来たるべく最悪に向けて、貴方にはもっと強くなってもらわないといけないから」


「それは、魔王では?」


「違うわ、全然違うわ。魔王はちょっと強くて賢いけどそれでもただの魔物なの。最悪はもっと先。人の悪意によって形作られるの。貴方にはそれを倒してもらいたいの。大丈夫。他の子も力を貸してくれるわ!じゃあまたね!」


「え、ちょっと!」


意識が遠のいて行く。

話すだけ話してそのままさようならとは、天使もなんだか考えていた存在と違う……






「っは!」


目を覚ますとあの洞窟だった。


体には外相は見当たらない。


よかった。モンスターに襲われなかったみたいd——


『マスター!!!』


「え?ちょっとイオちゃん!?」


いつのまにか後ろにいたイオちゃんが抱きついてくる。


『マスターマスターマスターマスター!!!!』


そのまま私のお腹に顔をグリグリと擦り付ける。


「ど、どうしたの?」


『どうしたのではありません!買い物をしている最中にマスターが突然苦しいと言い出して、それから回線がプツリと遮断されたのです!見てみたらマスターが無防備で寝ていますし、周りのモンスターは集まってきましたし……わ、私は、マスターがいなくなったら、また1人なんですよ?また、どこかで工房を構えて、感情を消して……そんなの嫌です!お願いですマスター。どうか、居なくならないでください……私を1人にしないで……』


「イオちゃん……」


『そして願わくばマスターの子供を産みたいと考えて!』


「台無しだよ!」


……まあ、でも。


「ごめんね。次はもっとちゃんとするよ」


迷惑をかけたのは事実だ。


『はい!』


私に向かって笑うイオちゃんは、その美貌と相まって満開の花を連想させた。


「……ん!じゃあ、戻ろうか。今何時?」


何故か出てくる欲情を咳で振り払い、聞きたいことを聞く。


『はい。今は16時38分ですね』


「そっか……」


私のギルドカードを見てみると、討伐数が8790になっていた。


「このペースなら今日中に終われそうだね」


『頑張ってください。応援しています』


……何故かイオちゃんがより人間らしくなっていた……前の感情を取り戻したのかな?



「あ」


前を歩いていると、虎の様なモンスターが出てくる。


ここら辺で頻繁にいるモンスターだ。ぶっちゃけ鳥の方が強い。


「よし、じゃあ切ろっか」


腰にかけたボロボロの鉄剣で切りかかると……


「え?」


まず、一歩踏み出した。


普段と同じくらいの身体強化魔法で。

するとどうだろうか。

普段の5倍くらいの速さで虎に向かって行くではないか。


「ちょ!?」


私は驚きの声を上げると。


「グルガァああ!!?」


虎も驚きの声を上げる。


剣で突き刺すとか色々考えていると、虎にぶち当たる。


「クゥウウウン……」


と、犬みたいな鳴き声を出して虎は息を引き取った。


コロンと赤い鳥よりは小さい魔石が転がった。


『……マスター……』


「違うの!違うから!」


何に対して違うって言ってるかわからなかったけど、取り敢えず弁明をしておいた。

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