この世界につき、そしてパートナー
イオに言われるがままベッドに横たわっていると、コードがいろんなところから出てくる。
「イオちゃん?大丈夫?これ大丈夫?」
『心配ご無用、マスターに外的影響を及ぼすことはありません』
よく見ると、コードは手錠の様に輪っかの様な形をしており、その中に私の腕や足が入った。
『……血管などに問題なし、動脈正常、これにより当機とのリンクを結ぶことが可能であることがわかります。では、マスターこれを』
そう言って何処からともなく腕輪の様なものを差し出してくる。
「腕輪?」
『超多機能腕輪型契約人工知能通信制御装置です。俗称では超次世代型通信機と言います。簡単に言ってしまえばマスターの持つ超原始的長距離通話機の高性能型と考えて貰えば宜しいかと、というよりもマスターは何歳ですか?遍歴から確認するとマスターの年齢は一万四千五百七十八歳なのですが』
「二十歳ですよ!」
失礼過ぎる。
……これってもしかして、私って異世界に飛ばされたんじゃなくて未来の地球にいるの?
イオちゃんの会話を聞いてそう考えてしまった瞬間、体から何かゾワっとする悪寒にも似た何かが体の中を駆け巡る。
……いや、そんな事は考えないでおこう。
『ああ、そういう事ですか乙女はいつでも二十歳、分かりますよ。しかしサバを読みすぎじゃないですか?1万歳程度にしておきましょうよ』
「絶対にわかってないよね?」
『では、お遊びはここまでにしましょうか。超次世代型通信機の使い方を教えます』
そう言われて私は腕にはまっている銀の腕輪を見る。丁度天辺あたりに赤い宝石の様なものが付いている。
『超次世代型通信機はその赤い宝石の様なもの、通称永久内部仕事力生成機ですが、マスターの持つ超原始的長距離通話機の様に充電を必要としません。私の中にも、人理乖離的永久エネルギー生成機関タイプΩという、超次世代型通信機よりも遥かに高性能かつコンパクトな永久内部仕事力生成機があります。所詮は7000年前の遺物ですよ。やはり最新機種には敵いませんでしたね!おっと、性能ではありませんでした。
まず、使い方は簡単です。
超次世代型通信機にして欲しいことを話すだけです。
超次世代型通信機自体にも拙いながら人工知能が備え付けられておりますので、大抵のことは出来ます。
そして、超次世代型通信機は当機といつでも会話することを可能としています。更にお子さんから大人まで大人気のゲームを使用する事が出来るのですが……残念ながら全ての会社が潰れてしまったので、無理ですね。
世界通信回線連続組織はこのデフィリール工房で集めたものならばあらゆる場所で閲覧可能です。
【小説家になろう】という大昔の小説投稿サイトなども閲覧可能です』
「簡単に言うと?」
『ほぼなんでも出来ます。この工房から世界終末化破壊爆弾をマスターのタイミングで撃つことも可能です。断言しましょう。マスター、貴方はこの世界を掌握したも同然です』
「そ、そんな怖いこと言わないでよ。私はそんなこと考えてないし」
必死に手を振り抗議する。
するとイオは。
『分かりました。それではマスター、これから何処へ行くのですか?』
「あ、そうだね。先ずはピリオドにかえ……依頼受けてたの忘れてた!危なかった……」
『それではマスター、これを』
そういい、スマホを渡してくれる。
「あ……うん。ありがとう」
『一応充電をしておきました。パーツを替えようかとも思いましたが、確認の為改造はいたしませんでした』
スマホ。
……私は、まだ諦めきれてないのか。
「そっか……えっとね、イオちゃん。私がここにきたのは——」
という事でイオちゃんに経緯を話した。
『成る程、ここが新人類に見つかっていたわけですね?分かりました。排除します』
そう言って何処からともなく棒の様なものを取り出す。
「イオちゃん、その……それは?」
『生物完全死滅ウィルスです。これが擦ればウィルスにより細胞を持っているものは細胞の核が当たった場所から死滅していき、ウィルスが正常な核に移り……を対象の核が完全に死滅するまで行います。
ああ、マスターの細胞をこの中に入れておけばマスターを襲うことはありませんし、核を捕食しないと数秒で死に絶えるので感染能力は極めて低いです。ワクチンもあります』
怖かった。
『昔は女性が男性にこれを撃って『死にたくなかったら私の子を産め!』と脅迫していたと言うなんとも仲睦まじいニュースが流れていましたね』
何処が?
それ男の人絶賛死ぬんだけど。
「えっと、この工房でって見つかったらまずいと思う?」
『肯定。最悪宇宙が滅びるか、『王』が止めに入りにきますね』
「『王』?」
『ああ…………そうですか……マスターは知りませんか。あまり知っておいても良いものではありません。聞かないことを強く推奨します』
その言葉はとても重く、イオが人工知能だとは思えなかった。
それに立ち向かうほど私は強くなく。
「じゃあ、どうやって報告書にまとめようか?」
やはり逃げることになった。
『そうですね。ではこの工房の情報全てをこれに入れましょうか。そのあとデリートです』
それは虹色に輝く四角い箱だった。
「それは?」
『超小型大容量電子化番号収納機ですね。容量は驚きの10^3^1048576^1024です。これならばこの工房の情報を全て入れる事が可能です』
「えっと、じゃあ兵器は?」
寧ろそれが一番危ないと思うのだが。
『兵器は私が全て持っておりますので安心してください。と言うよりも、情報を剥き出しにしていた47代目が悪いのですから。次世代型コンピュータなどを使っていて……当時から3000年も前のものを『味があるでしょ?』と言われても、『あ、はい』となりますよね』
「そうなんだ、パソコンはもう作られてなかったんだ。って!そうじゃないよ!武器はどこにあるの?」
『私が持っている圧縮型四次元世界に収納済みです。』
そう言って無造作に何もないところから銃の様なものを出してくる。
『マスターも持っていましたよね?』
「え?ああ、【収納の指輪】ね」
『その様な名前ではありませんでしたが、それは紛れもなく天才、アシュテニーガ様が発明したものですね。レアものですよ』
「そうなの?じゃあ魔法とかイオちゃんは使えるの?」
そう。これが聞きたかった。完全に魔法が使えなさそうだが、使えるのだろうか?
『無理ですね。しかし、それに近いことは可能です』
「そうなんだ。ねえ、イオちゃん。イオちゃんはこれからどうするの?」
『?勿論マスターについていきますよ』
あ、確定なんだ。
じゃあ、手間が省けたかな?
『ほう?手間とは?当機を誘う気だったんですか?』
「なんで心がわかったの!?」
『ああ、言っておりませんでしたね。リンクが強く結ばれたことでマスターの考えがわかる様になりました』
……なんかあれだね。凄いね。未来の世界、ほとんど魔法だ。
『それで、マスター?何を言うつもりだったんですか?』
「え、いや、そ、その……わ、わちゃ、私と一緒にいませんか?」
〜〜!!!恥ずかしい!何を言うのか分かっているのに言わされてもっと恥ずかしい!
『……仕方がないですね、では、いつまでもお供いたしますよ。マスター』
「……ありがと」
イオちゃんは少し泣いているように見えた。
まあ、見間違いだろうけど。
エレベーターに乗り、また1階へ戻る。
『確か、報告書にあったのはここなのですよね?』
「うん、ここの扉を開けたら、未知の魔物が出て来たって」
『……これは非常用扉ですね。奥にいるには警備用ロボットです。しかし、今の人類に与えてまずいもの、と言うことも事実です。消しとばしましょうか』
また、何処からともなく銃口がプックラ膨らんだ銃を出す。
「それは?」
『これは超高電圧発出銃です。これの近くにいるだけで前世代式歩行機械はクズ鉄になります。そこからは煮るなり焼くなり好きに出来ます』
「煮ても焼いても食えなさそうだけどね……」
『ジョークですよジョーク。人工知能的インテリジェンスジョーク』
「そ、そう?……よし、じゃあ突入しようか!」
『了解、行きます』
バッと扉を開けると、そこには無数の赤い目玉が並んでいた。
少し寒気を感じていると、【ビリビリビリビリ】と、何か……確実にあの銃が発生させたであろう音とともに、赤く光っていた目玉は黒く、光を失った。
「ねえ、イオちゃん。この子達、収納出来ない?」
『出来ますが……まさか、マスター浮気ですか?あって1日も経っていないと言うのに……敬服いたします』
「私の心呼んで!」
『まあ、確かにこれだけの数を潰すのは流石に骨が折れますからね。当機に骨はありませんが!……いえ、ありますね』
「だ、大丈夫?さっきから言ってる事がなんかおかしいけど?」
この機械がした事を羅列してみよう。ジョークを言ったと思ったら、銃を同族にぶっ放して、やっぱりジョークを言う。
無事、人間に近付いていると考えればい良いのか、機械から離れすぎててお前それでいいのか?と思うべきなのか……
それから、全てのロボットを回収すると、夜になっていた。
「夜……そろそろ帰ろうか。ここから頑張れば30分でつけるし」
『了解。マスター、全自動運転人工知能付き四輪車をお使いになりますか?』
たまに何と無く何かわかるやつあるよね。
「車?お願いできる?」
『了解。では呼びましょう。俗称は【クレアちゃん】です。なんでもcarからとった様ですね』
そんな恐らく今後一切使わないであろう知識を教えてくれると、目の前に車が表れる。
……なんだろう。車なんだけど……
「丸い」
丸かった。真ん丸の球体にタイヤが4つ付いている感じだ。
大きもそこ等辺を走っていた軽と変わらない。
『コンパクトで美しいですよね。因みに、これが47代目が愛用していた個人所有手動4輪車です。機能美がなっていませんね』
そこにはスポーツカーのような物があった。
黒いメタリックなカラーリングに、アヴェンダドールもかくやと言うほどの低い車高、バックは透けており、そこには仰々しいエンジンが輝いている。
「か、カッコいい……」
『仰天!?、マスター!この【クレアちゃん】も可愛いですよね!?それは確かに男ウケが良かったと記憶しておりますが、ああマスター!このクレアちゃん、変形ができるんですよ!当機やほかのマザー型が47代目に【クレアちゃん】の良さをわからせるためだけに改造をしまくって、今では他の【クレアちゃん】と合体できる様になりましたし、この1600倍にまで体積を増やすことに成功、水素爆弾からの攻撃にも128回耐え、当機と同じ人理乖離的永久エネルギー生成機タイプWΩを保有しています!人工知能もマザー型程ではありませんが、ほぼ人間の思考回路と同じです!話し相手にも困りません!どうですか!!!!!?」
なんだか凄いことを言っていたが、今は無視だ。
この車の名前はなんて言うんだろうか?
『……それは【ダークウェング】と言います。最高時速は1500キロほどです。セーフティを外すと周りの色が逆の色に見えるので注意が必要です』
す、凄いイヤイヤに言われたが、やはりかっこいいな。欲しい。
『いえ、もうそれはマスターの物ですが……【クレアちゃん】に乗りませんか?安全ですよ?』
「そう、だね。【ダークウェング】は見て、暇があれば使う様にしようか。普段は【クレアちゃん】を使おっか」
『……47代目も同じ様なことを言っておりました』
【クレアちゃん】 に乗り込むと。
『むー、新しいマスターは私の事が嫌いなんですか?』
と、可愛らしい女の子の様な声が聞こえる。
「あなたが【クレアちゃん】?」
『そうです!私はこの車両に搭載されている人工知能、【クレア】です!』
可愛い。
だがまあ、確かに本人?の前でこの子の方が良いなんて言われたら傷つくだろう。
「ご、ごめんね?」
『えへへへ〜嘘ですよ〜。確かに少しムッとしましたが、昔のご主人様もそんな感じでしたし、慣れちゃいました!』
可愛い!
『おいコラ誰にでも股開く変態、何勝手に人のマスターを陥落させようとしているのですか?壊しますよ?』
『え〜、貴方がご主人様にちゃんと気に入られていれば良いだけじゃないですか〜やっぱりダメですね〜ご主人様?私、人形にも慣れちゃうんですよ〜凄いですか?』
「すごいね〜可愛いなあ……」
さっきからピッピピッピ言った後に私と話しているのはなんでなんだろうか?
『マスター!ダメです!惑わさられてはダメです!!!』
ダメと言われても良くわからないが、イオちゃんが叫んでいた。
『後1キロですよ〜』
目標……ピリオドに後1キロで着くと教えてくれる。
「2分も走ってなかったね」
『たったの50キロ程度ですから!余裕ですよ!』
もう着くのか。
そう思い、ちらっと町を見てみると。
「……何あれ」
町の中で誰かがすごい速度で逃げ回っていた。
人、を追いかけるのは500人くらいの人だ。
まあ、ここでは普通のことなんだろう。周りも静観してるし。
無視しよう。
『……ここが新人類の町ですか。始めてきました』
「そうなの?」
『肯定、見つかる様なら殺そうかとも思いましたが、別段当機が行くような事はなかったので』
それもそうか。
『着きました〜!!ゆっくりでしたけど良かったですか?』
「うん、ありがとうね!」
『では貴方は戻ってください』
そして、イオちゃんによって【クレアちゃん】は消えてしまった。
「じゃあ行こうか。まずはギルドだね」
ギルドに近付いて気づいた事がある。
太陽がなくなっていた。
「勝ったのかな?」
『謝罪、エラーを吐き出します』
「うん、私も疲れてる」
まあ、ドアを少し静かに開けると。
そこにはあの筋肉達はいなかった。
「え! ?い、いない! ?」
どこに行ったのだろうか?
わからない……あ、マリアさんだ。
「マリアさん、依頼終わらせてきました」
「あら、それは良かったわ。あらら?後ろのお嬢さんは?」
『私はイオと申します。マス……ルーネ様に旅の途中で助けて貰ったのです』
イオちゃんは元の服装とかは良かったので、喋り方とか、私の呼び方とかを変えて貰った。
『当機のアイデンティティ何ですが……』
と、渋ってはいたもののちゃんと変えてくれた。
そういうところは可愛くて好きなんだけど。
『私も大好きですよ!ルーネ様!!!!』
がっつかれると、流石におおぉ……てなる。
「ウフフ、じゃあ行こうかその子も冒険者になるの?」
マリアさんが上品に笑いながらそう話す。
『そうですね。なれるものならなりますが、私はあくまでルーネ様の世話を焼く所存です』
「じゃあ、これあげるわ。冒険者カード」
そう言い、私の持っているものとほぼ同じカードを渡す。
「ええ!?わ、私の苦労は?」
「ごめんなさいね?本当はあの時に普通にあげるものなんだけど、あの時はルーちゃんがいたから、お願いしちゃった!」
「そ、そうですか……」
座り込んでしまった。
『……成る程、これのメカニズムはこうですか。では……文字が浮かび上がりましたね』
「そうそう、貴方のカードに貴方の名前が記載されるの、これで登録は完了よ!さて、あの依頼、どうだったかしら?」
膝抱えて座り込んでいる私に向かって優しく話しかけてくれるマリアさんは聖母の様だった。
男だけど。
「あの、報告書にまとめました」
私がなんとか書いた報告書だ。
この世界、言葉はわかるが、文字が全くわからなかった私は文字を覚えるのに2年はかかった。
それでも、まだ全ての文字は覚えられていないが。
「ふむふむ……良いわよ。それじゃあ報酬として10万ケルンね、後の20万ケルンはちゃんと報告書通りだったかを確認できたらって事になっているわ」
「わかりました。それじゃあ、今日は私はここで」
ぺこりと頭を下げて、【森の鈴亭】に行く。
【森の鈴亭】につき、ドアを開けて中に入ると、受付のお父さんがいた。
「ん?嬢ちゃん、その子は?」
「あ、すみません。この子も一緒になんですけど、3倍の金額を払うので、同じ部屋に置かせて貰いませんか?」
すると、少し考えて。
「いや、別に代金はいらねえ!ただ、あの部屋かなり狭いが、二人で寝れるか?まあ、なんとかなるかもしれねえが」
『大丈夫です。私は床で寝るので』
「一緒に寝ます!」
『マス……ルーネ様、そんな事を大声で堂々と言われると、流石の私も恥ずかしさを覚えます……』
「え?い、いや!ち、ちがうのおおお!!!」
ドタバタと走って部屋に入る。
そしてベッドの上でうずくまる。
顔が真っ赤だ。恥ずかしい……
『マスター、入りますよ』
ノックが4回なり、確認の言葉が飛ぶが、私が了承しようと声をかける前に、ドアが開く。
「マスターはダメだって……」
『マスター』
つかつかと、私の元へ歩いてくるイオちゃん。
その頬は朱色に染まっている。
「え?イオちゃん?」
驚いていると、ガシッと腕を掴まれ、ベッドに仰向けにさせられる。
『マスター、知っていますよ?マスターは押されるのに苦手だと』
「ち、違うの、そういうわけじゃ……」
言い返したかったが、確かにアレシアと初めて関係を持ったのも、彼女が押しかけてきた時だった。
「で、でも、もう少しだけ過ごさない?会ってすぐなんて」
『……そうですね。ですが、私はいつか、ルーネ様を私のものにして見せますよ』
そう言って、私にキスをしてくる。
「んっ……はぁ、はぁ……」
『今日はこれくらいで終わらせましょう。しかし、いつか必ず……』
まるで、機械と感じさせない。唇は本物の人間のように、いや、それ以上に柔らかく、唾液は熱かった。
『まずは、二人で寝ましょうか』
「……もう……」
こうして、ピリオドに来てからやはり濃い1日が終わった。
昨日と違い、二人で私達は朝を迎えた。
ルーネ(*´∀`*)「うーん、私同性愛者じゃないんだけど?」
イオ(*´∀`*)「そうですね、マスターはそうでした」
ルーネ(*´∀`*)「イオちゃんこの街に来てからエラー一杯吐いてるけど大丈夫?」
イオ((((;゜Д゜)))))))「この町やばいんですよ!私のレーダーの範囲に規格外が一杯なんです!これではなく私の体はもちません!」
ルーネ(*´∀`*)「ワカル」