勇者としての死亡
ちょっと前のやつが気に入らなかったのでもう一度やり直します。
リシストリアーナ城。
それは500年もの間リシストリアーナの頂点にあり、やんごとなき身分の方、所謂王族が住んでいる城であった。
今私はその城にいる。
理由は簡単だ。
私はこの世界に地球から呼び出された勇者だった。そして今、勇者の役目を果たしたのだ……要約すると魔王を倒した。
「いや〜それにしても魔王ってそんなに大したことなかったね〜」
そんな軽口を叩くのはリャーナ。短い金髪に慎ましやかな胸。褐色の肌と一般人よりも少し小さい体の美少女といった方が正しい美人だ。
「ダメですよリャーナ。そんな事を言ってしまったら。それに私たち4人がかりでやっと倒せたのですよ?彼の強さは賞賛に値します」
「ハイハイ、全くフィーネはお堅いねえ」
リャーナを諭すのはフィーネ。青い長い髪にかなり豊満な胸と美しい顔立ちとすらりとした背が彼女の育ちの良さが伺える。
「いや、私達が勝てたのは輝夜のおかげだね」
そういうのはアレシア。腰にまでかかるフィーネよりも長い金髪は窓からの光によってまるで本物の黄金のように輝いており、豊満とまではいえないがそこそこはある胸、小さい顔にある赤と青のオッドアイは全てを見通しているように感じてしまう。美人だらけの私のパーティだが、誰が一番魅力的かといえばアレシアが圧倒的であろう。
「そんな事ないよ。でも、今までありがとう」
そういうのは私。全身甲冑で口下手だけど、この3人には心を開くことが出来た。3年間いたこの世界で最も大事な仲間だ。
「そっか、かぐーは今日から旅に出るんだっけ、寂しくなるね」
「ありがとう、リャーナ。私も、みんなと離れるのは寂しいよ。でも、行かなくちゃ」
不意に涙が出てくる。この世界に召喚されて3年。なんども涙を流したが、こんな涙は初めてだった。
私は向こうの世界には帰れないらしい。だけど、ここで止まっているわけにはいかない。
絶対に、帰るんだ。
「ああ、お前には親が待っている。私たちにはない貴重な存在だ。絶対に無下にしてはいけない」
「うん!」
そう言って3人と抱き合う。
今日で最後なのだ。
このくらいのわがままは許してくれるだろうか?
そうしていると、不意にノックの音が響く。
「勇者御一行様、リシストリアーナ王がおよびであります」
「行こうか」
「うん!」
「ええ」
「うん!」
「かぐー私とかぶった〜」
勇者は私だったけど、いつもみんなに助けられた。アレシアがいつも前に出てくれたし、リャーナは元気付けてくれた。フィーネはいつも私に気を使ってくれていた。
……だから、私は皆んなと離れるのがとても辛かった。
無駄に長い石造りの廊下を歩き、7メートルはある大きな扉の前に立つ。
すると、その扉は自然と開き、中の景色が目に入ってくる。
まるで黄金郷。
その部屋は全てが金で出来ていた。
悪趣味だと思いつつ、兵隊に促されるように中へと入る。
そこに居たのはこの国、リストリアーナの7代目国王、リンフォンド・リストリアーナ、私をこの国に呼んだ張本人である。
「まずは、勇者御一行に感謝の言葉を。そして、輝夜殿、ありがとう。何も出来ない私を許してくれとは言わない。貴方が望むのならば私の首をさし出そう。」
「いえ、そんな。私はただ、みんなを救いたかっただけですから」
「本当にすまない……」
彼はそう言って腰を曲げる。
大柄な体型に似合わないその小柄な顔は彼の髪によって隠れてしまう。
彼は優しい王だった。
異世界に呼び出されて狂っていた私にずっと誤っていた。
もうダメだとこの国の者達が私を見限ろうとした時も、彼は味方をしてくれていた。
私が戦ったのは、彼に恩を返すため。
そして、冒険している時に出会った仲間達の国を守るため。
「……ありがとう。私に出来ることは君達の要求を呑むことだけだ。何でも言ってくれ、必ず叶えてみせる」
その言葉に皆んなが反応する。
現国王、リンフォンド・リストリアーナの権力は強い。
それはこの国以外、外国にもその名は轟いている。
圧倒的なカリスマと政治力、彼と話し、卓を囲めばそれだけで彼の下につきたいと思ってしまう。そんな人物。
その人物が、何でも叶えると言ったのだ。
真っ先に動いたのはリャーナだった。
「こ、孤児院を!私が生まれた孤児院を!助けてください!」
涙声で語るリャーナ、孤児院の件は知っている。
よくある話だ、借金によって潰れそうになっている孤児院がリャーナが育った場所、そこは財政破綻で勇者になった私達でさえ返せない程の額を借りてしまっている。
そしてそれは、明らかに正規の利子ではない。数年で金額が数十倍に膨れ上がるなんておかしい。
そして、私達がリャーナの言う孤児院に行った時子供を奴隷にしようとしていた男達がいた。
……あまり気持ちの良い話ではない。
「ああ、わかった。承った……」
「ありがとうございます!」
彼女の夢がやっと叶った。
子供達に不自由な思いをさせたくない。そう常日頃言っていた彼女の願いは今叶った。
「次の者」
「禁書館への立ち入りの許可を!」
「あ、ああ……それだけなら私から大図書館に言っておこう」
「ありがとうございます!」
目をキラキラ輝かせながらフィーネは王を見る。
まあ、わかってた。
「んん!では、アレシア」
「……私は……機構国への立ち入りの許可を」
機構国……確かそこは地球のような機械を作っている大きな国の筈だ。その国はに入るにはとても厳しい検査などがあり、とてもではないが機構国で生まれた人間でないと入国できない。そして、国から出ることも出来ない。
「……なかなか難しい事を言ってくれる。だが、難しいだけで不可能ではない!いいだろう、アレシア。必ず機構国の出入りを認めさせよう」
これが王のカリスマなのだろうか?この人に任せておけば絶対に大丈夫だと思えてくる。
「は!ありがとうございます!」
そして、王が私の方を向く。
「最後に、輝夜殿」
「はい。私は……名前が欲しいです」
「名前?」
「はい。私は、旅に出ます。その時に輝夜という名前は目立ちすぎるので、王自ら名前をと……」
「……わかった。それでは輝夜に少しばかりの路銀と名前を授けよう」
◇
「悲しくなるね〜」
そう言ってくれるのはリャーナ。あの時みたいに私に抱きついてくれる。
「まあまあ、最後の別れになるわけじゃあるまいし」
そう言いながらも涙ぐんでいるリャーナ。
「じゃあ、行ってくる。行くぞ!かぐ……ルーネ!」
そして、王から『ルーネ・リストリアーナ』という名前を授けられた私。ルーネという名前になった私を呼ぶアレシア。
「うん!」
私とアレシアは二人で船に乗り込む。
豪華客船、名前は……
「ねえ、アレシア。この船の名前って何だったっけ?」
「えっと、ルーネシア号だった気がする」
「そっか……なんだか、私達の名前みたいだね」
「あはは、確かにな。そういえば何だが、父……リストリアーナ王がこの船の名前をつけたらしいぞ」
「それは……って、アレシアって王様の娘ええ!!??」
「言ってなかったか?」
「聞いた事ないよ……」
それから数分がたった。
船は揺れる。後ろを見れば、リストリアーナはもう豆粒のような大きさだった。
またまた、次は何時間か経った。
「ねえ、アレシア。アレシアは機構国に行くんだよね?」
「……ああ。ルーネは?」
「私は……冒険者にでもなろうかな?って思う」
金は大量にあるが、それでもいつかは尽きる……いや尽きるか?これ?まあ旅をするんだし、そう言うのになるのも良いかなとは思っている。それに自分の並外れた力で金を稼ぐには冒険者、まあ雑用くらいしかないだろう。
「冒険者……なんなんだ?それは?」
「……そっか。この国にはないのか……」
少し意外に思う。こんなに危険がいっぱいな世界ならばそういう組織があってもいいと思ったんだが。
「お前の国にあったものか?」
「そうだね。私の国にはあったよ」
ならば、私が作らなければいけないのだろうか?しかし、それは何故か悪い気にならない。
「ルーネ、今だから言いたい事がある」
「?何?」
チュッ。
振り向いた瞬間、私の口には何か柔らかいものが当たる。
「〜〜!??」
それがアレシアの唇だと気がつくと、顔を真っ赤にして弁明する。
「ご、ごめん!そんなつもりじゃなかったの!」
「いや、いいんだ」
アレシアを見てみると、目が本気だった。
「アレ……シア?」
「私は、今までお前に隠していた事がある」
私にスルスルと近付いてくるアレシアは少し怖くて……
逃げようとしたら手を掴まれた。
「アレシア?どうしたの?」
「私は、お前の事が好きだ。ルーネ」
「え?」
◇
あー、だるい。
早く帰って錬金したいんだが……
全く。報酬金がいいからってこんな2ヶ月も拘束される依頼受けるべきじゃなかったわ。
帰ってもあいつらいるんだよなあ……俺の平穏な生活はどこへ行ったんだろうか?
「私は……冒険者にでもなろうかな?って思う」
ん?冒険者?リストリアーナ国の物が俺たちを知っているって珍しいな。
だが、話の流れを聞く限り、どうやら何処にあるかまでは知らないっぽいな。
しゃあねえし、教えてや……おっと。そっち系の人物か。成る程成る程。
嫌がってるように見える?大丈夫、ああいうのは押されると弱いタイプだ。経験上知ってる。
『あいつ、なかなか良いわよ』
頭の中から声を響かせてくるのは心臓に悪いって言わなかったかなあああ????
まあ、それは置いといてだ、へー……それはそれは……
こいつは冒険者の才能がありそうだな。
腐らせておくにはもったいないか。
ルーネ(*´∀`*)「ブクマや評価を頂けると励みになります!」
アレシア(*´ω`*)「ルーネ可愛い……」