第九話 地獄極楽巡り⑨
衆合地獄。
そこは女性に対し卑猥、卑劣な行為を働いた男が落ちる地獄。要はセクハラ、痴漢、強姦etc…クズ野郎の落ちる地獄。
「…そうなんだ。じゃ、父さんも誰かを…」
「そうですね。そうなります。……雄二さんは悪見処ですので、女児強姦ですね。」
背中に[獄]と書かれた羽織を着た兄が、少女に説明した。ここは衆合地獄刑場中央管理署。面会はここ地下室にて行われる。シシャモと留子は面会の手続きで、今はここにいない。
「じょ…女児、強姦…?被害者は…ま」
「これ以上は、お話しできません。」
カランカン カランカン カランカン…下駄の音。
「あ。シシャモさん達も戻られましたので、私はこれにて失礼致します。五分後に……雄二さんもいらっしゃるので、それまで暫しお待ちください。面会時間は五分までです。それでは。」
その獄卒は行ってしまった。代わりにシシャモと留子が戻ってくる。少女の顔を見てシシャモは察した。
「聞いたのか?親父さんの罪状。」
「うん。女児強姦でアッケンショに堕とされたって。ねぇ、なんか嫌なパズルが組み上がっちゃったんだけど。」
「そう。お父さんとの面会、やっぱりやめる?それでも良いのよ?貴女はまだ子供。家族の罪を背負うなんて、重荷にも程があるわ。」
「ううん。するよ、面会。できたパズルが真実なのか、確かめなきゃいけないから。」
ガラガラガラ…向かいにある鉄の扉が、絡繰仕掛けで上がって行く。その向こうから、死装束を着た父の姿が現れた。父は少女を見つけると、思わず目をそらしてしまう。
「ねぇ父さん。最初に答えて。父さんが乱暴した女児ってマユちゃんのこと?」
「…その言い方は、どういう意味だ?」
「レイプした女の子は、健太が襲った女の子と同一人物かって聞いてるのよ‼︎このクズ野郎‼︎」
「…まぁ、そうだ。母さんが死んで6年。俺はどうかしてた。女に成りかけつつあるマユの姿を見て、俺はつい、何かがキレちまったんだ。」
「マユ…呼び捨て…?汚らわしい‼︎あんたに唆されて、健太まで地獄に落ちたんだ‼︎クソ野郎‼︎」
「それは違う!」
シシャモが鋭く言葉を刺す。
「健太の罪は、健太自身のものだ。健太は自身の意思でマユちゃんを襲った。」
「でも父さんが、マユちゃんを襲ってさえいなければ、健太もそんなことしなかった。」
「汚らわしい…よな。」
雄二は俯きポツリと呟く。少女はその言葉に激昂。
「当然でしょ‼︎このドグサレチンポ野郎‼︎お前なんか地獄に落ちて当然だ‼︎」
ガシャーーン…鉄の扉が落ちた。雄二の姿も、声も、もうない。
「留子さん。私、私…」
「うんうん。頑張ったね。」
抱きしめてくれる留子さんの身体は、とても熱かった。穏やかな顔をしているけど、内心は怒りに打ち震えているみたいだ。それともこれが、鬼の平温なのか。そういえばさっき抱きしめてくれた時も、すごく暖かかった。
次に向かうのは極楽。顔も覚えていない母と、それから最愛の兄。
次回シシャモ 第十話 地獄極楽巡り⑩
お楽しみに!