第五話 地獄極楽巡り⑤
目を開けたその場所は、色っぽい雰囲気に満ちた街だった。
「ここが衆合地獄?」
「あぁ。向こうに見える門から先は刑場だ。そっちには行くなよ。」
「わかった。」
少女は街の雰囲気に圧倒され、ドギマギしている。すると着物の肩を両方はだけさせたお姉さんが近寄ってくる。ピンクの帯がいやらしい。
「シシャモちゃーん。久しぶりねー、どうしたの?お金払う気になった?」
「あいにく、お賽銭が全然ないんでな。誰か百万くらいパーンと収めてくれりゃ、助かるんだけどよ。」
「全く、本当売れないわねぇ。ま、本来祀られるような神様じゃないから、仕方ないんだけどさ。ってあら?その子は誰?」
「あーコレは…」
「もしかして!生贄!?まぁー若いのに大変ねぇー!大丈夫?ヤラシイ事されてない?」
少女は戸惑う。会話についていけないのだ。
「だ…大!ジョブッ…デス。」
「私は留子。源氏名は留。衆合一のキャバクラ、[桃源郷]のオーナーなの。なんかあったらいいなさい。この変神のことなら、なんだってできるから!」
「えっと?なんだって…とは?」
[それはねぇ…お金よ!」
シシャモが割って入る。
「こいつの店に、未払いの料金が百万あんだよ。俺の社、神社の裏にあんだろ?誰も拝んでくんねーから金もねーのよ。」
「拝むとお金に?」
「そう。神様は拝まれるとお金がもらえるの。お賽銭もその一部だが、大事なのは気持ちだ。感謝されることで、神様はお仕事をしたと言うことになって金がもらえる。その想いに比例して、金額も上がる。」
「ヘェ〜…そうなんだ。」
留子はシシャモと少女を見て驚く。
「あらー、シシャモのことを全然怖がらないのね。信者なの?」
「怖がる?まぁ、最初は変な人だなと思ってましたが、でも怖くはないです。」
「…シシャモがなんの神様か聞いてる?」
「あの世とこの世を自由に行き来させられる神様…と、聞きました。」
「まぁ、そうなんだけど…」
シシャモが痺れを切らし、口を挟む。
「留子。お前、余計なこと話すなよ。こっちにも段取りがあんだ。」
「あら、そうなの?じゃついでに聞くと、お支払いの段取りもついてるのかしら?」
シシャモは部が悪くなり、口を閉ざす。
「言っておきますけどね、百万払うまで、この街じゃ遊ばせませんからね!」
シシャモは舌打ちをして、歩き出した。
「ちょっと!どこ行くのよ!この子はどーするの!」
「旦那ん所でチンチロリンだ。姉貴に貰った小遣い五千円を百万に変えんだよ!そいつは留子が見とけ。」
そう言うと、シシャモは角を曲がってどこかへ行ったしまった。
「もぉ!相変わらずバカなんだから‼︎」
留子は口を尖らせて、呆れる。少女はそれを見て笑ってしまった。
「仲良いんですね。」
留子はバツが悪そうに、横目で少女を睨む。
留子は簡単な質問を投げかける。誰でも答えられるはずのその質問に、少女は答えられない。
次回シシャモ、第6話 地獄極楽巡り⑥‼︎
お楽しみに‼︎