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子守り男子の日向くんは帰宅が早い。  作者: 双葉三葉
【一章 遅き春、葉桜の後。】
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友人達と過ごす時間。

 雅の来宅から十分としない内に、一同はリビングのソファに対面になって座っていた。

 片や蕾・悠里。そしてもう片方が日向・雅である。

 日向は雅に麦茶を出しながら、今までの経緯をさわりだけ解説してみせた。


「成程……この前、日向が言ってたちょっとした出来事ってのは、そういう事か」


 一通り事情を聴き終えた雅が、麦茶を一口飲んでから確認するように頷く。

 そして悠里の方を向き、先程の事を思い出して笑った。


「それで、芹沢はなんで俺が来て隠れたんだよ」


「そ、それはだって……男子の家に上がるとか、ちょっと変な誤解受けそうじゃない…。私と新垣君、会話する程度に親しくなったのも最近なんだし…普通に考えたらおかしいでしょ…」


 笑われた事が不服なのか、先程の動揺ぶりを恥じているのか、悠里は唇を尖らせつつそっぽを向いた。


「まぁ、そりゃあな。日向の家に遊びに来たら同じクラスの女子が居ました、とか普通は驚くわな」


 そう言って雅は笑い出す。

 くっくっ、と笑い声を漏らした後に日向の方を向いた。


「でもよ、そういう事なら先に言ってくれりゃいいのに。隠そうとするから変にゴシップな想像しちゃうもんだろ、普通は」


「まぁ、そうなんだけどね。吹聴して回る事でもないし、それで変に噂が立ったらそれは芹沢さんに迷惑掛けちゃうかもしれないしさ」


 頭を掻きながら苦笑いする日向に、雅は少しだけ意地の悪そうな顔をしてみせた。


「ほぉ、という事は当事者の片割れである所の日向さんは噂が立っても問題無いと思ってたという事か?」

「なっ!?」


 雅の言葉に反応したのは日向ではなく悠里だった。

 ほんのりと耳が赤くなっている。

 日向は雅の言葉が単にからかってきているだけと分かりきっていたので、特に強い反応を見せずに淡々と答えを返す。


「そうじゃないよ、けど印象の薄い俺なんかは噂になっても別に何かある訳じゃないけど、芹沢さんとしては色々困る事もあるんじゃないか、ってね。女子のそういう話は男子と比べてデリケートだから、誰か嫌な思いをする人が居ると思うし。俺はその点、心配無いと言うか、まぁ誰も気に留めないと思うしね」


「お前の場合、一番気にしないのが本人だからな……。俺はお前がこのまま一人で蕾ちゃんのバージンロードまで付き添うんじゃないか、って気が気じゃないよ」


 日向の返答に茶々を入れながら、雅は呆れたように笑う。

 そのまま横目でちらりと悠里を見ると、悠里はどこか居心地が悪そうに明後日の方を向いていた。


「私も別に、誰と噂されても気にはしないんだけど、まぁ確かに……好奇心で色々訊かれたりするのは面倒よね」


 雅の目からは、その悠里の態度はどこか満更でもない、という風にも見えたのだがそれを口に出す事はしない。

 それこそ野次馬が囃し立てるのと一緒だろうと静観する。

 案外この二人は中身が似ていて、どこか波長が合うのかもしれない。

 それはそれで、まぁ今後の展開に御期待という事で雅は内心に決着を付ける。


「ま、その事についてはもう置いておこうぜ。今日は折角、蕾ちゃんのお見舞いに二人も来たんだからさ。蕾ちゃんを蚊帳の外に置いて俺等だけで話したって仕方ないよな」

「おはなしおわったのー?」


 雅の一言で、場の空気が変わった事を察したのか蕾がテレビから目を離し三人を順に見る。


「それもそうね。御免ね蕾ちゃん、私達だけで話しちゃって。皆で何かして遊ぼっか!」

「えー!じゃあトランプやろう!しんけんすいじゃくしってる?」

「神経衰弱か、いいよ。でも御飯支度があるから1~2回だけな」


 日向がそう言って蕾のオモチャコレクションの箱にあるトランプを持ってくる。

 手早くシャッフルし、テーブルの上に散りばめた。


「五歳児と高校生三人だと流石に記憶力に差があり過ぎるからな……蕾、二回続けてやっていいよ」


 日向の提案に、悠里と雅も頷く。

 蕾は子供扱いされて怒ったりする事も無く、二度引けるのが嬉しいのか「いいの!?やったー!」と諸手を挙げていた。




「それじゃあ、俺達はそろそろ帰るよ。また明日学校でな。蕾ちゃん、今日は遊んでくれてありがとうね。また具合悪くならないように、今日は早く寝るんだぞ。」


「蕾ちゃん、また遊ぼうね。新垣君も、またお邪魔しちゃって御免ね」


 トランプを終えて、二人は玄関で靴を履きながら挨拶を済ませる。

 蕾は二人が帰るのを嫌がるように、日向の足元にしがみついて顔を俯かせていた。


「………また来てね」


 それでも、駄々を捏ねるでもなくちゃんと二人に別れの挨拶をする。

 日向はそんな蕾の頭をぐしぐしと撫でながら、悠里と雅に頷いた。


「二人とも、ありがとう。また良かったら遊んであげてくれ。……ほら、蕾」


 いよいよ耐え切れなくなったのか、日向の足に顔を擦り付けるようにした蕾だが、もう一度顔を挙げて二人に「ばいばい」と手を振る。


 いじらしいその態度に、悠里だけでなく雅も破顔して二人はそっと玄関を出た。

 悠里に関しては破顔どころか、何故かもらい泣きしそうになっていたが、悠里が蕾に入れ込んでいるのは見てて丸わかりなので日向も苦笑いするしかない。


 そうして蕾と一緒にリビングへ戻り、日向が夕飯の支度を始める頃には蕾がソファで横になって眠っていた。

微妙にフラグが立っているような立っていないような、本当はもっと胸に来るイベントシーンとかを描ければなと自分でも思っていますが

なんというか、この穏やかな時間の感じを崩したくない部分もあったりします。


このストーリーは本当にラブコメ路線で書いたのか自分でも怪しくなってきました……(汗)

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