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子守り男子の日向くんは帰宅が早い。  作者: 双葉三葉
【二章 再会の夏、新緑の芽吹く季節に。】
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夏休みキャンプ編 日和の参加表明

 終業式の日の夜、蕾と一緒にアイスを食べながら日向は父の帰りを待っていた。

 今日、唯から聞かされたキャンプの事について幾つか訊いておくべき事があるのだ。


 テレビに映るバラエティ番組を見ながら、チリンチリン、と鳴る風鈴の音色に耳を澄ます。

 リビングから庭に通じる窓の軒先で、涼しげに透き通る水色で着色されたガラスが、静かに揺れている。


 アイスを食べ終えて、うつらうつらと頭を揺らしながら歯を磨く蕾にお腹を枕にされながら、日向は玄関が開く音を聞いた。


「父さん帰ってきたね」

「んー……」


 日向に寄り掛かる蕾は、もう既に半分が夢の中だ。

 蕾の歯磨き最終チェックを行っていると、父より先に帰宅していた母がリビングへと顔を出す。


「蕾、布団用意したからもう寝れるよ、寝ちゃいなさい」


 明吏のその言葉に、釣られるように、蕾が立ち上がって明吏に摑まる。

 そしてそのまま、口をゆすぐ為に洗面台へ連れて行かれた。


「日向が甘やかすから、五歳児なのにまだ赤ちゃんみたいになってるわ……」


 蕾を抱えた母が、笑いながら言うのが聞こえる。

 入れ違いにリビングへ仁が入ってくる。

 おかえり、と挨拶するとただいま、と返して仁はそのまま風呂場へ向かった。

 汗を早く流したいのだろう。仕方なく、日向はそのままリビングで父が上がって夕飯を終えるまで待つ事にする。


 そして風呂から上がり、夕飯に手を付けている仁の対面に座った日向は、自分にも麦茶を用意して口を付けた。


「父さん、恵那さんからキャンプの話聞いたんだけど、あれ本当?


 晩酌のビールを手酌していた仁が、チラりと日向を見た後、コップを煽り息を吐いた。


「本当だ……と言いたい所だが、どっちかってーと純基に押し切られた感が強いなぁ」

「どういう事?」

「この前、唯ちゃん送ってったろ。その時に少し話したんだけどな。お互いの子供が同級生で、しかも顔見知りってんで舞い上がっちまって、勿論純基がな。そうしたら、なら子供達をキャンプに連れて行ってやろう! 学生の夏休みと言えばキャンプだろ! …って感じでな」


 何故だろう、会った事が無い筈なのに、ニュアンスやテンションが想像出来てしまう。

 唯がそのまま大きくなり、男性の姿をしていたらそのまま恵那家の父になるんだろうか。


「そういう訳なんだけど、俺は流石に仕事が抜けられん。だから引率は純基にお願いする事になるって話してたら、構わないの即答でな。まぁ後は、お前が唯ちゃんから聞いた話の通りだよ……ったく、あいつだけ中身が学生から進化してねぇ……」


 仁が食べ終わった食器を台所へ運び、片付けが終わった所でソファーに座る。

 表情は疲れているが、本気で困っている感じでは無さそうだ。


「まぁそういう事だから、行きたいなら行っていいぞ。蕾の事も話してあるから、一緒に連れて行ってもいいし。……後は唯ちゃんはともかく、女の子が来るには親御さんの了承が必要になるだろうけど、そこはまぁ恵子ちゃんが上手く説明するだろ」

「恵子ちゃんって?」

「純基の嫁さんだよ。唯ちゃんのお母さんだ。あいつの嫁が務まるぐらいの才媛だ、任せておけば大概の問題は片付くだろ」


 言い切ってソファーに身を預けるようにしてもたれかかった仁が、あぁそうだ、と呟く。


「ひよりちゃんにも声掛けてやれ。仲直りしたんだろ、いい機会じゃないか」

「と言っても、初対面が二人ほど居るけど……」

「行くか決めるかは任せて、話だけしてあげてもいいんじゃないか?まだ乗れるだろうし、お前と一緒なら安心するだろう」


 母ほどではなくても、仁も十分に日和の事を幼少期より可愛がってたので、心情的には親戚の類なのだろう。もう一度接点が復活した事で、何かと目を掛けてやりたくなるのかもしれない。


「分かった、話してみる。ありがとう、父さん」


 そうして自室に戻った日向は、先ずは唯へと連絡を取る。



 送信者:新垣日向

『恵那さん、こんばんは。キャンプの事で、まだ詳細を貰ってない内からちょっとお願いしたい事があるんだけど……』


 五分程してから、返信が返って来る。


 送信者:恵那唯

『はいはーい、こんばんは! なになにー? 丁度今、パパとキャンプの事話してた!』


 送信者:新垣日向

『そうなんだ、えっと、俺の後輩の女の子なんだけど、もし行きたがったら一緒に連れて行ってもいいかな?』


 送信者:恵那唯

『おお、例の後輩女子! いいよいいよ、皆で行く初キャンプに、初対面の後輩が来る! シチュエーション的には美味しい! パパに話しておく!』


 送信者:新垣日向

『うん、ありがとう。まあ本人の意向次第もあるから、どうなるか分からないんだけどね』



 軽いやり取りを終えた後、日向は唯とのメッセージを終えて日和へ電話を掛ける。

 コール音が鳴って直後、日和の声が聞こえてきた。


『は、はいっ! 日向先輩ですか!? こんばんは!』


 何やら物凄く慌てている、もしかしてタイミングが悪かっただろうか。


「こんばんは……ごめん、なんか良くない時間だった?」

『あ! いえ違います、そうじゃなくて、いきなり着信が鳴ったので……』

「あぁそういう事か、メッセージでも良かったんだけど、長くなり過ぎると時間が時間だったから」


 スマートフォンを耳に当てながら、日向は自室の窓を軽く開いて網戸を閉めた。

 外からの涼しい夜風が部屋の気温を下げてくれる。

 耳から聞こえてくる日和の声は、鈴のように鳴り響いた。


『……いえ、電話で嬉しいです。どうしよう、連絡しようかな、声聞きたいなってスマホ見てたら、着信が鳴ったから、驚いちゃって』


 日和から出たその言葉に、日向の方が口ごもってしまう。

 こうしてストレートに声が聴きたいと言われたら、恥ずかしくて二の句が告げなくなってしまった。


『あ、あー! 御免なさい、今の無しで……はぁ、もう。……それで、何か御用だったんですよね、どうしました?』


 仕切り直し、とばかりに一度息を落ち着けた日和の吐息が、スピーカー越しに伝わってくる。

 日向もその言葉に、くすぐったいのを堪えながら、唯や父とのやり取りを日和へ説明した。



「………という訳で、近々キャンプに行くんだけど。もし部活の都合とか付きそうなら、日和も一緒に来ない? その、初対面の人でかつ日和にとっては先輩になる人も居るんだけど、二人とも良い人達だから楽しいと思う」


 日向の提案に、日和は数秒考えた後。


『行きます。うん、行きます、連れて行って下さい! 部活は大丈夫です、ウチの部は大して強くもないので、練習もぎっちり入ってる程でもないし、いざとなったら休みます!』


 キャンプの参加可否で、随分と気合が入っている日和に面食らったが、とりあえずこれで日和の参加が決定した。


「分かった、詳細は多分明日か明後日ぐらいには出せると思うから」

『キャンプ、楽しみです。最後にやったのいつだったかなー……虫避けとか、用意しないといけないもの沢山ありますね』

「うん、買い出しとかも事前に皆で行く事になるかもね」


 少しはしゃいだ声色の日和が、何を買おうかと指折り数えるように話す。

 そして後日、唯からの連絡を受けたキャンプ参加者達は買い出しへと向かう事になる。

いつキャンプ行くんだよ!って突っ込まれそうで、私も自分で突っ込みたかったのですが

こういうシーンをダラダラ書くより、いっそキャンプ現地からスタートでいいのでは?と思った所で、いやそもそも、色んなシーンを書く事を練習する為の小説なんじゃないか、と思い直し。


そんな感じで相変わらずの鈍足普通便運航ですが、ちゃんとキャンプには連れて行くので平にご容赦下さい……。


※今朝、見てみたら1万ポイントとブックマ4千を超える大事故が起きていました……

初めてポイントと、ブックマークが一件付いた時の事を思い出しました。

書いてる文章を最初に立ち止まって見てくれる人が居て、今は沢山の人に読んで頂ける、本当にありがとう御座います。


宜しければ引き続き、私の公開練習にお付き合い下されば幸いです。

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また、第二巻が令和元年、2019年7月1日より発売となりました、ありがとう御座います。(下記画像クリックで公式ページへとジャンプします)

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