青い花瓶
花瓶を買った。
青いガラスの花瓶。
花を愛でることはあっても、わざわざ飾ることはないのに、なぜかその花瓶に惹かれてしまった。
別に、特別素敵な花瓶というわけではなかった。
値段も高いわけじゃない。
ただ、その海のような青に魅入られてしまった。
持ち帰ると、すぐに包装を外し、机の上に置いてみた。
もちろん、家に花はない。
それでも、何か物足りなくて、水を張ってみた。
しばらく、それを眺めた。
見ていると、私の心まで、クリアになっていくような、そんな静かな気持ちになった。
次の日、思いついたように、野草の花をつんで、その花瓶に生けてみた。
しかし、サイズ感が違いしっくりこなかった。
そのまま花を捨ててしまうのも気が引けたので、使っていないガラスのコップに入れて飾ってみた。
駅前の花屋で、花を買ってみた。
花屋には、数えるほどしか行ったことがなかったので、お店の人に適当に見繕ってもらった。
今度は、サイズもぴったりで、ちゃんと花を飾ることができた。
可愛らしく、美しく、完成されたもの。
それでも、やっぱりしっくりこなかった。
私にとっては、花瓶が主役だったので、これ見よがしに主張する花は、あまり面白くなかったのだ。
結局、枯れるまでその花を飾った後、また、花を買いに行くことはなかった。
その後、私は時々、青い花瓶に水を張っては、眺めて楽しんだ。
余計なものはいらない。
私はただ、その海のような透き通る青に魅入られたのだから。