私をお嫁さんにしてください
ブザーの音。あわただしい足音。
(婦長)「柴山さん発作。モルヒネ用意して」
(看護婦)「はい」
(婦長)「先生は?」
(看護婦)「すぐ来られます」
駆ける足音。ドアを開ける音。
ベッドのきしむ音。
(杏子)「痛い痛いとても背中が痛い。助けて若林さん!
助けて!何も悪いことしてないのに。なにも・・ああ、痛い痛い」
(医師)「そっち抑えて。もっと強く。そう、そのまま。モルヒネ!」
(婦長)「はい!」
(医師)「少しレベルを上げよう」
ベッドの音静まっていく。
(医師)「もう、かなりきびしいな」
足音が遠のいていく。
(杏子のN)「私は絶対若林さんのことが好き。退院したら
結婚して欲しい。早く帰ってきて。プロポーズしてあげるから」
(若林のN)「この頃から発作が頻繁に起き、モルヒネの量が
増えて、杏子は狂おしくなってきた」
(杏子のN)「きょうは私達家族でピクニックに行ってる夢を見
ました。小学生の子どもが二人、もちろん登町小学校の生徒ですよ」
ブザーの音。
(婦長)「柴山さん発作!」
駆け足音が遠のいていく。
(杏子のN)「痛い痛い。夜中も眠れません。体中が痛くてどうしようも
ありません。今若林さんはどのあたりを旅してるんですか?お便りください。
3年間は長すぎます。約束しましたね、お便り待ってます」
ここから心臓の鼓動が不気味にリズミカルに響いてくる。
衝撃音が一定の間隔を置いて徐々に大きくなりながら入る。
(杏子のN)「痛い痛いほんとに痛い。体中の骨が酸に侵されているみたいです。
父も母も涙を一杯ためて見守ってくれています。私はいつも必死で笑顔を作って
きました。もうこの痛みには耐えられません。父母が帰ると私は思い切り叫びます。
『死にたい!殺して!早く殺してーっ!』」
心臓の鼓動と衝撃音がリズミカルに流れている。
(杏子のN)「とげの毒が体中を回っています。生きる命の力が負けそうです。
若林さんの力を信じています。時々ふと我に帰って痛みが全くない時があります。
(狂おしく)必死で手紙を書きましょう!私が愛した人は若林治君!大好き!
私の先生なんですよ。両手で私の手を握り締めて、がんばれ杏子!お前は僕の妻だ!
結婚しよう!かっこいい若林君。賛成の方手を挙げてください。学級委員の若林君
大好きです!私をお嫁さんにしてください」