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入院

心臓の鼓動が単調に続く。

小さな衝撃音。

(杏子)「うっ」


再び心臓の鼓動が続く。

小さな衝撃音。

(杏子)「うっ」


寝返りをうつ音。

心臓の鼓動が高まる。

大きな衝撃音。

(杏子)「キャッ。助けて!」


駆け足音近づく。

(婦長)「柴山さん!大丈夫?」

(杏子)「大丈夫じゃありません。助けてください。

背中にズキンと来るんです。とても怖いんです」


(婦長)「よしよし分かった。今先生が来るからね。

我慢するのよ柴山さん。背中さすってあげるから、ほら。

我慢するのよ」

(杏子)「う・・・ううう(泣く)」


(杏子のN)「今回は長引きそうだ。あの苦しい検査が続くのか

と思うと気が重くなる。子ども達はどうしてるのかな?」

遠くで子ども達の声。

(子ども達)「きょうこせんせーい!」


(杏子のN)「今日転院になった。検査が前の時より厳しい。

医師の対応も微妙に違う。もう、助からないかも?」


遠くで父と母の声。婦長の声。

(婦長)「今日はお元気そうですよ」

(父)「そりゃどうも。ほんまじゃ。ははは、元気そうじゃ。かあさん果物」

(母)「起きとるんね杏子?ハア顔色がようなって。これ食べないけんよ」


(杏子)「ありがとう、おかあさん」

紙包みを開ける音。

(父)「今日は元気そうじゃの、杏子」


(杏子のN)「父の表情がさえない。何か私に隠している。

父は何かを知っている。気丈に振舞う父と母。見舞いに来ても

まともに顔を見れない。必死で笑顔を作っている」


点滴の音が単調に響き続ける。

杏子の寝息。

心臓の鼓動が徐々に高まる。

するどい衝撃音。

(杏子)「キャッ!」


跳ね起きる音。

(杏子)「(大きな息遣い)ふう、ふう」


(杏子のN)「薬で今までの発作が薄められてその分毎日ズキンと来る。

とても背中が痛く背骨が熱い。助けて若林さん。一人で死ぬのがとても怖い」

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