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スバルの決意!

 原っぱを風が、びょうと吹き抜けた。


「さあ、来なさい! 」


 いつもの森の手前の原っぱで、スバルはケンタに向き合って練習用の木刀を構えていた。


「行きます、えい!」


 カン!カン!カン!


 スバルの打ち込みをケンタが自分の木刀でいなしていく。


「もっと鋭く踏み込んで! ほら、また振りが大きい! 打ち込みが単調にならないように!」


 あれからスバルは毎日ケンタに稽古をつけてもらっていた。

 ケンタ自身は、まどかに稽古をつけてもらったり、ルリと手合わせをして腕を磨いており、その合間にスバルの稽古をつけていた。


「よし、そこまで!うん、なかなか気迫のこもった打ち込みだったよ。このひと月でずいぶんと剣筋が良くなった。この調子で頑張って行けば、まだまだ強くなれるぞ」


「はい!ありがとうございます、ケンタさん!」


 スバルにとっては、ケンタは理想的な稽古相手であった。

 師匠は腰が悪くて相手をしてもらえないし、師範代に復帰したまどかおばさんやルリ姉は剣筋が邪悪すぎてまだまだ駆け出しのスバルの練習相手にはふさわしくなかった。

 まあ、しいて言えばテンちゃんなら丁度よい相手なのだが、年下の女の子だし、にもかかわらずなかなか勝てないので、かっこ悪いから嫌だった。

 どうも、テンちゃんの家系の女性は剣の才能が半端ない様だ。

 15歳の思春期真っ盛りのスバルだったが、まだ色気づいておらず、女性陣と稽古するより男同士で稽古したいと思っていた。

 そんなスバルにとって、ケンタさんは理想的な稽古相手であり、『流浪の剣士!カッコイイ!』とか密かに思っていた。


 ◇◆◇


 稽古が終わって道場に戻ると、ケンタさんが師匠や師範代のまどかおばさんに挨拶し始めた。


「長々とお世話になり、ありがとうございました。師範代には毎日稽古をつけていただき、本当に良い修行になりました。そろそろ自分の道場に戻らなければなりませんので、明日にでも出発しようかと思います」


『え!!ケンタさん行っちゃうの?!』スバルは驚いた。

 ケンタは修行の旅の途中で立ち寄った他派の剣士なので、いつかこの道場から立ち去ることは分かっていたが、少しでも長くケンタに修行を付けてもらいたかった。


「そうかそうか、いつまでもおってくれ良いのじゃが、そうもいかんわな。お主のような優秀な剣士をこのような田舎の道場にいつまでも引き留めておっては、おぬしの師匠の愛濫和尚に怒られてしまうでな。じゃが、気が向いたらまたいつでも訪ねてくるがよいぞ。お主がおらんと、ルリやスバルの稽古相手に困るでの」


「そうですね、またいつでもいらっしゃってくださいね。ケンタさんはまだまだ先があるお方ですから、どんどん修業を積んで腕を磨いて下さい。次に来られた時にどれくらい強くなっておられるか、楽しみにしてますよ」


「はっ、ありがとうございます師匠、まどか師範代」


「ケンタさん!」


 スバルは思わず声をかけてしまった。

 深く考えるより先に言葉が出てしまう。


「お、俺も修行の旅に連れてってください!」


 みんなが驚いた顔でスバルを見た。

 特に、テンは今にも泣き出しそうな顔でスバルに駆け寄った。


「スバル! 何言ってるのよ! 村の外に出るだけでも危険なのに、旅に出るなってもっと危ないわ! それに、ここはスバルの生まれ育った村よ? スバルのお父さんとお母さんのお墓だってあるのに。なんで旅になんか出るのよ! ずっとここにいて修行すればいいじゃない!」


「でも、いつまでもここにいたんじゃ、気持ちが甘えてしまって強くなれない気がするんだ。俺もケンタさんみたいに旅に出て、広く世間を見て回りたい。そうしたほうが強くなれると思うんだよ。テンちゃん、分かってくれ」


「スバルの師匠のお許しが出るのなら俺は構わないよ。師匠、どうでしょうか」


「師匠! お願いします! 俺を修行の旅に出してください!」


「ふん、スバルはこのひと月の間、ケンタに修行を付けてもらって随分と力を付けたようじゃしの。どれ、久しぶりにお前のステータスを確認してみるか」


「はい、管理ページオープン!」



【現在のステータス】

 感想:3件             ⇒Lv3

 PV:998アクセス        ⇒HP998

 ユニーク:439人         ⇒MP439

 文章評価:16pt         ⇒攻撃力16

 ストーリー評価:15pt      ⇒守備力15

 ブックマーク:5件(×2=10pt)⇒魔力10(使える魔法1)

 レビュー:0件           ⇒ユニーク魔法0

 文字数:28724文字       ⇒経験値28724(スペシャルアイテム2!)



「やった!結構上がってる!」


「ふむ、よい伸び具合じゃの。これならもう村の外に出てもやっていけるじゃろ。じゃが、まだまだレベルは低いんじゃから、油断するでないぞ?」


「はい!」


「どうじゃな、まどか。師範代としての意見は」


「そうですね、ここにいては伸び悩んでしまいそうですから、ここは思い切って修行の旅に出したほうが良いかもしれませんね」


「ええ! お母さんまでそんなこと言うなんて!」


「これ、テン、今はお母さんじゃなくて師範代としてお話してるんです。私だってスバルが危険な旅に出るのは心配ですよ? でも、男の子は早いうちに独り立ちした方が強くなれるんです。お前もスバルに強くなってほしいでしょ? スバルは、旅で強くなったらきっとこの道場に帰ってきてくれます。ね、スバル、そうでしょ?」


「はい!俺、頑張って修行して、今よりずっと強くなったらこの道場に帰ってきます!」


「ぐうぇえええええん、すばるのばかあ~、お母さんのいけず~」


 テンは泣きながら道場を出て行ってしまった。


「仕方ありませんね、テンには後で私からよく言って聞かせておきます。きっとわかってくれますよ、スバル」


「はい、テンちゃんのこと、よろしくお願いします」


「ふむ、ではスバルに修行の旅に出ることを許可する。ケンタ殿、スバルのこと、よろしく頼みますぞ」


「はい、お任せください。スバル、俺も修行中の身だ。一緒に、頑張ろうな」


「はい!よろしくお願いします!」


 ◇◆◇


 ウジウジ、ウジウジ


 テンは道場の隣にある自分の家に泣いて帰り、部屋に閉じこもってウジウジしていた。

 それを、姉のルリが慰めていた。


「テン、スバルが修行の旅に出るんだって?男の子なんだから仕方ないよ、諦めな」


「ルリ姉のバカ」


「女の私だって街に修行に出たんだし、母さんも若いころは修行の旅に出て暴れまわってたみたいだから、スバルをいつまでもこの道場に縛り付けとく訳にはいかないよ?」


「分かってるよそんなこと。でも、スバルはまだ弱っちいし、アタシがいないとすぐに泣いちゃうから心配だな、ぐすん」


「はいはい、淋しいのは分かるけど、明日には旅に出ちゃうみたいだから、いつまでもぐずってないで、笑顔で送り出してやりなよ? 旅の間、スバルがテンのことを思い出したとき、ぐずぐず泣いてる顔しか思い浮かべてくれなかったら嫌だろ?」


「うん、そうだね。旅の準備も手伝ってやらなくちゃいけないしね。旅のお守りとかも持たしてあげないと」


「ふふ、テンは本当に世話女房だね。私はどう見てもお母さん似だけど、テンの世話焼きはお父さんに似たんだろうね」


「だって、アタシとスバルは兄弟みたいにして育ったんだし、亡くなったスバルのお母さんからも、『スバルのことよろしくね』って頼まれてるんだから、私がちゃんとスバルのことみてあげないといけないんだもん!」


「はいはい。でも、私たちのお母さんは修行の旅でお父さんを見つけて結婚したんだよね。じゃあ、スバルも旅の途中で他の女と仲良くなったりして」


「え! だめよそんなの! その女、きっと悪い女に違いないわ! スバルを甘やかしてダメ男にするに違いないわ!」


「思いっきりブーメランを投げてる気もするけど。でも、スバルもこれからだんだん男らしくなってくんだろうねえ。ケンタもいい男だから、スバルもあんな感じになればもてもてだろうねえ」


「ええ――! 私の知らないところでスバルがカッコよくなるなんてダメよ! 今だって十分カッコいいのに! スバルは優しいから、直ぐに悪い女に騙されそう! 心配だわ! 今からスバルのところに行って、他の女と口を利かないように言い聞かせなきゃ!」


「いくら言い聞かせたって男なんかあてにならないよ? そうだねえ、私もせっかくいい稽古相手が見つかったのに、このまま逃がすのは惜しいしねえ。負け越したままお別れじゃあ『狂犬』の名が廃るしねえ」


「その二つ名は廃った方がいいんじゃない?」


「それよりもテン、……ごにょごにょごにょ……」


「えっ、なるほど、でも……だから……そしたら……ごにょごにょごにょ……」


 何やら密談する二人であった。




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