始まりの書
「喝!!!!!!!!!」
はっ!俺は何をぼんやりしていたんだ。
長い夢から覚めた時のように頭がぼんやりして働かない。
自分がどこか遠くから来たような気がするのに、ここがどこかわからない。
そして、自分が本当は違う人間で、まるで異世界から転生して他の人格に乗り込んだような感じがするのに、自分がだれか分からない。
そもそも、異世界とか転生ってなんだっけ?
意識は徐々にはっきりしてきたものの、記憶の方はさっぱり戻そうになかった。
取りあえず辺りを見回したところ、目の前には長いひげを生やしたおじいさんが立っていて、その前で正座している俺をにらみつけていた。
「こら!スバルよ!師匠が話をしている最中に居眠りをするとは何事じゃ!」
「はっ、申し訳ございません!」
どうやら俺の名前はスバルというらしい。
俺は、誰に何の話をされている最中だったのか全く分からなかったが、相手が年上で自分より偉そうであり、自分はどうも居眠りをするというミスを犯したようだったので、取りあえず謝ることにして頭を下げた。
ふと、「社畜スキル」という言葉が頭に浮かんだが、やっぱり何のことかわからなかった。
師匠と名乗る爺さんは話をつづけた。
「しようのない奴じゃ、聞いてなかったようじゃからもう一度説明してやる。今度こそしっかり聞くのじゃぞ?」
「はい!師匠!」
いきなり怒鳴られてびっくりしたが、案外いい人かもしれない。
「わしのもとで修業して強くなりたいというお前の希望を叶えるためには、まず強さの概念を学ばねばならん。お前も知っているとおり、この世の強者どもは、力があったり、剣技に長けていたり、魔法が使えたりするわけじゃが、これは誰もが文武神より授かりし『管理ページ』というそれぞれの心の中にある『画面』に書かれておる数字で客観的に計ることができる。厳しい修行に耐えてそれらの数値を上げることが肝要じゃ。もっとも、その数値は移り気な他の神々が上げ下げするらしいので、努力の成果が他の神々のお眼鏡にかなわなければいくら努力しても強くなれん場合もあるがな」
「え~、それじゃあ修行の意味ないじゃないですか師匠」
「ばかもん!!!修行もせずに強くなれる訳がなかろう。文武神も他の神々もお前の努力の成果を見ておられるのじゃ!修行なくして芯の強さが得られようか! 喝!!!!!!!!!」
「はっ、俺が浅はかでした!」
なんか俺はこのじいさんのもとで強くなるために修行しているらしい。
ていうか、まだ入門したててこれから修行するみたいだな。
一から修行とか面倒そうだなあ。
そもそも、そんな修行をして何のメリットがあんの?
「弟子よ!お前に才能があるか、厳しい修行と人様の、もとい他の神々のあからさまな評価に耐える精神力があるかはわしにもわからぬ。しか~~~~~~し!もしこれを成し遂げられて強者となれたなら、何物にも代えがたい自己満足と!文武の神々が集計されし『ランキング』というものに名を連ねる多大な名誉が与えられるそうじゃ!もちろん、この世にごまんといる修行者の中で、ランキングに名を連ねられるのはごく一握りじゃがな。また、文武の神々は時に『賞』なるものを催され、そのなかで勝ち残ったものには莫大な賞金が与えられるそうじゃ!賞をもらうのはランキングに名を連ねるよりも難しいそうじゃがの」
「そんなにすごい賞なら、一生遊んで暮らせるようなものすごい賞金なんでしょうね!」
「まあ、そこのところはわしもよく知らんのじゃが、少なくともお前が毎月もらっておるお小遣いの100倍くらいはあるじゃろうな」
俺は愕然として膝をついた。あ、最初から正座していたんだっけ。
「なら!賞金王に俺は 」
「喝!そのような引用は10年早いわ。まあ、細かいテクニックはこれから少しずつ覚えていけばよい。それよりも、さっそく今日からお前おの修業を始める!心して書かれ!」
「はっ!何なりとお申し付けください」
「まずは、自分のステータスの確認じゃ。目をつぶって心の中で『管理ページオーブン!』と叫ぶんじゃ。」
「心の中で叫ぶんですか?」
「その方がかっこええじゃろ?そのあたりも大事じゃぞ?」
「はっ、分かりました。やってみます」
頭のもやもやが晴れないまま、なんのかんので流されてる自分がおりますが、一度乗ってしまったものは最期までのりで乗り切るしかありません。
俺は、師匠の教えのとおり、目をつむって心の中で叫びました。
『管理ページオープン!!!!』
すると、目の前に、いや、目をつむっているので瞼の裏というべきでしょうか、管理ページという表題のついた表のようなものが現れました。
Lv:0
HP:0
MP:0
攻撃力:0
守備力:0
魔力:0(使える魔法の数:0)
ユニーク魔法:0
経験値:1942(空白・改行を除く)