ひきこもりと甘えっ子
わただしくみきえが朝ごはんの残りをお皿に移し替え、いそいで作ったため
形の悪いおにぎりと一緒にお盆にのせ2階に持っていく
長男のひろむの部屋の前に置き「ひろむ、おはよう、ごはん、ここに置いとくからね」
とドアに向かって話しかける
・・・・・・ 返事はない
「じゃあ、行ってくるから」と無言のドアに言い残しいそいで階段を降りる
玄関ではまどかがのんびり座って待っている
・・・急ぐ気なしか・・・とみきえが心の中でつぶやいた
ふたりそろって家を出てしばらく歩いているとまどかがのんびりとした口調で「お兄ちゃんってさぁ~、天然記念物よねぇ~」と言ってくる
「え?なにそれ?」
「だってぇ~、めったに遭遇しないし、出会えたら奇跡じゃん~」
「なにいってるの、お兄ちゃん病気なんだから、そんなこと言っちゃだめ」
とみきえがやさしく注意する、でも頭の中では(天然記念物か・・なるほど、うまいこと
を言うな・・)と考えていると、まどかがいつものお願いを言ってくる
「ねっ!今日も、学校まで迎えにみてくれるよねっ!」
「えー、今日も、また?」
「だってぇ~、みんな帰りに塾、行っちゃうし~、帰り一人になるんだよ~」
「うーん、そう言っても・・ここんとこずっと仕事ぬけて迎えに行ってるし・・」
「大丈夫だって、お母さんとこの主任さん優しいから、きっとOKしてくれるって~」
「・・・しょうがないなー、じゃあ、主任に頼んでみるから」
「OK!じゃ4時に校門で待ってるから」とまどかが弾んだ声で言う
みきえはまた小さくためいきをついて思う(・・・主任になんて言おう・・こんどこそ
怒られるかなぁ~・・)