先生、圧勝※未修整
今日も私はパソコンに向かい仕事をしているだが場所が自宅ではなく取調室なのだけがいつもとは違う点だ。そして、さらに目の前に座っているのがあの強面の刑事さん(刈谷だとあの後名前を教えてもらった)ではなく鳴海刑事だというのもまたいつもの取調べとは違う点だった。
「ふー」
「書き終わったんですか?」
「いいえ、まだですよ。でも区切りのいい所まできましたのでいったん休憩です」
「では、取調べを開始してもよろしいですか?」
「ええ。すみませんねいつもご迷惑をおかけしてしまって」
「それはこちらの方ですよ。本来は任意ですのにお忙しいにも関わらずこうやってご協力いただいているんですから」
「私はただ早く自分の疑いを晴らしたいだけですから気にしないでください」
「そうですか。では、やはり桜庭さんを殺したのは自分ではないとおっしゃるんですね?」
「はい」
「高峰さんが否定なさっていますから未だに捜査を続けてはいるんですが相変わらず高峰さんが1番疑わしい状態なんですよね」
鳴海刑事の言葉の端々にお前が犯人なんだろう?さっさと認めろよという考えが透けて見える。目から感情は読めないし、雰囲気も未だについこちらが気を抜いて何か話してしまいそうなもの(特に刈谷刑事の後だから尚更)で油断ならないと感じさせるのにも関わらず、声の感じや話す内容からは感情が簡単に読み取れてしまう。
「刑事さん」
「何ですか?」
「事件にも今の話の流れにも関係ない内容なんですけど質問していいですか?」
「僕に答えられる事でしたら構いませんよ」
「刑事さん今お幾つですか?」
「えっと、本当に関係ありませんね」
「はい。それでお幾つですか?」
「24ですけど」
「ああ、やっぱり」
「何がやっぱり何ですか?」
「私は人間観察が好きなんですよね。特に今の仕事をするようになってからは恋愛という目に見えない物を文字にしないといけませんからよけいに人を観察してどういう時にどう感じるのか、こういう風に思っている時にはどういう顔をするのかなどを調べていたんですよ。その結果人の感情を読むのも得意になったんですよね」
「それが僕の年齢にどう関係するんですか?」
「刑事さんは目や雰囲気からは感情が読めないんですよ。でも、声や話す内容からは間単に感情が読み取れるんです。特に話している内容の方は凄く分かりやすいです」
「・・・そうなんですか?」
一瞬、口元が引きつり視線が鋭くなったがすぐに元に戻った。分かりやすいと言われただけで動揺するだけならともかくそれを一瞬でも表に出すなんてやっぱりまだ若いね。
「ええ。で、その矛盾している理由を考えたんですけどまだ若そうだから経験の問題かなと思ったので年齢を確認したんです」
「経験ですか?」
「表情に気をつけるだけで相手に与える印象は結構変わります。笑顔や穏やかな表情をしているだけで相手は油断します。今の刑事さんのようにね。目は口ほどに物を言うって昔から言うくらい目からは感情を読み取れるものです。だからこそ目から感情を読まれないように特に気をつけているんですよね?結構難しい事ですけどその年で警視庁の捜査一課にいるって事はエリートで、優秀なんでしょうから特に気をつけていれば可能でしょう。声や話し方に関しては余程感情的行動するタイプでない限りわりと誰でも感情をかくせますから別段気にしてなかったんでしょうね。でも、声や話し方から感情を隠すのって若いうちは難しいんですよ?その点神崎刑事さんは上手いですよ。あ、でもいつも私の取調べをしている刈谷刑事はもっと上手いですね。私も騙されましたよ」
普通の人相手ならともかく私相手に経験の浅い相手が普通に話しても感情は簡単に読み取れる。私から情報や失言を引き出そうと考えているのならもっと話術を磨いてくるべきだ。まぁ、話術というのは術とつくだけあって難しいものだから簡単に身につくものではないのだけれど。声に関しては気をつければ簡単に直るが感情が乱れると1番現れやすいのも声なため常に気をつけていなければならないものなのだ。
「じゃあ、僕は今何を考えているんですか?」
「お前が犯人なんだろ?さっさと認めろよって考えてますね。あと、私が感情が分かりやすいって言った時に自分の考えが読まれているかもって思って動揺しました。今は私に図星を指されて苛立ちつつも警戒していますね」
「違うと言っても高峰さんは信じてくれなさそうですね。ちなみに僕は何を警戒しているんですか?」
「私から殺害を認める手がかりになる発言を引き出すために慎重に話を進めようとして私の話す言葉に警戒しています。あ、これはちょっと私の推測も込みの考えですけどね」
まぁ、一瞬視線が揺れたから当たりだろうけどね。本当にまだまだ若いね。
「・・・僕の事を若いとおっしゃいましたけど高峰さんもまだ28歳でしたよね?僕とそれほど変わらないと思いますけど?」
うわ、自分から聞いたくせにスルーしたよ。
「女性に年齢の話を振るのは失礼ですよ?まぁ、私は気にしませんけどね。経験の話としては4年は結構大きいですよ。それと私は言葉を扱う仕事をしているんですよ?感情の機微に関してもさっきの理由がありますからね。刑事さんと私では圧倒的な差がありますよ」
「・・・」
ああ、ついに黙っちゃった。こういう時に黙るのは1番まずいんだけどな。負けを認めているようなものだし。いや、別に勝ち負けじゃないんだけどさ。
「はぁ、確かにあなたと私では圧倒的な差が存在するようですね」
溜め息を吐くと鳴海刑事は今までの雰囲気を綺麗さっぱり消し去った。どうやら演技は止めるようだ。まぁ、確かに無駄だし、演技なのがバレてると知った上で演技してるのって結構滑稽な感じがするけどさ、だからって開き直るのもどうなんだろうか?いや、ここは開き直るぐらいしか出来ないけどね。
「どうかしましたか?微妙そうな表情になってますけど」
「いえ、開き直るんだなって思っただけです」
「だって開き直るしかないじゃないですか?」
「まぁ、そうですけどね」
「それじゃあ、前にも聞きましたけどあなた、桜庭さんを殺したんじゃないですか?」
「前にも言いましたけど殺してません」
「でも、容疑者の中でアリバイがないのはあなただけなんですよ?」
「調べ方が悪いんじゃないですか?」
「あなたは殺害を否定していて、証拠もないですからあなたを犯人だとは断定できません。ですから捜査はしっかりと行っていますよ」
「それって、私が犯人だと断定できる証拠を見つけるために捜査しているようなものじゃないですか。そんな捜査の仕方をしていてはいつまでたっても犯人は見つけられませんよ」
「ああ、言い方が悪かったですね。僕はあなたが犯人だと思っていますからあなたの言うような捜査を行っています。それにあなたが今1番疑わしいのは事実ですから僕と同じような捜査の仕方をしている者は他にもいますよ。でも、あなた以外の犯人の可能性も考えた捜査をしている者もちゃんといます。さっき名前が挙がった刈谷警部もそちら側の捜査をしていますよ」
「あの、刈谷刑事は警部なんですか?優秀なんですね」
「気にするのはそこなんですか?」
「私以外の犯人を捜している刑事さんが優秀かどうかは結構重要な事だと思いますけど」
「・・・僕も警部ですよ」
「キャリア組は元から警部補からスタートじゃないですか警部にも一年近くあればなれるものらしいです。まぁ、キャリア組なんですから優秀なんだろうとは思いますけど経験が足りてませんから微妙なところですね」
「・・・」
「さっきからよく黙りますね?」
「・・・そうですか?」
「今の間はなんだったんです?」
「き、気にしないでください」
うーむ、開き直ったせいで余計に感情が分かりやすくなったために反応が面白くてついついからかってしまう。あんまりからかいすぎると後で面倒な事になりそうだから気をつけた方がいいな。
「分かりました気にしないでおきます」
そう笑顔でかえす事によって相手にとっては余計屈辱だというのは言ってから気づいた。全然自重できてないや・・・。
主人公は実はスペック高めです。しかもちょっとSっけがある事が判明しました。主人公は楽しそうですけど恋愛要素が今のところ全く出てこないという恋愛小説にあるまじき事態になってしまっています。大丈夫だろうかこの小説・・・。
今回の話はちょっと読みにくいと思いますので何かアドバイスがあればお教えください。