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先生、推理する

「何か?」


 私の表情を見て神崎刑事が訝しげに声をかけてきた。


「その証言した人ってうちの出版社の新入社員じゃないですか?しかも大人しそうなタイプの女性で、実家は裕福な方だと思うな。どうです?当たってますか?」

「何か心当たりがあるんですか?」

「そう言う訳じゃないですよ。ただ、今までの情報を整理した結果そうだろうなと思っただけです」

「今までの情報ですか?」

「と言ってもそれほどありませんけどね。まず、うちの出版社の人間だと思う理由です。私の交友関係は狭いですからね。私と桜庭さんの両方を知ってる人なんてうちの出版社の人間くらいです。後、お2人の反応ですね」

「我々の反応ですか?」

「さっき出版社の人に話してみたかと尋ねた時に微妙そうな表情をしてましたからね。出版社の人から聞いた話しだったからそんな反応をしたんだろうと思ったんです」

「なるほど。では、新入社員だと思った理由は?」

「私と桜庭さんが恋人で、しかも私の方から迫ったとか言ってるからですね」

「それがどうして理由になるんですか?」

「私、基本的に1人でいるのが好きなんです。別に人と関わるのが嫌なわけじゃないんですけど、やっぱり1人の方が楽なんですよね。しかもかなりの引きこもり。『時間があるなら読書がしたい、出かけるなら本のため』私はずっとそう言い続けています。これでも小説家としてそれなりに売れてますから金城出版で1年以上働いている人ならだいたいは私の性格知ってますよ。だから、私についてそんな事言う出版社の人間は新入社員の可能性が高いんですよ」

「女性だと思った理由は?」

「その証言をした人は桜庭さんが好きなんだと思ったからです」

「やっぱりそう思いますか!私も話しを聞きながらそんな感じがしたんですよね。桜庭さんの評判ってあまり良い物じゃなかったんです。でも、あの人は亡くなった事に凄くショックを受けていたみたいですし、桜庭さんの事は良い人だったみたいな感じで話すのに高峰さんには良い印象を持ってないみたいでしたから。今まで調べた事とあまりにも違う話しですし、その様子ですから正直この話しもあまり信憑性は」

「春川」

「あっ」

「あはは、話し過ぎちゃいましたね、春川刑事。でも、元からそうだろうとは思ってましたけど」

「え?」

「以前ほど疑ってる雰囲気が無いですし、そんな事実無根の話しをする人が大勢いるとは思えませんから。少数意見をそのまますんなり信じる程警察も甘くはないでしょう?」

「な、なるほど」


 感心した様に頷く春川刑事と違って神崎刑事はまたもや微妙な表情をした。まぁ、自分達の考えが読まれていると言われた様なものなのだから仕方がないのだろうけど。


「それで、話しを戻しますけど桜庭さんの事を好きなんだと思った理由は証言の内容が私に対して悪意が感じられるからです」

「悪意ですか?」

「女性の人物像の予想した理由でもあるんですけど、桜庭さんは前に言った通りモテるんですけど女性を金蔓と思ってる所がありますから口説くのはお金がある上に自分に貢いでくれそうなタイプなんです。新入社員のお給料なんて大した額じゃないですからそれなりに裕福な家の人だろうと予想がつきます。貢いでくれそうなのって恋愛にあまり慣れてなくて相手に簡単にはまっちゃうタイプでしょうから大人しそうだと思ったんです。そして桜庭さんの思惑通りになったその女性は、桜庭さんと私が話しているのを見てどう言う関係か聞いたんだと思います。で、桜庭さんは私に迫られて、断ったら金城出版ではもう本は出さないって脅されて付き合うしかなかったとか言ったんじゃないですか?そしたら桜庭さんの事が好きな女性としては私を憎むのも当たり前ですよね?私に対して悪意を持っていたから私から迫って桜庭さんと付き合ったなんて私が疑われるのは明らかな話しをしたんでしょう」

「一応筋は通っていますね」

「まぁ、こればかりは最低限の条件を元に私が想像した作り話みたいなものですから間違っている可能性も高いですけどね」

「それでも、正直あなたと桜庭さんが恋人云々の証言よりあり得そうな話ですよ」

「おや、そんな事言って良いんですか?」

「今更ですから」


 どこか疲れた様子の神崎刑事で春川刑事に振り回されているのが分かり少し笑えてしまった。


「・・・最後に1つだけ私も個人的な質問をしても良いですか?」

「構いませんよ。何ですか?」

「ずっと私達話していましたが短編は書けていたんですか?」


 躊躇いがちにされた神崎刑事からの質問に私は思わず微笑んだ。


「書くのが早いと言われているのは伊達じゃないんですよ。ネタさえあれば何時どんな時でも書けるんです。お気遣いいただきありがとうございます」

「・・・いえ、それでは我々はこれで失礼します」

「そうですか。お疲れ様でした」


 神崎刑事は少し照れた様な表情でそう言ってから春川刑事と帰って行った。








「・・・あの照れ顔は萌えた」


 1人の部屋で思わずそう呟いた私はきっと間違っていない。




推理って言うよりただの想像って感じですね(苦笑)

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