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ななつぼしとぼく

作者: 新垣 真那

小説家になろう の使い方を把握するためにほとんど即興で書いています。

その日、僕が起きた時には既に太陽は空高く昇っていた。


閉じたカーテンの隙間から部屋に差し込む光を見て、既に明るくなった外の様子が窺える。


――しまった、寝坊した。直感的にそう感じた。

僕はすぐに枕元でランプが点灯している携帯を手に取り、恐る恐る開くと予想通り、バイト先から数件電話がかかってきていた。


寝る前にマナーモードを解除しておくのを忘れてた。

ああだから目覚まし時計を買うべきだっただろう。

数日前に目覚ましなんて携帯のアラームで十分だろうなんて言っていた僕を殴ってやりたい。

バイト先に謝りの電話を入れる前に心を落ち着けようと、僕は枕元の煙草の箱を手に取る。

しかし、箱の中身は空っぽだった。

ああ、そういえば昨日の夜に全部吸ってしまったんだった。

何か悪いことがあるときはいつもこうだ。

空箱を憎しみたっぷりにグシャリと潰し、心の準備も出来ないまま僕はバイト先に電話をかける。


プルルル、とテンプレート通りの無機質な機械音が流れる。

いっそバイト先に隕石でも降ってこのまま誰も出なかったならどれだけ救われるだろうか。いや、生活は危うくなるが。

そんなことを考えているとガチャ、という音がして向こう側から声が聞こえてきた。

この声は店長だな、よし謝ろう。土下座モードだ。すみません店長僕です。寝坊してしまいました今すぐに向かいます本当に申し訳ありませんあと20分で着きます。

僕はマシンガントークでとにかく謝った。

電話の向こう側から深い溜息が聞こえる。

もう一言ぐらい謝っておこうと声をだそうとした瞬間、店長は君はもう来なくてもいい、今月分の給料はちゃんと振り込んでおくから安心しろと僕に告げ、一方的に電話を切った。


隕石が落ちようが落ちまいが、僕が職を失うことはもう決定事項だったようだ。僕はベッドの上で電話を持ったまま茫然としていた。なにも初めての寝坊で首を切ることはないだろうと思ったが自分が悪いことには変わりない。

幸い今までのバイト代は貯金していたので何もせずとも2ヶ月は生きていくことはできる。

すぐに新しいバイトを探せばなんとかなるだろう。

よし、まずは煙草を吸って落ち着こう。

そう思い再び枕元に手を伸ばすがそこにあるのは見る影もなく潰された煙草の箱だけだった。

ああちくしょうそうだった、煙草は切らしていたんだった。

僕は仕方なくベッドから落ちるようにして這い出し、着替えて新しいバイト先を探しに町へ出ることにした。

僕の住む町は僕がバイトを首になったなんてことはおかまいなしにいつもと変わらないままだった。

僕が何をしたって世界は変わらない。僕に変えられるのは精々あの四畳一間の部屋の中だけだった。ああ、なんて自分はちっぽけなんだろう。いっそ服を来た兎がやって来てマンホールの中にでも飛び込んで不思議の国のキチガイパーティの仲間入りをして一生を過ごせたならどれほど楽か。なんてありえないことを考えながら駅前を目指す。

駅前は相変わらず多くの人で賑わっていた。雑踏が自分のちっぽけさを笑っているようで、僕はとても孤独なんだという気にさせた。

そんな思春期の中学生のような思いを頭から振り落とし僕はアルバイト募集情報の載ったフリーペーパーを手に取り、駅前のマックに向かう。

フィッシュバーガーセットを頼んで待つこと1分。おまたせしましたと店員が言いながら注文通りの品物を持ってくる。僕はそれを持って出口近くの席に座り、フリーペーパーを開く。

コンビニ、居酒屋、ティッシュ配りなどいろいろなアルバイト情報が掲載されている。

ああどうしようか、やっぱ深夜コンビニが安定だよなぁ。時給いいし。

とりあえずお気に入ったバイト先のあるページに片っ端からドッグイヤーをつけつつ、僕はポテトを貪り食った。

ポテトを平らげ、フィッシュバーガーに手を伸ばす。

それを5口ほどで食べ終わり、飲み物を一気飲みして僕はマックを後にした。

もう夕方か、とりあえずバイト先候補への電話は明日にしておこうか。

そう思い、今日は久しぶりにゆっくりすることにした。

駅前のコンビニで雑誌を立ち読みして帰ることにしよう。

今日だけは、何も考えずやりたいことをしよう。

そう決意してコンビニへ向かう。

そこで手に取ったのは人気の週刊マンガ雑誌。しばらく読んでいなかったせいで連載作品はだいぶ様変わりしていた。ええ、なんでこいつ敵になってんの?え、あいつ死んだの?あの作品終わっちゃったのか。

読みながらどうでもいい情報が頭に流れ込んでくる。読み終えて、またほかの雑誌に手を伸ばす。それを繰り返した。

そのうちふと後ろを向くと店員が迷惑そうな顔でこちらを見ている。

まぁ仕方ない、そろそろ撤退してやるか。なんて心の中で偉そうにしながらレジに向かう。

店員に煙草の番号を伝えて300円ちょうどを出し、受け取って外に出る。

外はもう暗くなっていた。

今日はもう、仕方ない。明日から頑張るぞ!

そう考えながら幸運のジンクスの煙草を開ける。

そこから一本取りだし、咥えて息を吸いながら火をつける。

一日ぶりの煙草の味は美味かった。脳が痺れるようだ。

心の中のイヤなものを全て煙と一緒に吐き出した。

これで、明日からも頑張れる。僕は幸運の煙草を眺めつつ、そう思った。

すっかり暗くなった夜空を見上げると、煙草と同じ名前の星が輝いていた。

携帯から使うの難しいですね。慣れかな。

終わりです。

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