プロローグ:宿敵の君と、知らない過去
俺の名前は虎之助タイガ。高校二年生。
そして、日本でも有数の勢力を持つ極道――虎組の跡取りだ。
だが俺の人生は、権力や跡目争いだけでできているわけじゃない。
俺の家には、何十年も続く“ある因縁”がある。
炎凰組。
その頭首の娘、炎凰フェオ――通称フェオは、俺にとって生まれながらの宿敵だ。
不思議なことに、両家が五十年も憎み合っているにも関わらず、俺とフェオはなぜか小学生の頃からずっと同じクラス、しかも席が隣になることが多かった。
顔を合わせれば口喧嘩。
ことあるごとに張り合い、ぶつかり合い、意地を張る。
まるで、家同士の因縁とは別の“何か”に縛られているみたいに。
◇◇◇
……なのに。
俺は、あいつに惹かれている。
炎のような赤みを帯びた金髪。
お嬢様然とした気品の奥に隠れた勝ち気な性格。
凛とした立ち姿と、目が合うだけで胸がざわつくあの視線。
フェオは、否応なしに人を惹きつける存在だった。
気づいたのはいつだったか。
中学のどこかのタイミングで、俺はもう完全に恋に落ちていた。
最悪だ。
よりによって宿敵に。
家同士が争っているのに、告白なんてできるわけがない。
◇◇◇
だが今、俺にはそれより優先すべきことがある。
今週末、俺は虎組の古い倉庫の掃除を任されている。
ただの雑用のはずだった。
だが、もしかするとそこに――
この長年の因縁の真相が眠っているかもしれない。
なぜ虎組は炎凰組を憎み続けているのか。
なぜ、和解できなかったのか。
その答えが。
◇◇◇
五歳の頃、祖父に言われた言葉を今でも覚えている。
『タイガ、炎凰の人間には決して近づくな』
低く、厳しい声だった。
『奴らは傲慢で、嘘つきで……決して信用してはならん』
だが祖父は、それだけでは終わらなかった。
『四十年前――まだワシの父、お前の曾祖父が組を率いていた頃だ。虎組は炎凰組に裏切られた』
その原因は、一人の女性だった。
炎凰ミヤビ。
かつて炎凰家の人間だったが、後に虎之助の姓を名乗った――俺の曾祖母。
彼女は、虎組の象徴である聖遺物――
“咆哮する虎のミスリル紋章”を持ち去った。
それが、すべての始まりだった。
だが祖父は最後に、意味深な言葉を残した。
『歴史……記録庫……古き遺物……』
◇◇◇
記録庫。
虎組の古文書は、あの古い倉庫に保管されているはずだ。
もしかしたら俺は、
家同士の憎しみの裏に隠された“本当の理由”を知ってしまうかもしれない。
そしてそれは――
フェオとの関係すら、変えてしまう真実かもしれない。




