2『フランクリン・メリケンの空想現実論』
夢って見すぎるとしんどいよね〜〜
最近夢を見る。
……訂正しよう。しょっちゅう夢を見る。どうやら私は夢を見やすい体質らしい。大人になったら夢を見ないらしいがどうなのだろうか、という幼心の夢を思い出した。ふぅん。どうやら大人の私も夢を見るらしい。
最近決まった夢を見る。同じ夢。同じ世界の夢。きっと私が産まれるはずだった、別の私が生きている世界の夢。この世界と何ら変わらない、愛おしい世界の夢。鏡の向こう。
どうやらそういうのは『継続夢』というらしい。同じ世界の夢を見続けて生活することをいう。(私のは期間が短いから少し違うかもしれない)
あまりにもその世界は愛おしい。
その世界のフィリピンは不思議で、ブランコで移動していた。何故ならその世界のフィリピンには黒々とした崖が点在しているから。飛行機は船だったし、ビルの合間から飛行機は飛んで、ずっと雨で、鉄に雨音がはね返る。
そう言えば飛行機が船のやつはトラブった記憶がある。確か近くの日本人大学の成功大学に避難したっけ。凍るくらいの雨だった。
その世界の産寧坂には紫陽花が綺麗に流れる川があって、この間カメラを持って友達と行った。水が年がら年中紫色で、凄く綺麗だ。
南禅寺の方は四条河原町みたいで大きな白い観音様の像がある。
ずっとずっと、霧が立ち込めていて、その向こう側は知らない。
大阪の総持寺にあるガソリンスタンドの近くのビルの上には(神社の近くにある)綺麗な庭があって、空の中に空があった。
化学に詳しい友達が解説していたけど、よく分からない。何かの機械らしい。その子もカメラを持ってた。でもあの子が詳しいのって数II・Bじゃなかったっけ。
空庭温泉は釣り堀に変わっていて、友達と一緒に釣りに行った。餌の匂いが臭いんだよなぁ。……まぁ私が手を滑らせて餌を全部ひっくり返したのが原因なんだけどさ。
あんまり愛おしいのは結構なんだが、夢の男にストーカーされているのが難点だ。夢の人間達に帰るなと言われ続けて早何年(もしかしたら数日かもしれない)、メイドカフェの皆にも迷惑をかけたからやめて欲しい。
その男の曰く、自分達は夫婦らしい。顔はスッキリとしているが、目はじっとりとしていて人を見ていた。気味が悪い。……そんな話をされたのは福岡駅の北口だったと思う。随分と澄み切った駅だったと思う。
愛おしい夢だけど、そろそろ終わりたい。何よりこの夢の厄介な点は、誰かと一緒に居なければ絶対に迷うか雨に当たるのだ。
流石に友達と遊びに行く約束をしてすっぽかされて、アメリカの廃棄されたテーマパークみたいなところにたどり着いた時は病んだ。雨は冷たかった。
ほんの少しだけおかしい、だけどその『少し』が私に積み重なる。私は異世界に行きたかったのに。知っていた。これが異世界なのだ。
フランクリン・メリケンも、『夢こそまこと、まことこそゆめ』と言っていた。なんて言う国の人だっけ。……あー……ジャック史で習ったんだけどなぁ。
あっ、検索したら出た。はー、レイ王国か。あの国めっちゃ賢いもんな。エレンス学賞めっちゃ貰ってるんじゃなかったっけ。
そんな事を目がとんでもないことになっている旦那と、その旦那から助けようとしているのっぺらぼうの鼻に紙一枚のお面をつけている女に言う。
何となく分かるけど、多分鏡の向こうの三十歳の私は精神を病んでいる。こっちじゃ病院に行くべきことでも、ジャックの世界じゃ精神病は無視される。ジャックじゃ精神なんて無いんだって。
そうして夢が凄惨になっていく。そもそも悪夢を見ない為にリラックスして眠ったのに、平行世界にリンクするなんて思いも寄らなかった。
それに平行世界の私が精神を病んでるなんて!
目が覚める時の私はジャックの世界の私で、眠っている時は此方の世界の私(向こうからじゃ此方は何て言うんだろう……聞いてみようかと思ったけど、ジャックの私は話が出来ないしなぁ。)なのだ。
分かると思うけど、芦原駅から龍の巣と神社がある駅まではそこそこ遠いからなぁ。でもあんなに遠いのに四百二十円は安いかも。コスパ良し。
月の真珠姫の為に異世界に手を伸ばしたのに、その手は跳ね除けられてしまった。
ずっと貴女と居たい、って言ったら『ダメよ』って。……何となくその意味が、今なら分かる気がする。……あの時は恨んでいてごめんなさい。
堕落するだけじゃない。世界との齟齬が少しずつ、その人を蝕んでいくから。現に私は、今何処にいるか知らない。
……こういう訳で、今の私は頭がおかしい。まあそれは大体ジャックの私のせいだけど。
うそうそ。そろそろ私もあの夢を終わらせなければならない。人間は産まれた世界で生きていくしか道は無いのだ。
齟齬が、歪みが、お前を蝕む。
今日も私は夢を見る。
私が壊れてしまうまえに、わ た しを た すけ る た め に。