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君が美しすぎるから

作者: りったん

 エストラン王国の王太子フェルナンドは頭脳明晰で武術にもたけたオールマイティの美丈夫だ。そしてその婚約者ラダン公爵家の令嬢メリアも才媛と名高い。才能あふれる彼らは小さい時から英才教育を施され、あらゆる知識を身に着けた。内政はフェルナンドが、メリアは外遊して他国との調整を担っていた。


 エスランテ王国の王宮の一角、王太子の側近、そして重臣が一堂に会していた。彼らは重要な案件があると招集されたのだ。

「盗聴魔法具はないな?」

「ございません」

 側近の一人、アランが答える。ここまで念の入りように皆が緊張する。一体何が起こるのだろうか。

「お前たちも知っての通り、明日、メリアが五年ぶりに帰還する。国を挙げての盛大なパーティにしたいのだ。お前たちはメリアの親戚であったり友人だったりするだろう。彼女が何を喜ぶか教えてくれ」

「……」

 全員が黙った。

 理由は一つだ。

 メリアはすでに帰還している。王宮で知らないのはフェルナンドだけだ。というのも、メリアがフェルナンドにサプライズを仕掛けているからだ。

『一日も早くフェルナンドさまにお会いしたくて戻ってきたわ。夜にパーティを開いてフェルナンドさまを驚かすのよ。私の手料理を食べて頂くから料理長にはそう伝えてね』

 美しく成長したメリアは少し照れながらここにいる一同に伝えていた。

 フェルナンドは黙り込む一同に首を傾げる。

「どうした。どうして貝のように口を閉じるのだ」

「……その。まあ、なんといいますか。妹はフェルナンド様にお会いできるだけで喜びますよ」

 メリアの兄、シュダークがなんとか答えた。

「本当にそうだろうか? 五年……五年の空白があるのだぞ。他の貴族たちのようにパーティのエスコートもどこかに遊びに行くこともしてやれていない。王太子の婚約者でなければもっと楽しいこともできただろうし、自由になれた」

「いやその……娘は割と人生を楽しんでおりますぞ?」

 メリアの父、公爵が答える。

「メリアは優しいからな。王太子として彼女にできるだけのことはしてあげたい」

「それなら愛の言葉を伝えればよろしいのでは」

「……だめなんだメリアの顔を見ると好きすぎて何も言えなくなる」

「お手紙はどうでしょう」

「手が震えて何も書けない。ちなみにそれが原因で五年間、メリアに手紙を送っていない。贈り物は欠かしていないがな!!……ああどうしよう。メリアに愛想をつかされているかもしれない……!!」

 フェルナンドは頭を抱えた。公爵はパチっと手を鳴らして息子に合図を送る。息子はこっそり席を立った。フェルナンドは気が付かない。気心の知れた仲間内だけという気のゆるみとメリアに嫌われたかもしれないという恐怖が彼から知能を奪っていた。

「殿下が娘を思って下さっているのはよくわかりました。仮に、仮にですよ。私がメリアだとしたら、どんな言葉で愛を囁いてくださいますか?」

 公爵がフェルナンドに言った。

「ふむそうだな。まず、愛を伝える。君が一番好きで世界で一番愛していると言う。君の青い目が好きだ。鈴の鳴るような声も愛している。理知的なところも、情緒豊かな所も好きだな。メリアの奏でるピアノの音も好きだし、真剣な眼差しで政務に勤しんでいる姿もカッコいい」

 フェルナンドは公爵をまっすぐみてメリアを称えた。

「だそうだ。メリア」

 公爵の言葉で扉が開かれる。戸口には顔を真っ赤にしたメリアが立っていた。抜け出したシュダークが魔法器具でテレポートして呼び出したのだ。

「殿下、わたくしもお慕いして……殿下!?!」

 メリアが言い終わる前にフェルナンドはバッターンと倒れた。気絶した彼はしばらく起きなかった。メリアはベッドの側でずっと彼の手を握った。皆が心配して見守る中、数時間後にようやく口が利けるようになった彼は、

「メリアが美しすぎて失神してしまった」

 と答えた。

  五年の歳月は長い。愛らしい美少女だったメリアはいつのまにか絶世の美女へとなっていたのだ。思ったことを口にしただけなのだが、愛の言葉に免疫のないメリアは顔を真っ赤にして言葉が出なかった。

 代わりに真っ赤な顔でフェルナンドに抱き着いた。

 フェルナンドも彼女を抱き返し、

「お帰り、メリア。大好きだよ」

 そう言って笑った。


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― 新着の感想 ―
[一言] かーわいいーー! りったんさまの幸せカポーいいですねー
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