日本インフラを海外へ!? NTT規制緩和による「通信完全民営化」への道
筆者:
本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。
今回はNTT法改正というニックネームの改悪について僕の個人的な解説でもってみていこうと思います。
質問者:
閣議決定でいつの間にか決まってしまいましたね……。
筆者:
非常に残念なことですが、閣議決定の法案はまず衆参を通過する傾向があるのでほとんど決定です。
※2023年は国会に72件提出して70件成立
質問者:
具体的にはどういうことが問題なんですか?
◇NTTは外国人の影響下に入る
筆者:
主な改悪としては「経営の自由度の向上」です。
「国際競争力の強化につなげる」というお題目の下で、
現在は経営参加を禁じている外国人役員は代表取締役は除きますが、
全役員の3分の1未満まで認めることになります。
またこれらの役員の選任や解任について事後的に届け出ることも可能になります。
剰余金の処分に必要な認可手続きは廃止し、
正式社名である「日本電信電話」も変更できるようになるので今後は、
「NTTという名前すらなくなる」という可能性すらもあるのです。
質問者:
外国人役員が入ったからといって、国際競争力の強化に本当に繋がるんですか?
◇公共インフラは民営化してはいけない
筆者:
これについていつも思うんですけど、経営の合理化のために民営化という話があるのですが、民営化しなくても合理化することはできるんですよ。
公営のままの状態で外部から民間コンサルタントを雇えばいいだけですからね。
むしろ外国人が日本のためにならない政策、外国にお金を流す政策を行うだけなので害悪でしかないです。
今回の法改正で唯一良いところは技術開示義務撤廃ぐらいだと思います。
質問者:
「NTT改革」というのは確か「防衛財源」が契機だったと思うのですが、
NTT株売却についてはどうなったんですか?
筆者:
今回その点は見送られましたが2025年をめどに売却されてしまう可能性が高いということなので、今回の法改正は「布石」と言っても過言ではないでしょうね。
廃止されれば現在は株式3分の1以上の国の保有義務が無くなりますから、
それを下回ることによって国はNTTへの発言力を失いますので完全民営化になります。
「外国人の多様な観点」で滅茶苦茶になるのは明らかです。
そもそも国債で問題ないと思っていますし、
どうしても財源というのなら法人税をあげれば済むことです。補助金などで実効税率は10%台になっているので、それらの税制優遇を廃止しして40%レベルまで戻すべきだと考えます。
質問者:
なるほど……外国の影響が強くなってしまうということなんですね。
◇そもそもインフラを民営化してはいけない
筆者:
そもそも論になってくるんですけど、国民の誰もが使うような社会インフラを民営化すること自体が間違っていると思うんですよ
採算無視してやるのが公共インフラだと思いますからね。
公共インフラで「会社が黒字になる」ということはその分国民が損失を被っていることに他ならないわけです。
本当は黒字の分値下げをして安くできるはずですからね。
現在は3分の1まで保有しなくてはいけないNTTはむしろ50%以上や、100%に戻していかなくてはいけないんです。
質問者:
確かに民間企業になってしまえば特に利益が優先されてしまいますからね……。
筆者:
そうなんです。むしろ私企業になってしまえば利益を優先しても無理からぬことだと思います。
どう見ても国策としての失敗といえるのです。
実際に政府が出している“ガソリン補助金“の分、石油元売り会社が2022年度、23年度の決算過去最高益を更新し続けています。
国営であればこんなことは起きませんからね。
恐らくは補助金の方が中抜きしやすいのでしょうね。
23年秋までの間でガソリン価格低下分は3兆円に対して補助金は6兆円出しています。この差額は3兆円は会社の利益になったか、配当されたか、役員賞与になったかキックバックされたかで“消滅”しているのです。
そして、ヘタに外国資本が入ってしまえば、国民から不必要に吸い上げられた利益が海外に流れて行ってしまうだけですし本当に日本国民にとって利益はありません。
◇民営化の東京一極集中の弊害
質問者:
お金が吸い上げられることも問題ですが、
民営化の弊害は地方のサービスの低下でしょうかね?
筆者:
そうです。
23年9月に開かれたNTT法見直しに関する総務省の有識者会議では、全国知事会や全国町村会などが「NTTが最後のよりどころとなる責務がある」「競争力を求めるあまりインフラが二の次にされてはいけない」という意見がやはり出たようです。
採算が合わないところは切られ、実際にJRは廃線、郵便局は閉鎖・ポストの回収回数の減少などが起きてさらに過疎化は推進します。
恐らくNTTに政府の影響力が減れば地方の通信に繋がりにくくなるなどの現象が起きるでしょうね。
かといって地方の中規模の都市に再編成、移住を推進するといった施策もありませんから「東京1強」という様相を生み出しています。
これは過去に僕のエッセイで何回か出しましたが、
国土交通省の令和3年1月29日より開催された『企業等の東京一極集中に関する懇談会』での参考資料『企業等の東京一極集中に関する懇談会 とりまとめ』というところからの78ページ目以降のデータを参考にしますと、
全世帯の可処分所得 は東京は全国3位
中央世帯の可処分所得は東京は全国12位
中央世帯の可処分所得-基礎支出(食費や水道光熱費、家賃など)は全国42位
中央世帯の可処分所得-基礎支出+通勤時間の費用換算)は全国47位
と東京では賃金そのものは高いもののその他の基礎的な支出の金額が高いために可処分所得自体は少ないのです。
このために東京都は全国最下位の出生率となっています。
質問者:
少子化の原因の一つになっているんですね……。
筆者:
更に、首都直下型地震や富士山噴火、南海トラフなどでも多大なるダメージを東京が受けることが予想されています。
こういったリスクを軽減するためにも地方に分散することが重要であり、
そのための民営化阻止、国営化推進なのです。
今国民でできる抵抗としては「水道民営化」です。
国会においてはすでに決定しているのですが、運営に関しては地方に任されています。
そのために地方議会において水道民営化を決定しなくては実行されることはありません。
市議会議員選挙で投票に行く際に水道民営化に賛成か反対かについても大きな意思決定の一つとしていただければと思います。
※ちなみに海外ではフランスのパリなどをはじめとして、水道代金が民営化によって何倍にもなったことから国営化に戻っている地域もあるようです。
質問者:
民営化して一瞬安くなってもそのあと何倍にもなったら嫌ですよね……。
◇規制緩和をするところは立候補
筆者:
日本でも電気代がガソリン高の影響で一部の民営会社が値段を上げたという一件もありましたし、一時の利益に捉われないことが大事かなと思います。
本当に規制緩和だの民営化だのするのは“選挙立候補”だと思うんですよね。
現状国政選挙に出るのに1回あたり2000万円かかるのは異常なんです。
2世議員でない人間ほど企業献金だのキックバックだの裏金だのパーティー券に固執するのもある意味頷けるところなんです。
寄付、献金などを廃止し、供託金以外の規制を取っ払いお金のかからない選挙にするべきなのです。
選挙カーや街宣も正直言ってウザいだけですし、ネット全面選挙に移行するべきでしょうね。
質問者:
既得権益者はそれを棄てないでしょうけどね……。
筆者:
ちょっとずつでも改革が進めばいいんですが、
今回の政治資金規正法改正のチャンスも派閥解散と政倫審で誤魔化されそうな雰囲気があるのを本当に危惧しています。
野党も自ら議員の特権を棄てていけば一気に支持が集まると思うんですけど、
やっぱり議員の非課税の特権などは魅力的なんでしょうね。
質問者:
それでも自民党政権を是認するわけにはいかないので野党に投票しないといけないというのは本当に痛いですよね……。
筆者:
それがこの国の末期的症状なので仕方のないことだと思います。
ですが、ちょっとずつでも変わろうとしなければ悪い方向にしか行かないでしょう。
未来の世代のためにも今の異常性を伝えていければと思っています。
ということで本日はここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は民営化で利益を上げることは国民から金を吸い上げるので絶対にやめるべきであり、東京一極集中(少子化加速、災害リスクの上昇)を促進するだけなので絶対にやめるべきだ。
規制緩和をするのはむしろ立候補の自由化である
ということをお伝えさせていただきました。
今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。