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亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
1章「セントラルジュ陥落」
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8話

「一撃でやりなさい」


 奴等から懐に潜られる前に、私はラディンに命令を出す。


「無論」


 私の命令に対し、ラディンが頼もしい返事をくれる。

 敵兵を一撃で葬れるならば、敵との距離を維持しつつ一体ずつ倒していけばなんとかなる。

 私の頭の位置付近で滞空するラディン。ぱっと見の姿は全長30cm程で黄色い2足歩行の犬で、愛くるしいと言えば愛くるしい外見だったりする。

 私の命令を受けたラディンは自分の胸元で両手を重ね雷の魔力を集め出す。

 彼の胸元でバチバチバチと音を立てながら雷の球体が産み出されていく。

 自分の身体と同じ位の大きさになったところで、ラディンは産み出した魔法を斜め45度の角度で放出。敵アンドロイド分隊の中心部且10M程の高さに到達した所でその魔法が弾け、そこを中心とし地面に向け無数の雷が降り注いだ。

 ラディンの雷を受けたアンドロイド兵達は一瞬で機能を停止させ、崩れ落ちた。

 金属が焼き焦げた臭いが周囲に充満するが、人間のそれに比べれば大した不快感は抱かなかった。


「やるわね」


 ラディンが言う一撃とは分隊を一撃で葬り去る事だった。てっきり一体のアンドロイドを一撃で倒すと思っていた私は自分が扱う精霊を過小評価していたみたいだ。

 1つの敵分隊を打ち倒した所、空から様子をうかがっていたシルフィが私に報告を上げた。

 どうやら、今の惨状を見たもう1つの分隊は前衛二体後衛二体にチームを分け、それぞれが私から見て正面と右手側から襲撃を仕掛ける為に向かって来ているとの事だった。


「小生に取ってこの程度朝飯前也」


 ラディンは腕を組み、返事をし、次の魔法を作り出す。 


「そう。なら次も任せるわ」

「承知」


私は今居る場所から左手側方向へ向かい、敵分隊より正面と右側から挟み込まれる事を避ける。

先に視界の中に入った分隊は先程正面方向に居た分隊だ。

この分隊もラディンの魔法により一瞬で焦げた臭いを漂わせる鉄の塊へと変貌させる。

4体のアンドロイドを撃破するのも束の間、ラディンは残りの4体をせん滅すべく為の魔法を作り出し、同じく私の元へ襲撃を仕掛けようと試みている残りの4体のアンドロイドに向け魔法を放つ。

雷の嵐と言う言葉が似合いそうな雷撃を受けたアンドロイド達はやはり、今まで撃破した12体のアンドロイドと同じ運命を辿ったのであった。

中々に素晴らしい雷撃を放つラディンであるが、2度目と3度目の雷撃も1度目と同じ威力の魔法を使った為少々無駄な魔力を消耗してしまっている。

彼等精霊達が魔法を使う度に私の魔力が消費される為、出来る事ならば無駄な魔力を使って欲しく無かったが、そこまでは高望みだろう。

 現時点で討伐した敵兵はモスケルフェルト兵が大体20にマシンテーレ兵16で、残存している敵兵はまだまだ多い。

 もっと敵兵をせん滅すれば、少々危険であるがセントラルジュ城内に潜り込みお父様やお母様の蘇生を試みる事が出来る?

けれど、城内に潜入した敵兵がどうしているのか分からない。

 敵兵達が素直にお城から離脱し外に居る兵と合流していればいいけれど、城内の物資を略奪している可能性も十分に考えられる。

 城内の宝物庫には、金銀財宝だけでなく聖銃ハイリング・カノンと言った聖具もあり、敵兵がそれ等を奪取しない理由は探す方が難しい位。

 聖銃ハイリング・カノンか。

 この武器があれば単純に私の攻撃力もあがるし、何よりもこの武器で倒された人間が蘇生魔法により蘇生されればその術者の従順な下僕しもべになる、なんて能力がある。

 この先、私の味方となる人員の確保が出来る事に対する利便性も考慮すれば出来る事なら入手しておきたい所だけど。

 城内での戦闘行為は、屋外と違い自由に飛び回れない。

 更に、建物自体を燃やしてしまう危険がある炎の精霊、雷の精霊を扱う事が難しく攻撃力迄低下してしまう。

 その状況下で多数の敵に襲撃されてしまえば私が生存する事は絶望的。

 万が一敵の手に渡っても、敵国の人間には蘇生魔法を扱うどころか神聖魔法を扱う人間はまずいなく、聖銃が悪用される危険は極めて低い。

 残念だけど、お父様とお母様、聖銃も今は諦めるしかない。


「シルフィ、敵兵の様子を」


 お城に戻るかどうかの考えをまとめた私は、敵兵の動きを改めて確認する為シルフィに偵察を命令。


「ありがとう」


 シルフィの偵察はすぐに終わり、私が差し出した手の甲に止まったシルフィは私のお礼の言葉を受け少しばかり嬉しそうにしている。

 シルフィの話によると、敵兵はセントラルジュの街内に駐屯している様で私やシフォンを討ちに来る部隊は居ないみたいだ。

 敵部隊に生じた損耗を考慮し、私を追う事を諦めた? それならありがたい事か。

 逃げた先で何があるか分からない以上魔力の消費も避けた方が良いかもしれない。

 敵の方から攻める意思が見られないなら、せん滅はここで止め、素直にシフォン達と合流した方が良さそう。

 私はシフォン達と合流する為、二人が逃げ延びた先である樹々に囲まれたエリアに向かう事にした。

 シルフィの力を借り、それ等の樹々よりもやや高い位置まで飛翔。

 上空より見下ろした樹々の集まるエリアつまり森林エリアは美しい緑色を保っており、頭上からは明るい空に浮かぶ太陽が発する熱を感じ今さっきまで敵兵と戦っていた事を忘れさせてくれる。

 一瞬だけ、シフォン達を探す事を忘れてしまったがすぐに思い出しシフォン達の足ならば辿り着いているだろう場所を中心にシフォン達の姿を探す。

 森林エリアとは言え獣道があるお陰か、数分程二人を探した所で見覚えのあるピンク色の髪をした人間と金色の髪をした人間を見付ける。

 髪の色を考えればこの二人がシフォンとアランでほぼ間違い無い。

 私は上空より二人の前に降り立った。

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