44話
「それがどうかしましたか?」
これで、お爺さんは私が紋章の個体差について知っていると思うかもしれない。
「なぁに。この国の王族は良い輝きを持つ慈愛の紋章を持つらしいのじゃ。あくまで噂じゃがの。もしも王族なら魔力量が高いと思うのじゃ。魔力量が高ければこれ等の石像を何とか出来るかもしれないと思ったのじゃよ。よしんば王族で無くても遠い親戚位の可能性に期待もしてるのじゃ」
紋章の個体差について噂で知っている、か。
なら噂だから違う、と誤魔化し私が王女フィアである事を隠せる。
逆に噂が合っていると自分が王族と遠い親戚であると嘘をつく事も出来る。
しかし、正体を隠せばこの街の異常についての情報を引き出す事は難しい。
色々考えてみるけど、めんどうだ。
私にとって耐えがたい不都合が生じれば、その時は聖銃を使えば解決出来る。
どうにも私は策士には向いていない。多分シフォンはその辺りの事が得意なのだろうがその辺り色々と仕方があるまい。
「例えば、です。私が王女と言ったら信じますか?」
お爺さんの眼の色が少し変わった気がする。
「ほっほっほ、信じるのは無理があるかのぉ。しかし、死者を蘇らせる事が出来たら話は変わるかのぉ」
神聖蘇生さえ使えば私が王女フィアである事を証明できる。
まぁ、この魔法を扱えるのはこの大陸で私だけだから当然なのか。
「そうですか、ですが仮に蘇生を試みる事が出来たとしても適切な対象が見当たりません」
では、と目の前のお爺さんを一度絶命させ、蘇生させるのは幾ら何でもマズイを通り越している。
「ほっほっほ、それなら其処等辺に沢山おったじゃろう?」
「沢山?」
「そうじゃそうじゃ、お主が見て来た石化した村人じゃ」
石化した村人? 私が調べたそれからは僅かに生体反応が確認出来たけど?
「石化した村人ですか? 確かに生きている様には見えませんね」
何か違和感を抱くが、もっともらしい返事をし、お爺さんとの話を合わせる。
私が触れた石化した村人は確かに生体反応があったのだから。
ただ、私が調べたそれが偶々生体反応が残っていただけなのかもしれない。
ただ、お爺さんの話を聞く限り、石化した村人はまず生体反応を示さない様に聞こえる。私が見た事とお爺さんの話が矛盾している事が少し気になるところか。
「石化してから随分たつからのぉ……じゃから、蘇生に成功すればもしかすれば元の姿に戻れるかも知らんと思ったのじゃ」
お爺さんが1つ間をおいて、
「この広大な村に年寄り一人はちと寂しいもんがあっての」
お爺さんがどこか哀愁を秘めながら呟く。
一瞬、私は何処か悲しい気持ちになってしまうが。
いや、待て。この村に一人? この村のさっきは数少ない生存者と言っていた様な?
何だか妙に引っかかる。
「ぐおぉぉぉぉぉ。お爺さん、ずっと独りぼっちだったのかよ! こいつは実に可哀想なはなしじゃねぇかよ!」
頭目が涙ぐみながら、私に対し賛同の意を求めるかのように見つめてくる。
大の男が気持ち悪い。
その言葉が喉元まで出かかったのだが、ぐっとこらえて。
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