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亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
1章「セントラルジュ陥落」
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4話

 暗い通路を小走りで駆ける。

 証明ライティングに照らされた蜘蛛の巣が所々目に映る。

 ネズミと思われる動物の鳴き声も聞こえて来る。

 正直少しばかり気味の悪さや恐怖心を抱いてしまうのだけれどもそんな事言っている場合ではない。

 私達には出口を目指して走り続けるしかない。

 そして出来るだけ急がなければならない後方から追手が来る可能性はあるし、隠し通路を見付けた別部隊が前方から襲撃して来る可能性だって0ではない。

 隠し通路の長さは300M程、けれどその距離が物凄く長く感じてしまう。

 それは危機感からか緊張感か、はたまた何事も無い事を祈る気持ちなのか。

 そんな願いは虚しく潰えて。人生と言うものはそう上手く行くものじゃないなんて感傷に浸る事すら許される訳が無い。

 敵兵によりお城が陥落させられるなんて不運に鉢合わせたばかりだけど、だからと言って二度と不運が来ないなんて保証は何処にもない。

 そんな事は分かっている。


「いたぞ!」


 隠し通路の奥から人間の声が聞えたから、私達を探す人間なんてモスケルフェルト兵しか居ない。

 不幸中の幸いなのは、マシンテーレのアンドロイド兵で無くモスケルフェルト兵だった事なのかもしれない。

 いいえ、まだ敵は多数と決まった訳じゃない。

 少数の可能性はある。

 5、6人位ならどうにかなる。


「フィア様! 私が参ります!」


 アランが叫ぶ。

 近衛兵が王女の盾になる。それは当然の判断。

 けどそれではダメ、高い確率でアランが犬死するだけになってしまう。

 仮に犬死されたとして、幾ら神聖蘇生リザレクションで蘇生が可能だとしても、術者の私が襲撃されたらお仕舞いだし、何ならシフォンが狙われてもお仕舞い。


「待ちなさい。シフォン、下がって。アラン、貴方は私とシフォンの間で身構えなさい」

「ですが、フィア様!」


 騎士は姫を守る事が使命と言わんばかりな真っ直ぐな瞳で私を見据える。

 気持ちは正しいし悪いとは思わない。

 けれど、


「あのね、貴方が私の前に居たら、私が召喚した精霊の魔法が直撃するわよ。それとも何? 貴方、私の精霊魔法で死にたい? 後で生き返らせられるけど、無駄な魔力は消耗したくないのだけど?」


 当然、私はアランに対し威圧気味に言う。


「はっ!? 申し訳ありません」

「分かったら良いわよ、敵との距離がある内に仕留める」


 アランに言った通り、私は神聖魔法の他に精霊魔法も扱える。

 私の魔力を媒体に、精霊を召喚し主にそれぞれが持つ属性の魔法で対象を攻撃する魔法。

 私は炎、雷、風、地と4属性の精霊を召喚する事が出来る。

 ただし、魔力コントロール技術の問題で同時に2体の精霊迄しか召喚する事が出来ない。

 最も、同時に召喚出来る事自体高度な事なのだけども。


「ラディン!」


 私は雷の精霊ラディンを召喚。

 私に呼ばれたラディンは、私の右肩付近にその姿を現した。

 その姿は、全長30cm程で二足歩行をしている犬の姿をしている。

 色は雷属性にあやかり黄色である。

 どちらかと言わずとも愛くるしい姿をしており、心寂しくなった時密かに彼を愛玩していたりもする。


「有無」

「やりなさい」

「御意に」


 ラディンは魔力を集め、胸元に雷の球体を産み出す。

 それはバチバチと音を立てながら徐々に大きさを増して行く。

 その球体がラディンの身体を包み込める程の大きさになった所で、迫り来る敵兵目掛けその魔法を放った。


「ぐ、ぐああああああああ」


 球体は戦闘を歩くモスケルフェルト兵に直撃。

 モスケルフェルト兵は大きな悲鳴を上げ、その場に倒れ伏せる。

 金属と、肉体が焦げた気持ちの悪い臭いが鼻を突く。

 その臭いに対し私は思わず顔を歪めるが、必死に意識を保ちながら現状を確認する。

 黒焦げの死体が一つ、二つ、三つ。

 ラディンが放った魔法により、直撃したモスケルフェルト兵とその近くに居た同胞も電撃のダメージを受け等しく黒焦げの死体になっていた。


「お、お姉様!?」


 シフォンが身体を小刻みに震わせながら後方を指差した。

 シフォンが指差した先には、敵兵の姿が。

 たったの3人討ち取っただけで、前方から見える敵を全滅させられたとは思えない。

 まだ、最低でも数人敵兵いると考えるべきだ。

 となると、私達は狭い通路内で挟撃を受ける事になる。

 まだ敵兵との距離があるとは言えこの状況、極めてマズい。

 物理属性及び魔法属性含めて何の自衛手段も持たないシフォンは敵から懐に潜られたら終わりだ。

 近衛兵、精鋭騎士であるアランですらモスケルフェルト兵2人を相手にすれば恐らく命は無い。

 逃げ道を断たれ絶体絶命の状況。どうする?


「アッス! 壁を作りなさい!」


 私は、土の精霊アッスを召喚し、シフォンが指差した少し先に魔法で岩の壁を作る様に命じる。

 アッスは黙って頷くと、岩壁ロックウォールの魔法を発動、シフォンが指差す先に、来た道を塞ぐべく岩で作られた壁が現れる。

 これで、背後からの侵攻を防げる、と良いのだけども。

 モスケルフェルト兵の怪力を前、完全に進行を止めるのは無理だろう。

 だから、せめて正面から来る敵を討伐出来るだけの時間を稼げれば良い。


「ラディン、追撃を!」


 私の命令を受けたラディンは、再度電撃の魔法を放つ。

 遠くで断末魔の叫び声が聞こえた。

 ラディンの魔法を受けた敵兵だろう。

 今の魔法で即死したと考え、次の手を打たなければならない。


「お姉様!」


 シフォンが今にも涙を零しそうな目をしている。

 後方から轟音が聞えている。


「シフォン。計算通りよ、問題無いわ」


 その音は敵兵が壁を破壊している音だろう。アッスが作った岩の壁に亀裂が入っている。

 思ったよりも時間を稼げていない。

 一度、ラディンに魔法の壁を張らせるか? いや、奴等の事だ、雷撃により受けるダメージを無視し壁を突破するだろう。

 雷の壁では、いましがたラディンが放った魔法に比べ威力が落ちてしまう。

 少なくとも、一瞬で黒焦げの死体になる事は期待出来ない。

 ここから逃げる為のエリアは前後の他にも上下左右、全て石の壁に覆われてしまっているから移動自体不可能。

 けれど、アッスの力を使えば実現は可能。

 私とシフォンとアラン、3人ならばどうにか出来る。


「シフォン、アラン、地中に潜るわ、私の傍に来て!」


 アランとシフォンはきょとんとしながらも、私の近くに集まった。


「アッス、お願い! ラディンはもう一度同じ魔法を撃ったら私の元から離れないで」

「御意」


 私達は、アッスの力を借り地面の中に潜り込んだ。

お読みになって頂きありがとうございます。


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