39話
「変化無いな」
頭目が言う通り、私の魔法を受けても目の前の石像には何の変化も見受けられなかった。
石化の原因は体内に入り込んだ毒素では無い様だ。
邪術が原因である可能性があると考えた私は、石像に対し解呪の魔法を施してみる。
「何も変わらない」
やはり、頭目が言う通り石像に変化が見られない。
と思ったが、目を凝らしてみるとこの石像の指先が僅かに肌色へと変化している様に見えた。
つまり、この石像は何者かにより施された邪術により石化させられたと考えられる。
しかし、私の解呪魔法ですら僅かにしか石化を解除が出来ない。
もしかしたら、ありったけの魔力を使えば石化を解除出来るかもしれないが、失敗した場合は中途半端に元の肉体を晒す事となる。
もし、この石像が生きたままだとした場合、恐らく栄養を供給できないその身体は腐り果てるか、餓死するか、何にせよ命を失う可能性が高いだろう。
さて、どうしたものか。
待てよ? この石像が死んでいるとするならば神聖蘇生を掛ければ元の姿に戻り生き返るかもしれない。
生きている場合、効果は表れないのだけども。
私は、目の前の石像に対し神聖蘇生を掛けてみるが。
残念ながら目の前の石像は何の変化も現れなかった。
この石像は生きている事に間違い無い。
ならば、何らかの手段を使い石像を絶命させ、その後に神聖蘇生を(リザレクション)を掛けてみる? けど、絶対に成功するとは限らないし失敗した場合は国民一人の命を奪い取る事になってしまう。
石像となっていた時点で死んでいると考えもあるが、特に知らない地で無意味に人殺しの汚名を被ってしまうのは損でしかない。
後考えられる事とすれば、この石像に邪術を掛けた主を仕留める事が出来れば私の解呪魔法で石化を解く事が出来る様になるかもしれない。
石像の命を一度奪うにしろ、これ等の石像に邪術を掛けた主を探すにせよ情報を手に入れないとどうしようもなさそう。
この村に生存者の一人位はいるだろうし、少なくとも領主は居ると思う。
「生存者を探しましょう」
「そうだな。それにしてもこの石像、俺の弟によく似ている」
「そう? 随分と若く見えるけど」
頭目の年齢を考えたら、弟だって30歳近いと思う。
けれど目の前の石像は10代、少年と青年の間位と若く見える。
「そうなんだよな、俺の弟だって30歳近いおっさんだろうしよ。もし、俺の弟が成長したらこんな感じの少年になっていたのかも知れねぇ。けど、幼少期の面影は感じちまう」
自分や他人に似ている人間は何人もいるとは思うけど。
石になった人間は成長が鈍化する、だから頭目の弟が若いままなんて可能性はあるか。
「弟、ね」
「どうした? 何か意味深に聞こえっけど」
「いえ、何でも無いわ村人を探しましょう」
私達は情報を探す為に閑散としている街の奥へと歩みを進める。
道中見られた木造の建物は、長年人の手が入っていないのか朽ちている建物が多かった。
また、似た様な石像が何体も見受けられる。
この街の住民が全て石にされているのだろうか? 一体何の為に石化させたのか分からないせいか少しだけ不気味に感じてしまう。
しばらく歩いた所で、人の手入れが入っていると思われる建物を見付ける事が出来た。
私は、建物の中に住んでいる人に向け声を掛ける。
反応が無い。
いや、中に住んでいる人が動く音がかすかに聞こえて来る。
程無くして、建物の住人が玄関のドアを開ける。
その姿は、白髪の老人男性だった。
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