36話
しかし、仮に聖金貨5枚で売られる少女を、奴隷商人が聖金貨2枚辺りの金額で買い取る様な事があるとするならば、十分なお金を手に入れた山賊達が足を洗う可能性は考えられるとも言えるけれど。
確かに山賊自体悪党ではあるが、世の中にはそれを越える悪党が居るのかもしれないと考えさせられる。
「意外なものね。貴方達は何故山賊になったのかしら?」
「なるしかなかった、からだな。俺達は、口減らしとして親から捨てられた奴や、親から奴隷商人に売られた所を命からがら逃げて来た。そんな奴等ばかりだ」
親から捨てられた子の末路がどうなるか、想像に容易い。
生きていく為には略奪するしか無いのだろう。
けれど、これ等の事は国、いえ領主がどうにかしなければならない事。
だからと言って私の耳に彼等の存在は入っていないしお父様やおじい様がそれを話している事もなかった。
これ等の話はセントラルジュ城内まで届く事は無かったのだろう。
「貴方達の領主は何もしてないのかしら?」
「何もしてないな。それどころか俺達領民から重税を取り立てている。俺達が住んでいた土地はあまり肥えている訳じゃなかった。それでも、皆で協力すればその冬を越せるだけの食料は手に入った。けど、領主はそれを分かっていながら税を上げ、俺達が冬を越せる為の食料を取り上げた。だから、その中でも生活が苦しい家から子供達を捨てるなり売るなりするしか無かった訳だ」
その領主は私腹を肥やす為に手段を選ばず領民から巻き上げているのだろうか? しかし、痩せた土地にも関わらず搾取をする理由が気になりはする。
「その状況で重税を課す理由が分からない」
「なんでも、領主は邪神なんとかかんとかを崇めているらしくって、この国を救ってくれるのはその神だと言っていた覚えがある。そう言えば、怪しいローブを身に纏った人間が領主から金を回収している所を見た覚えもあるな、あれはなんだったんだ? って思うけどな」
それって、ヘルツォーク教の信者が領主からお金を回収した?
だから、ヘルツォーク教団が幾つか分からないけど、セントラルジュ国の領主からお金を集めていると思える。
「けどよぉ、この国の城は敵に取られちまったんだろう? 邪神だろうがなんだろうがその神様さえ来てくれれば、この国は敵兵から守ってくれたかもしれねぇな」
頭目が複雑な心境のまま話を勧める。
お城が陥落してしまった以上、神に頼りたい気持ちは分かるけどだからと言って邪神は話にならないしそもそも神が居るとも思わない。
この頭目はどう見ても10代じゃない、どれだけ甘く見ても30代は硬い。
で、この頭目の話を聞く限り自分が捨てられたのは子どもの頃だろう。
シフォンの話を聞いた限りヘルツォーク教自体最近発足された様に感じる。
そう言えば私はお婆様の記憶があまり無い。お婆様も邪術を扱える話だけは知っている。
しかし、ヘルツォーク教の教祖はシフォン。何かが引っかかる。一体何だろうか?
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