35話
「おう、飯だ飯、盛大に行くぞ」
頭目が手下に対し食事の準備を進める様命令をし、私は頭目に食事用の部屋へ案内される。
中央には焚火を起こせるエリアがあり、それを周囲に囲める様に草を乾燥させた敷物が敷かれている。
程無くし、適切な大きさに捌かれ串刺しにされた動物の肉がいくつか運ばれ、その内の1つが焚火に晒され焼かれる。
それは中々豪快であり、お城の中で得られる食事と比べ気品は一切感じられないがこういう物も悪くは無いか。
私は客人であると、頭目の命により焼けた肉はまず私に提供された。
折角であるし、空腹である事は事実である以上私はそれを有難く口にする。
味付けは香辛料と塩であり、口に含んだ瞬間肉の旨味が広がる、と同時に臭みも広がってしまうがこれは仕方が無い事。
「王女様。エールは行けるクチか?」
頭目がエール、つまり麦酒を勧めて来る。
残念ながらお酒を飲んだ事も無いし、酔うと正常な判断が出来なくなるらしいのでここは断るしかない。
「いえ。飲んだ事も無いし飲みたくない」
「そうか、残念だな。なら俺達は頂くぜ?」
「御構い無く」
聖銃のお陰か、自分がエールを煽る為の確認としたみたいだった。
アジトに居る山賊達にも肉やエールが行きわたり、それなりに堪能した所で頭目が少し神妙な空気をしながら、
「王女様、折角なんで俺達の身の上話でも聞いちゃくれないかい?」
「そうね。構わないわ」
「ありがてぇ。王女様は悪党が憎い、正義の為に俺達と戦った、そうだろう?」
随分とストレートに聞いて来るが山賊なのだから当然か。
「ええ、そうよ。それで間違い無い」
「そうだよな。王女様が言う通り俺達は殺しもやれば人攫いもやっている。略奪もだ。けどよ、生きていく為にやるしかねぇ。俺もそうだ、手下達を食わせて行く為仕方無く、だ」
他人に散々危害を加えておいて仕方が無いとぬかす。これが聖銃のお陰で従順な下僕で無ければすぐさま断罪してやりたくなる位虫唾の走る話にしか聞こえない。
「例えばな、12歳位の少女を誘拐、奴隷商人に売り飛ばす。これが幾らになると思う?」
あまり聞きたくも無い話。
「そうね、若い女の子ならば魅力もあるし労働力にもなるし将来性もあると考えれば聖金貨5枚位かしら?」
聖金貨5枚は、これだけあればそれなりの土地と家が手に入る額。それなりに育った人間の価値としてはこれ位が妥当か?
「それが、な。金貨1枚位が良い所だな。奴隷商人が売り飛ばす時には聖金貨5枚の価値が付く女もいるけどよ。俺達は山賊で、奴隷商人達はそこに付け込んで安く買い叩く。だからと言って金貨1枚自体安い訳じゃない、1つの家庭が3~4カ月暮らせるだけの金だからな」
まるで自分達は奴隷商人のせいで悪事から抜け出せないと言っている様に聞こえる。
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