32話
「へ、へへへ……何も……おっと少し意識が朦朧としたぜ、な何事もないじゃねぇか、脅しやがってよぉ」
冥具で撫でた部分に斬り傷は出来ていない。だから血が流れている様子は無い。
意識が朦朧としたとこいつは言っている。
つまり、この冥具は魂に直接干渉をしているのだろうか?
「そう、おめでとう」
私は、この冥具で山賊の喉元を切り裂いてみる。
普通のナイフならば、切られた瞬間大量の血が溢れだし数秒もあれば絶命するのだが。
「だから、そんなおもちゃで切られても痛くも痒くも……」
バタン。と音を立て山賊がその場に崩れ落ちた。
「おい!? どうした? 寝ている場合じゃないだろ?」
やはり、切られた山賊の喉元から出血する様子は無い。
しかし、その場に崩れ落ちた山賊から生命反応を感じない気がする。
それを確認する為私は崩れ落ちた山賊に光霊治療を掛けてみる。
「死んだ?」
私の光霊治療を受けても山賊はピクリとも動かない。
私の恒例治療は目立った外傷の無い、わずかでも息のある生物ならば間違い無く全回復しさっと立ち上がる事が可能な位強力だけどその様子は無い。
私はふと、右手に持つ冥具に視線を向ける。
気のせいか、ほんの僅かばかり剣身が長くなっている気がする。正確に測らなければ分からないが多分11cmになった様に見える。
つまり、この山賊の魂をこの冥具が吸収したと考えられ、魂に与えるダメージは普通の武器で与えたダメージに比例している可能性が考えられる。
次に気になる点が一つ。
この冥具に魂を吸われた人間が私の神聖蘇生の魔法で蘇生させる事が出来るのか?
その答えを確かめるべく、冥具で魂を奪い取った山賊の死体に対し神聖蘇生を施す。
「ダメね」
私の蘇生魔法を掛けられた死体は、数秒もあれば身体の何処かを微動位させるのだけど残念ながらこの死体が再び動き出す様子は無い。
つまり、この冥具により魂を刈り取られた生物は私の力をもってしても二度と生き返る事は出来なくなるみたい。
後で蘇生させるつもりの相手が現れた時は注意が必要なところか。
「お、おま、おまえ、な、仲間に何を!?!?!? い、いやたたたた、助けてくれ何でもする、この通りだ!?!?!?」
最後の1人が錯乱しながら命乞いをしているが、幾ら従順な下僕を作る事が出来たとしても精々弾避けにしかならない輩は3人も要らない、そこに転がっている2人も居れば十分。
悪いけどこいつには冥具の糧となって貰う。
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