29話
「お頭!」
私を囲っていた彼の手下達が頭目の元に集まり身を案じたかと思えば、
「貴様! お頭に何をやりやがった!」
手下の内一人が、鉈の様な刃物を右手に持ち私を睨みつける。
ほぼ間違い無く頭目の敵を討とうとしている。
「何って? ちょっと私の実験に付き合って貰っただけよ」
頭目は胸から大量の血を流している。心臓を貫かれた以上まず助からないと思うけれど絶命まで少し時間がかかるか。次は素直に頭部を狙い即死させた方が良さそう。
私は、刃物で自分を斬りつけようと踏み込んだ山賊の頭部目掛け魔力弾を3発発射。
さっきと同じ音を立て発射された魔力弾は盗賊の頭部を貫通、一瞬で絶命させる事に成功。
ドサッと音を立て崩れ落ちる仲間を目の当たりにした残りの山賊は、
「ひ、ひいいいいいい!?!?!?!? い、命だけはお助けを!?!?!?!?」
私に命乞いを始める。
私が人間を一瞬で絶命させる事が出来る武器を所持していること及びそれが自分達にとって危険である事。それ位の脳みそは持っているらしい。
「お、おい、テメー等ふざけ……」
胸元からおびただしい量の血を流している頭目が、逃げ腰になっている手下に喝を入れようとする。
逃げる事は許さない、男なら戦えとでも言いたそうではあるが、胸元を魔力弾により貫かれた身体は限界を迎えたのかそのまま事切れたみたいだ。
残すは二人。ここは当初考えた通りシフォンから貰った冥具の実験をしましょう。
私は細い棒状の手の平から少しはみ出る程の長さである冥具を右手に持ちミドルソードをイメージする。
直後、冥具は私がイメージした物に近いミドルソードと変貌した。
……と思いきや残念ながらその剣身は10cm程しか無くナイフと言った方が良い代物にしかならなかった。
しかし、その刃は青白い光を放ち手にしている私ですら妙な寒気を感じ取ってしまう。
その剣身は鉄と言った実体を持つ刃には見えず、ぱっと見だけど魔力により産み出された刃の様に見える。
シフォンがこの武器は魂を吸収し成長すると言っていた通り、これは魂の刃と直感してしまう。
とは言えこのままでは心もとないので、私はロングソードをイメージしてみる。
……残念ながら剣身が伸びる事は無かった。多分この冥具の魂残量からこの剣身が限界と考える必要がありそう。
「へ、へっへっへ、そんなしょぼい獲物しかないのか……?」
「奇妙な武器は使えなくなった……のか……?」
私が手に持っている得物が貧相だと思ったのか、残った山賊達が逃げ腰な態度から応戦の意思が見える態度へと変える。
勿論冥具の実験をしたいだけであり、聖銃を撃つ為の魔力が尽きた訳では無いのだけど、山賊の知能レベルからすれば聖銃の弾が切れたから残っている白兵武器で自分達と戦うしかないと勘違いしているみたいだ。
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