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亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
3章「マギーガドル国へ向けて」
27/44

27話

―現在、フィア視点―


 まさか、意外と泣き虫でおっとりとした人を騙すなんて無縁にしか見えない妹のシフォンが邪教徒の教祖だったのは予想外を通り越して今私は現実世界に居る事さえ疑問に思ってしまった。

 これは、悪い夢なのだろう。

 王都襲撃から今まであった事全てが夢であり、目を覚ませばセントラルジュ城内でのいつもの日常が始まるに違いない。

 そう願いたいと思いながら、左手の甲を抓ってみると痛みを感じた為、残念ながらこれは過酷な現実である事を思い知らされる。

 シフォンの命により近衛騎士のアランは彼女の元に取り残される事となった。

 その代わりに、生物の魂を吸い成長する冥具を受け取った。

 近接戦闘が不得手な私にとっては有難い代物なのかもしれない。

 だから、私を護衛する為の騎士、アランの代わりになると言われれば確かにそうなのだろう。


「アラン……」


 私は思わず彼の名を呟く。

 平民出身の彼であるが果てない努力の末、セントラルジュ国近衛兵の地位に辿り着いた。

 私自身、精霊魔術と剣術との戦いであるが彼とは何度も鍛錬の相手になっている。

 少なくとも数年はセントラルジュ国に仕えているからだろうか? ただの近衛兵と言われればそこまでと言える相手に対し私は情を抱いている気がして来た。

 幾ら近衛兵と言え所詮は平民出身の男。王族の私が特別気にする理由は無い。シフォンが欲しがったのならば、じゃあシフォンの好きにすればと思えば良い。

 難しい話では無く、それはごくごく当たり前の話だ。

 確かに、アランの容姿は整っているし平民女性のウケも良いしもしかしたら彼に見初める貴族令嬢の1人や2人居ても可笑しくない。

 だからと言って、少し物好きな貴族令嬢の目に留まりはするが、大半の貴族令嬢の目に留まるとは思えない。それは平民だから仕方が無いし所詮どれだけ努力して地位を築いても平民は平民。

 そう、平民に対してはその様に思わなければならない。私の身を守る別の新しい駒を手に入れる事を考えなければならない。

 何故かしら? アランに対して思考を巡らせてしまうのは? 何故? ナナリィ王女の元に辿り着き、可能ならばアランを取り戻す為の相談をしたいと考えてしまうのは? 私が思っている以上に彼は優秀で手放すのは惜しい駒だからだろうか? シフォンがアランを欲しがっている事実があるなら猶更、優秀な騎士の1人や2人見繕えば済むだけでそれこそ、ナナリィ王女に頼めば打診してくれると思う。

 何故だろう? アランを取り戻さなければと考えが脳を過るのは。シフォンが王国を裏切ったのだから、シフォンの事は考えずに私の好きにするべきだと考えるのは。

 ……。考えても仕方が無い。今はナナリィ王女の居るマギーガドルに向かう事だけ考えるべきだ。

 ヘルツォーク教のアジトを後にし、私は無駄な考え事をしながら森の外へ向け歩いていたのである。どう考えても、風の精霊シルフィを召喚し彼女の力を借り、空を飛びマギーガドルへ向かうべきであり、本来の私ならばすぐにそうしていたはずである。

 本来の自分があるべき行動を取らなかった事に対して少しだけ後悔したのは、視界の先に面倒事を目撃したからだ。

 まぁ、よく居る山賊だけども。


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