26話
祖父が言う通り、アランの返事は城外の人間に聞こえてしまいそうなほど大きな声で十分彼が元気である事が感じられた。
自らの期待に応えたのか、デートリッヒはアランの両肩をポンと叩き、
「近い将来、フィアとシフォンを任せるぞ」
「有難きお言葉! 感謝致します!」
デートリッヒからの激励を受け、アランが一礼をしようとしたところで、
「おじい様、おじい様」
シフォンが瞳に涙を浮かべながら、デードリッヒの背後より縋りつく。
孫娘にすがりつかれたデードリッヒは、恐らく先程国王が発した言葉が原因でシフォンが涙を浮かべているのだろうと推測、ゆっくりとシフォンに向き合いそっと頭を撫でる。
「シフォン? どうしたのだ?」
「わたし、わたしは使い物にならないですの?」
シフォンが、こらえきれなくなった涙を瞳から零しながら、ゆっくりとデートリッヒに尋ねる。
「その様な事は無いぞ」
「お父様がおっしゃってましたの、嘘じゃないですの、わたしがお姉様と同じ様に修練致しても神聖魔法を扱えないのは可笑しいですの」
シフォンの口よりフィアを意識している旨を察知したデードリッヒは、フィアに対し行けと合図を出す。
その合図を見たフィアは、アランに対し「行きましょう」と告げ二人は訓練場へと向かって行った。
デートリッヒは、フィアが視界から消えるまでの間シフォンを声にならない声で好きに涙を流させたところで、
「案ずるな、シフォン、お主にはワシと婆様にしか知らぬ才能があるのじゃ」
デートリッヒは、自分の胸を借り泣きじゃくるシフォンの頭をポンポンと優しく叩いて見せる。
「わたしに才能、ですの?」
「そうじゃ、今はまだお主の父にすらも知らせる訳にはいかぬ。いずれ時が来た時詳しく話す事になる」
デードリッヒより、自分に才能があると告げられたシフォンは考えが前向きになったのか、溢れだしていた涙が止まる。
2、3度程深呼吸をし祖父の元から離れ、
「ありがとう、ですの」
「はっはっは、フィアと何かするんだろう?」
「はいですの」
「姉妹仲が良いのは良い事、そう居られる間十分楽しむと良いぞ」
デードリッヒが、少しだけ意味深な事をシフォンに言う。
その事に気付いたのか気付かないのか、シフォンは少し首を傾げた後祖父に対し一礼をすると、ドレスの裾を少し持ち上げ小走りに姉とアランが居る訓練場へと向かった。




