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亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
2章「ヘルツオーク教」
20/44

20話

「フィア様! なんなりと御命令を!」


 私が思う通り、彼はパッと目を開けゆっくりと起き上がり、私に身体事振り向くと敬礼をし、忠誠心がある意思を見せる。

 さっきまでこいつが私への言動を考える限り、聖銃ハイリング・カノンで射殺した人間を蘇生すれば自分の味方になるという性能に間違いは無いだろう。

 続いて私は、相も変わらず地面で寝息を立てているハルディオス隊長の頭部に銃口を向けトリガーを引く。

 が、ミスリル製の兜を前に魔力弾はカンと乾いた音を立て掻き消えてしまった。

 なるほど、親衛隊が身につけている防具だけあってその性能は伊達じゃないみたいだ。

 私は、彼が身に纏う防具の性能に対して妙な関心をしながら、聖銃ハイリング・カノンに対し先程よりも強力な魔力を込め、再度彼の頭部に銃口を向けトリガーを引く。

 バァン。とさっきよりも大きい音と共に彼の頭部目掛け拳大程の魔力弾が放たれ、


(……加減したつもりだけどこれで少しやり過ぎか)


 彼の頭部が跡形も無く消え去ってしまった。

 言うまでも無く普通の人間なら即死だ。

 まだこの銃に対しての魔力加減が掴めない以上仕方無い。頭部が完全に消し飛んだ位なら問題無く蘇生は可能だし。

 私は、頭部を消し飛ばされ無残な遺体と化したハルディオス隊長に対し神聖蘇生リザレクションを試み、蘇生させる。

 先程と同じ光に包まれ、その光が収まると彼の頭部は私が放った魔力弾により跡形も無く消し飛ばされる前の物となった。

 正確には、彼が被っていた兜は私の魔法で復元出来なかった為、彼の頭部は兜を身に着けていない状態ではあるが。

 無事現世に戻る事が出来たハルディオス隊長は、目を開きゆっくりと立ち上がり私の方へと振り向くと、


「ご無事ですかフィア様」


 様式美みたく私に対し敬礼を見せる。


「ええ、私は無事よ。ハルディオス隊長、貴方は何故ここに居るのかしら?」

「ハッ、シフォン様の命令により、セントラルジュ国の宝物をヘルツオーク教のアジトであるこの洞窟へと搬入させました」


 やはり、聖銃の効果に間違い無いか、私の問い掛けに対しさっきまでは一切話そうとしなかった事をあっさりと言ってくれる。

 そうなると、聖銃の力で味方にした人間の記憶はどうなっているのか気になるか。


「そう。その情報を私に対し隠していた事は覚えているかしら」

「はい。誠に申し訳ございませんが、わたくしにどの様な魔術が掛けられていたかまで分かりかねますが、フィア様のご質問に対し隠し事を致していました」


 どうやら、聖銃の力が介入する前の記憶自体は残っている様で、私に対して忠誠を誓う思考の元、それ等の記憶に対する情報を上手く言語化させて吐き出しているみたい。

 このまま、ハルディオス隊長からヘルツオーク教団についての事を聞き出したいところだけど、その前にシフォンがこの場に辿り着くか、或いは既に。


「お姉様。お逃げになられますの?」


 どこか天然チックでほんわかとした声が聞こえる。

 私が幾度となく聞いて来たセントラルジュ国第二王女、シフォン・ラルジュの声だ。

 さて、シフォンが私の元に訪れる事は想定通りではあるが、問題はここからどうするか。


「当然よ。あんな牢獄で暮らし続ける趣味は無いもの」


 私は、聖銃の銃口をシフォンに向ける。

 この武器の力でシフォンを私に従えさせられればこの先の展開が楽になるはず。


「お姉様? その銃をお使いになられましたの?」

「ええ、そうよ」

「そうですの。わたくしを支配した方が良いと判断したと思うですの。けれど、お姉様? 既に本日2度リザレクションを使用していますの。更に聖銃を使い魔力を消耗していますの。仮に牢獄で過ごした時間でお姉様の魔力が全回復していたとしても、わたくしが展開する邪の力を纏った結界を貫く事は不可能で御座いますの」


 天然無垢な少女の笑みを浮かべながら、脅迫染みた事を言って来る。

 シフォンの奴がピンク色の髪をしているせいで猶更そのギャップを強く感じる。

 シフォンが言う通り、慈愛の紋章を上手く継承出来なかったせいで神聖魔法が扱えないだけで魔術その者、つまりは基礎に該当する部分は私と変わらない勉学を行っている。

 純粋な魔力総量だけ考えれば、私とシフォンとで差があるとは思わない方が良い。

 ましてや、私はシフォンが指摘した通り大きく魔力を消耗するリザレクションを既に2回使用している。一晩過ごして回復した魔力も私の感覚で全快の6割位。聖銃で消耗した魔力や精霊召喚で消耗した分を含めて今の魔力量は全快の4割弱と言った所か。

 一方のシフォンはセントラルジュ国が陥落してから今この瞬間までほぼ魔力を消耗していないだろうし、このアジトの中に魔力を回復させる何かがある可能性の方が高い。

 シフォンの忠告を無視し、残った私の魔力を全てハイリング・カノンに注ぎ込みぶつけ、シフォンが全魔力を注ぎ展開した邪の結界を貫く勝負をするのはあまりにも無謀。

 ほぼ確実に私の攻撃が防がれ、私は魔力が枯渇したただの少女になり果ててしまう。

 こうなってしまっては逃げ出す事も難しいどころか再度投獄されるだろう。

 ……何よりも幾ら蘇生魔法が扱えるとは言え実の妹を自らの手で撃ち抜きたくはない。

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