表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
2章「ヘルツオーク教」
14/44

14話

「もしかしてお姉様? 演技と言う言葉を知りませんの?」


 シフォンが、私の胸にチクリと突き刺さる様な鋭さを持つ言葉を言って来た。

 で、城内から脱出していたあのシフォンは演技をしていたと言う訳だ。

 その裏で実はシフォンがモスケルフェルト国とマシンテーレ国と結託をしており、セントラルジュ城を襲撃させた訳だ。


「知らないワケ、無いじゃない」


 私は力無くシフォンに返事をする。

 何もかも認めたくない、今置かれている現実を何もかも認めたくない。

 セントラルジュ城が陥落した事、お父様とお母様を恐らく失った事、多数のセントラルジュ国民が犠牲になった事、そして唯一の希望と思っていた妹、シフォンが実は今回の襲撃の黒幕であった事。

 そんな現実に希望も何もあったモノじゃない。

 ただただ、これが悪い夢であって欲しいその言葉だけが私の脳を駆け巡る。


「そうですの。なら良かったですの。わたしからのお話は大方終わりましたの。先も言いました通り、お姉さまの神聖魔法と精霊召喚魔法はわたしも必要と思いますの。ですから、お姉様もわたくしと共に邪神ヘルツォーク様の支配する素晴らしい世界を作りますの」


 シフォンがにこやかな、でも何処か邪悪な気配を隠し切れない笑顔を見せながら私をヘルツォーク教への道へと勧める。

 それはつまり、セントラルジュ王女としての誇りも尊厳も何もかもを捨て邪神が降臨し支配する世界を肯定する事だ。

 邪神の召喚、なんて大それたこと実現出来ないと思いたいが、シフォンが私と同等の邪術力を持つとし、何らかの方法で私の魔力や他国の私と匹敵する魔力や力を持つ者達を集める事に成功した場合、もしかしたらその邪神とやらがこの世に召喚されてしまう可能性は十分に考えられる。

 私が知る限りの邪神は世界を破壊と殺戮で埋め尽くされた混沌の世界に陥れる存在だ。

 邪神が召喚された暁には魔物とやらも召喚され、人間が住む事は不可能な領域になる事だって考えられる。

 例え自分がルシド大陸の頂点付近に立とうとも、私はそんな世界は望まない。

 セントラルジュ国王女としてセントラルジュ国を再建する事、それがこれから先私の望む未来。

 少なくとも私の魔力をシフォンに与えなければ邪神召喚の成功率が下がる、だからシフォンに手を貸す事なんてしない。

 多分この様子だと今この瞬間は無理そうだけど将来的には出来る事ならばシフォンを邪教の道から解放してやりたい。


「悪いけどシフォン、断らせて貰うわ」


 私がシフォンの申し出を断ると、シフォンが邪悪な笑みを浮かべ私の方へ向かって歩き出す。


「シフォン?」


 シフォンは私から見て右手側で5M程離れた場所に立ち止まると壁を触り出して、


「お姉様、今日はお疲れですの。ゆっくりお休みになるべきですの」


 ふいに壁に向けスイッチを押す仕草を見せる。

 すると、私の足元からゴゴゴゴゴと何かが動く音がした、と思った瞬間私は身体が宙に浮いてる感覚を覚え反射的にシルフィが飛び出し私は滞空する事に成功するが、


「フィア様!? う、うわあああああああ」


 それと同時にアランの悲鳴が聞こえた。


「アラン!? 今助ける!」


 私は落下するアランに向け急加速、アランを抱え彼の落下速度の低下に成功。

 ゆっくりと速度を押さえながら地面に着地し、アランを降ろした。


「申し訳ありません、フィア様」


 詫びを見せるアラン。


「今のは仕方ないわよ。下に落とされたみたいだけど……」


 私は光の球を操り周囲の様子を探った。

 私達が落ちて来た場所は既に閉ざされており、上に向けて脱出は無理そうだ。

 勿論、洞窟崩落のリスクを背負えば出来なくは無いがやるべきではない。

 周囲を見渡すと石の壁が3方向に鉄格子が1方向で、つまりここは牢獄みたいだ。


「牢獄みたいですね」

「そうね」

「アレ位の鉄格子なら私の力で……」


 鉄格子を見たアランが強引にこじ開ける為近付こうとするが、


「待って、何か罠が仕掛けられているかもしれない、例えば触れたら電気が走るとか」

「ハッ!? 申し訳ありません、私の思慮不足で……」

「それは良いわよ、最悪神聖蘇生リザレクションがあるから」


 私の言葉に対しアランが何かを想像したのか絶句しているが、感電死した様子でも想像しているのだろう。


「シフォンの出方を伺うわ、ついでに休んでおいて損は無いし私の魔力も可能な限り回復したい」

「了解致しましたフィア様」


 私の指示に対し、ご丁寧に敬礼をするアランだ。

 彼の生真面目さに少し呆れながらも周囲の情報を把握し、問題が無いと判断したところで一夜を明かす事にしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ