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亡国王女は諦めない  作者: うさぎ蕎麦
2章「ヘルツオーク教」
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12話

「お姉様、先に参りますの」


 と言ってシフォンは私とアランよりも先に隠し階段を降りて行った。

 私とアランもシフォンに続き隠し階段を降りて行った。

 隠し階段を降りた先は洞窟の内部とは思えないかなり広い部屋だった。

 それこそ何十人とこの部屋に入っても問題が無い位の広さで、ここを拠点に何か活動しているのだろうと感じさせられるものだった。

 まぁ、この洞窟自体人工的なものだからそれ等の拠点がある事は何も不思議な事じゃないか。

 まずは洞窟内であるにもかかわらず広い部屋に意識していた私であるが、次にその部屋の中に居る多数の人間に意識が注目した。

 なるほど、今も尚この洞窟で何か作業、多分何かしらの鉱物を採掘しているのだろう。

 彼等の様子を見る限り焦っている様子は無い、王都が陥落した情報がここまで出回っている訳で無い事を考えれば当然の反応だろう。

 しかし、彼等が鉱夫だと仮定しても、何故この部屋に居る人間は皆魔術士が身に着けるローブを身に纏っているのだろう?

 マギーガルド国の人間がここにいるのだろうか? けどここはセントラルジュ領な訳でマギーガドル国の人間達がここに居る事は少し不自然だ。

 それに、彼等が身に纏っているローブは皆黒色のローブで、邪教徒か何かを連想してしまう。

 休めと命令を下した私の脳に嫌な予感が走る。


「シフォン様」


 私達の存在に気が付いた何人かが低く不気味な声でシフォンの名を呼び私達の元に近付く。

 その全ての人間がシフォンの名を告げる。

 シフォンも王女である手前、王族が一般人の前に現れたなら皆敬意を示す事は当たり前だろう。

 しかし、私の名を呼ぶ人間は誰も居ない。

 別に私自身一般人は徹底した敬意を支払えと言う考えは無いのだが、一般人の行動ルーチンならば、基本的にこのケースでは第一王女である私の名を呼び、続いて第二王女であるシフォンの名を呼ぶ。若しくは同時か。


「お勤めご苦労様ですの作戦の首尾は上々ですの」


 シフォンは自分の目の前にいる数人の元へゆっくりと近付いて私とアランの方へ向き直る。

 一体何が起きている? 首尾とは? セントラルジュ国は陥落したのだけど? なのに首尾が上々? 今何が起きているのか理解が追い付かない。


「シフォン?」

「お姉様、ご安心下さいませ。お姉様が持つ蘇生魔法、精霊召喚魔法は私達も必要と思いますの」


 シフォンの言っている言葉の何かが可笑しい。

 気のせいか、シフォンからは何か邪悪な空気を纏っているかのように感じられる。

 まるで邪教徒の様な……。

 邪教徒……? 確かセントラルジュ国には秘密裏に邪教が結成されたと聞いた事がある。

 中々尻尾を掴めず、だからと言って規模自体大した事が無いからと深い調査はされていなかった。


「一体、どういう事なの?」

「お姉様? まだお気付きになられないですの? この世界は邪神ヘルツォーク様が収めるべく世界ですの。わたくしは邪神ヘルツォーク様の忠実な下僕しもべを集め、この世界をヘルツォーク様に献上すべく忠誠を尽くしておりますの」


 にっこりと笑みを浮かべ、私を見据えるシフォン。

 その笑顔とは裏腹に、その視線は私の心を凍て付かせる冷たさがあった。


「邪神、ヘルツォーク……?」


 聞いた事も無い。

 つまり、シフォンは両親を失った事で乱心したと言う訳か? いや、それは私が精神治療キュアメンタルをかけた以上有り得無い話だ。

 まさか本当に……?


「お姉様? 幾らお姉様でもヘルツォーク様を呼び捨てるなんて許しませんですの」


 シフォンの周囲に殺気の様な気配が纏われる。

 シフォンは本気でそう思っていると考えた方が良さそうだ。


「悪いけど、話が飛躍し過ぎてついていけない。シフォン? 貴女はセントラルジュ国第二王女でしょう?」

「うふふふ、そうですの。それ自体に間違いはありませんの。けれどお姉様? 神聖魔法が扱えない私の苦悩なんて存じ上げませんの? 第二王女ですけど、神聖魔法が扱えない私は王位継承権がはく奪されている事も知らないですの?」


 シフォンがゆっくりとした口調で私を問い詰めるかのように言う。


「そんな話、聞いた事も無い。けど、私はシフォンが神聖魔法を扱えなくともそれを気にしない接し方をした。王位継承権だって欲しかったら私が辞退した! どうして何も言ってくれなかったんだ!」


 いや、正確にはお父様やおじいさまがそれと無い話をしている事を聞いた事があるんだけど。


「そうですの。お姉様のお気持ちは嬉しく思いますの。けれど、残念ですけど、御姉様が王位継承権を辞退したところでわたくしの王位継承権が復活する事なんで有り得ない事ですの。その時は、きっと自国内で素晴らしい人間の誰かが王位に就くと思いますの」


 チッ、シフォンの奴、あんななりをしていて野心の塊だったとは! 普段の雰囲気に惑わされ気付けなかった自分が情けない! 私がもっと早く気付いていればシフォンが邪教の道に落ちる事も無かったのに!


「だからと言って邪教の道に進む事も無いじゃない」

「お姉様、分かりませんの? わたし、神聖魔法の才能が無い代わりに邪術の才能がありますの。それも、御姉様の神聖魔法に匹敵するレベルの才能が御座いますの」


 つまり、私の蘇生魔法に匹敵する強力な邪術が扱えると言う訳だ。

 邪神は無理にせよアンデッドの王とかその辺りの召喚、使役が造作でもない様に予測が付く。

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