1話
序章です。
1章は2話から始まります。
この世界にある大陸の1つにルシド大陸と呼ばれる大陸があり、ルシド大陸の中央付近にセントラルジュ国がある。
セントラルジュ国は3つの国家と隣接していた。
これ等4つの国は全て国家の外周を山岳地帯で覆われており、4つの国々は全て山岳地帯を抜けた先の国家の存在を知る事は無かった。
ルシド大陸内に存在する国家の内、少なくともこれ等4つの国に住んでいる人々は生まれた時点で左手に紋章が浮かび上がる。
それ等の紋章は人々に特殊な才能を付与する事が可能であり、また性格にも影響を与えるのかこれらの人々は主に同じ紋章を持つ人々が集まり国家が形成される事になったのである。
4つの国家に対する簡易的な説明だが、
・セントラルジュ国
慈愛の紋章を持つ人間が集まり形成された国家。
慈愛の紋章は、主に人々の傷を癒す治療魔法や身体能力や防御力を一時的に上昇させる補助魔法と言った神聖魔法を扱う事が可能となる。
また、一部のセントラルジュ国民は精霊召喚魔法と呼ばれる、精霊を召喚し術者の命令通り魔法を発動する精霊を召喚する魔法を扱う事が出来る。
凡そ2万平方kmの国土に100万人程の民が住んでいる。
・マギーガドル国
博識の紋章を持つ人間が集まり形成された国家。
博識の紋章は、主に精霊の力を借りる事で術者が例えば地、水、風、炎等の属性を持つ精霊魔法を直接扱える様になる。
こちらの国家でも一部の国民は精霊召喚魔法を扱える者も居る。
凡そ2万平方kmの国土に100万人程の民が住んでいる。
・マシンテーレ国
創造の紋章を持つ人間が集まり形成された国家。
創作能力が飛躍的に向上した結果、機械を産み出す事に成功。
国を守る兵士としアンドロイド兵を起用しており、銃と呼ばれる金属製で小型にも拘らず引き金と呼ばれる部分を引くだけで、内蔵されている弾丸を高速で発射し、魔法にも勝るとも劣らない高い殺傷能力を発揮する兵器等を扱っている。
それだけに留まらず、人型の巨大機動兵器の開発までも行っている。
凡そ5万平方kmの国土に、アンドロイド兵を含めた50万人程の民が住んでいる。
・モスケルフェルト国
闘士の紋章を持つ人間が集まり生まれた国家。
紋章の力を開放する事で一時的に筋肉の鎧を手にする事が出来る。
また、練度を重ねれば骨格をも肥大化させる事も可能であり、人によっては元の背丈の倍になる事が出来る者も居る。
この能力を発揮する事により、他国家の人間では装備が不可能な重装備も可能であり近接戦闘での戦闘能力に於いて他国を圧倒している。
しかし、筋肉の増大する事で肉体のエネルギーを多量に消耗する事になり多量の食料を必要としてしまう為、この国は常に食料不足に対し頭を抱えている。
凡そ3万平方kmの国土に200万人程の民が住んでいる。
ルシド歴2000年6月初頭、その日までこの4カ国は互いに侵攻をする事無く平和な日々が続いていた。
だが、6月13日の事である。
突然モスケルフェルト国の軍隊がセントラルジュ国との国境を越え進軍。
戦闘能力の乏しいセントラルジュ兵は、闘士の紋章の力を使い戦闘力を高めたモスケルフェルト兵を前に抵抗乏しく虐殺をされてしまう。
セントラルジュ国へと進軍したモスケルフェルト軍隊はセントラルジュ領の中央部に建設されたセントラルジュ国本城目指し進軍。
500の騎兵部隊を先行させ、国境から凡そ80kmの距離を1日かけ行軍。
翌日、同じくセントラルジュ国の国境を越え進軍したマシンテーレ軍のアンドロイド兵500体と合流、2カ国合わせ1000の兵がセントラルジュ国本城の内部へ向け侵攻をした。
2カ国の軍隊がセントラルジュ国本城の内部に進攻してから、本城が陥落寸前に追い詰められるまでは想像以上に早かった。
セントラルジュの国民は、モスケルフェルト兵が持つ闘士の紋章による身体能力の強化やアンドロイド兵達が持つ強力な戦闘力と比べ、良くてもごく普通の人間が持つ戦闘力しかもっていない。
彼等の特徴と言えば慈愛の紋章が引き出す治癒や支援魔法にごく一部が扱える精霊召喚魔法でしかない。
迫り来る敵兵達の攻撃力に比べ著しく劣る攻撃力しか持たないセントラルジュ兵達は、国境付近を守っていた兵達同様瞬く間に敵兵達の攻撃で虐殺されていった。
モスケルフェルト兵による強靭な筋肉により産み出される強力な近接攻撃、また弓矢による狙撃を前にセントラルジュ兵はなすすべも無く、いや正確には仲間が受けた傷を癒す事による延命しつつ抵抗にならない抵抗も虚しく魔力が枯渇、惨殺されていったのである。
また、マシンテーレ国のアンドロイドと呼ばれる機械の身体である人型の兵が持つ銃により治療魔法による延命すらも許さずハチの巣にされ即死される者、レーザーガンと呼ばれる攻撃魔術の中でも雷と光属性を複合させたような弾を発射する武器により、一瞬で身体を炭化させられ絶命する者も多数居た。
多数のセントラルジュ兵が虐殺される中、精霊召喚魔法を扱える一部のセントラルジュ兵達が敵兵に抵抗を行い500程の兵を討ち取る事に成功するも、抵抗虚しく本城より外部を守る為に配備されていた4000のセントラルジュ兵は隙を見て逃げ出した者を除き全滅をしてしまう。
精霊召喚魔法の攻撃を耐え抜き生き残った敵兵達はセントラルジュ城下町を焼き払い、逃げ遅れた一般人を虐殺し略奪を行いながらも城内へ向け流れ込んでいた。
この時点でセントラルジュに残された兵は、本城の内部に配備された中級精霊召喚魔法を扱う事が可能な精鋭兵100と、王族を守る10名の親衛隊だけであった。
本城の入り口近辺に配備されていた精鋭部隊が侵入して来た敵兵に応戦するも、500残された敵兵の内300を討ち取った所で全滅。
敵兵は200残し、セントラルジュ国王達が待ち構える部屋まで後少しの場所まで辿り着いていたのである。