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アスターテール~今日から半分、神になったらしいですが~  作者: 小鳥遊一
第二章後編《連合王国》セルビオーテ編
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第70話(第2章後編最終話)『向かうは鉄国へ』

 あれから───国王との謁見から、セルビオーテで過ごした一週間は飛ぶように過ぎていった。


 話すと長くなってしまうのでここでは割愛させてもらうが、まぁ色々なことがあった。


 レイナに付き合ってもらって、神格の実験もとい特訓をやってみたり。


 皆で行けなかったシティ・オブ・エンブリアを観光してみたり。



 またエルシェが暴走して、先走ってしまったり。セルビオーテに伝わるお祭りに参加してみたり……と、挙げればキリがないが、ともかく俺にとってこの一週間は実りあるものだった。


 穏やかといえば穏やかな時間を過ごし。

 久しぶり、というわけではないがひどく久しく感じる平穏で充実した日々を満喫したわけだ。


 だが、どんな楽しくて幸せな時間にも、いつかは終わりが訪れるわけで。

 そうして終わりを迎えれば、もうそこは区切りの時だ。


 俺たちはエンブリアの王宮の前───ずらりと並んだ使用人や近衛兵達、そしてソフィアとラスタに見送られて今まさに旅立とうとしていた。


「本当に、もう行ってしまわれますの? もう少しだけここに滞在しても……」


「ああ、もう行くよ。お誘いは嬉しいけど……もう十分療養したし、セルビオーテも楽しんだしな。そろそろ次の国へ行こうと思う」


「ア、アオイ様にエルシェ様、レイナ様……っ、またいつか、色々なことが終わったらセルビオーテに遊びに来て……ね? ラスタもソフィ様も、ここでみんな待ってる……から!」


「ええ、ぜひそうさせてもらいます! ですからそれまでラスタ、早食い勝負の決着はお預けですよ!」


「うんっ!」


「は、早食い勝負……?」


 何やらエルシェとラスタの間にも、俺が知らないところで物語があったらしい。二人は握手し、互いを称え合うような面持ちで頷きあっていた。

 ……まぁ、仲良くなれたのなら良かったな。

 ソフィアはまだ踏ん切りがつかないようで、ありがたいことに俺たちを引き止めてくれる。


「お三方さえよろしければ、セルビオーテに定住することもできますのよ? 必要であれば《記章クレスト》を発行することもできますし、一段落するまでに住まいやお仕事の斡旋も……」


「その提案は本当にありがたいし、それも悪くないんだけどな。でも、まだ俺たちにはやることがあるんだ。だから、また戻ってきた時に頼むよ」


 俺がそう言うと、ソフィアはしぶしぶといった様子で頷き、引き下がる。

 それから服の裾をつまみ足を一歩引くと、優雅なお辞儀を俺たちに見せた。


「わかりました……では、道中どうかお気をつけて。またいつかお会いしましょう。皆様方の旅の成就を、心よりお祈り申し上げます」


「ありがとう。ソフィア達も元気でな!」


「さようならー!」


 俺たちは王宮の人たちが見えなくなるまで大きく手を振りながら、その場を後にする。


 次にこの人たちに会えるのは、いつになるのだろう。またこの時と全く同じ顔ぶれで会うことができるのだろうか。そんなことをふと思うと、目尻が熱くなった。


 ともあれ、こうして俺たちはなんだかんだ一ヶ月ほどを過ごしたソフィアの王宮を離れ───次の旅への道を、歩みだしたのだった。


 さようならセルビオーテ、また会える日まで。


 ★


 王宮を離れた俺たちはシティ・オブ・エンブリアの大きな通りに入り、服屋や飲食店など、様々な店が立ち並ぶ繁華街の街並みを歩いていた。


 セルビオーテは全体的に街が静かで上品なイメージがあったが、さすがに首都の繁華街ともなる人口密度も凄まじくなるらしい。

 ベイル―ニャほどではないにせよ通りは辺り一面人でいっぱいであり、街には喧騒と活気が満ち満ちていた。


「いい人達でしたね、ソフィアさん達」


「ああ、全くだな。また会えるといいんだが……ま、機会はあるだろうさ。旅を続けよう。セルビオーテには予想以上に滞在したしな」


「ですね! 行きましょう、次の目的地……あれ、どこでしたっけ?」


 隣でふんすと意気込みマントをはためかせるエルシェだったが、不意にとあることに気づいたらしい。

 次の目的地は一体どこなのか。意気揚々と王宮を出たはいいものの───そういや、レイナから行き先を全く聞いていなかったな。エルシェの持っている疑問は俺も同じだった。


「そういえば……次はどこに行くんだ? 目的地は決まってるのか?」


 レイナは俺たちの方を見ると「その事なのだけれど」と、何やらコートからピッと一枚の紙を取り出して横を歩く俺たちに見せた。


「なんですか、これ? 地図……?」


「私宛ての仕事の依頼書。家に届いていたみたいで、王宮には先日届いたわ」

「えっ、お前住所……ってか家持ってたのか!?」


「……失礼な顔ね」


「おい、それを言うなら表情だろ! この顔は元からだよ! お前が失礼だよ!!」


「家、というよりは活動の拠点になる場所ならあるわ。いくらスフィリア中を周っているとはいえ、拠点がないと色々と活動がやりづらいもの」


「そっか、そうだよな……言われてみれば」


 レイナにも家があったのか。俺の家は……一体どこにあるんだろう。探せばスフィリアのどこかに見つかるのだろうか。


「それで話を戻すけれど、私に仕事の依頼に来たのよ。それで───この仕事を引き受けるかはまだ決めていないのだけれど、この近くに依頼人……というか、依頼してきた商会の商館があるそうだから、まずはそこへ向かうわ。顔合わせね」


「商館、か……それ、俺たちがついて行ってもいいのか? 邪魔なら席を外すけど」


「別に構わないわ。貴方達は私の付き人───か、どれ……いえ、従者ということにしておくから」


「……今、奴隷って言おうとしてなかったか?」


「気のせいよ」


 ちらりと横を見る。すると俺と目があったレイナはスタスタと俺達を追い抜き、先導するように前を歩き始めた。こいつ……。


 ★


「いや~~! よくぞおいでくださいましたッス、レイナ様! わざわざこっちの商館までお呼び出ししてしまい申し訳ないッス! ささ、中へどうぞどうぞ! お付きの方もどうぞ、遠慮ご無用ッス!」


 商館の入り口で手を叩きそう俺たちを出迎えたのは、薄緑の髪をふわふわのボブヘアに切りそろえた十六歳ほどの少女だった。


 はて、女の子? 商会というくらいだからてっきり、経験を積んでそうなベテランのおじさんが出てくるものかと思ったが、接待役を担当しているだけなのだろうか?


 商人ということもあるのか、身なりはそれなりに上等でレーヴェやセルビオーテでよく見かけたまさに商人といった雰囲気の服を纏っており、身だしなみには気を使っているらしい。


 だが、何よりもまず目を引くのは───彼女の頭でぴこぴこと動く、まるで猫のような耳だった。


 ね、猫……猫の女の子……なの、か? いやしかしこれは一体……?


 何も言い出せず戸惑っていると、少女はそんな俺の様子に気がついた様子で、


「あらら? 兄さんもしかして、ウチみたいなクティノ人を見るのは始めてッスか?」


「クティノ、人……?」


 クティノ人。そういえば、セラフィムとして目覚めようとしているラスタを止めようとしている際に、その名を聞いたような気がする……のだが。


 あの時のラスタのように獣の特徴を身体の一部に持つ、連邦の少数民族、だったか?


「ジロジロ眺めてしまってごめんなさい、こっちの男は世間知らずで。特に悪気があるわけではないの」


 するとレイナが少女に向かって言う。その言葉に俺はハッと気づいた。

 そうだ、どんな理由があろうと初対面の知らない人を相手に、挨拶もなしにジロジロ眺めているなど、無礼以外の何者でもないではないか。これでは他方に迷惑がかかってしまう。


「ご、ごめんなさい!」


 俺は慌てて謝る。だが少女はニカっと笑い、


「いーんすよ。今のご時世、都市育ちでもないと四大民族なんてそう見る機会ないッス。物珍しいのは当たり前ッスし、そっちの兄さんに悪意がないこともわかってるッス。ウチら、人様に心の機敏はよくわかるんスよ」


「そう、そう言ってもらえると助かるわ。それで……貴方は、この手紙に書かれているルナベル副代表でいいかしら?」


 俺が言うのも何だが、切り替えが早いのでは……と思う。けれども商人の世界ではむしろ無駄な会話は好まれないのか、少女はレイナの態度にも眉一つ動かさずこくりと頷いた。


「ええ、確かにウチがこのビリジア商会の副代表、ルナベルッス。それであなたは……かの《魔獣殺し》レイナ様で間違いないッスね」


「そうよ。それでこの二人は……私の付き人」


「了解ッス! それではお三方、改めて中へどうぞッス!」


「……(連邦の少数民族については、また後で話してあげるから)」


 商館へ入る直前、レイナは小声でそう囁いて入っていった。


 ……やっぱりレイナって、なんだかんだこういう所は優しいんだよな。


 ★


「それで、ルナベルさん。今回の依頼の内容を聞いても構わないかしら」


 商会───ビリジア商会というらしいその商会の商館で、猫耳の少女ルナベルとレイナは机を挟んで向かい合う形になり、話を始める。


 俺とエルシェはといえばソフィアの時と同じく、余計なことを口走って話に悪影響を及ぼさないようになるべく沈黙を貫き通す腹積もりだ。何か聞かれれば答えるが、そうでもない限りは黙っている。お口チャックはいかなる場面においても優秀なのだ。


「ええ、レイナ様にお願いしたい仕事というのは……ズバリ、運送の護衛ッス」


「……護衛?」


「その通りッス。今日の夕暮れからウチはここから第2区連邦加盟国のエルベラントまで、複数台の馬車で積荷を輸送するんスけど……レイナ様には、その道中の護衛をお願いしたいッス」


「……」


 真摯な目で彼女の目を見つめ返すルナベルに対し、レイナは腕を組んで沈黙する。


 ───エルベラント。それは、以前にも耳にしたことのある地名だった。

 曰く、あの超大型飛行船ルフトヴァールを開発した国。

《旧列強》の一国にして、連邦きっての工業大国であり、鋼鉄の国───人呼んで《鉄国》。

 そうレイナは言っていた。次の目的地はそこになるのだろうか?


「……報酬は、依頼書に書いてあった通りでいいのね」


「はいッス。目的地───エルベラントまで無事に積荷を送り届けた時点で、そこに書かれている分の報酬をお支払いしますッス」


「そう。でも……この金額、どう見ても相場以上よね。私は魔獣専門の殺し屋。護衛なら、その道のプロである傭兵に頼んだほうが安上がりな上に安心じゃない?」


「はは……そう言われちゃうと、何も言えないんスけどね」


「……」


 まいったという表情で頭を掻くルナベルに対し、レイナの瞳が若干細められる。


 瞬時に生まれたそれは、得体の知れない相手に対する敵意───とまでは行かずとも、警戒するもので間違いないだろう。そしてそのような視線を向けられたことには、きっと当の本人であるルナベルも気づいているはずで。


「いや……本当はそうなんスけど、ウチの商会代表の指示でして。ぶっちゃけ道のりも別にそう危険な道のりじゃないし、そこまで高い金出して依頼する必要もないと思うんスけど。しかし代表がレイナ様に依頼しろ、と……何を考えてるのかはウチにもわからないッスけど、でも決して悪い人ではないんスよ」


「代表、ね……」


 レイナは顎に手をやり、再度考え込む。その様子だと『代表』と呼ばれる人物に心当たりがあるのかもしれない。

 足元に視線を落とし、しばしそうしてレイナは沈黙していた。

 しかし、やがて数秒が経過すると、


「……わかった。報酬もいいし、その仕事引き受けるわ」


 と、ルナベルに告げた。


「引き受けてくださるッスか!? ありがたいッス! これで代表に怒られずに済むッス!」


「今回の依頼はここからエルベラントまでの運送の護衛。それでいいのよね?」


「はいッス! そんじゃあ、コイツは前金ッス」


「……ッ!?」


 一体どこから出現したというのか、いつの間にか机の上にドンと乗っている巾着袋に俺とエルシェは思わずのけぞる。

 だがレイナとルナベルは顔色一つ変えず視線を合わせると、交渉成立を確かめ合うように小さく頷く。そしてルナベルは満足げに微笑むと、


「それではもう数時間後に出発ッスから、それまではここでゆっくりしててほしいッス! ウチは準備があるからちょいと失礼するッスよ!」


 と、手をひらひら振ってどこかへ行ってしまった。


 そして、夕暮れ時。


 道にずらりと並んだ、ビリジア商会の馬車───その内の一つに、俺たちは乗り込んでいた。


「えーっと……次の目的地は第2区連邦加盟国、エルベラントってことでいいんだよな?」


「そうよ。まぁ、それまでの道のりはこの人たち……ビリジア商会に世話になるわ。あなたはせいぜい私の邪魔にならないよう、付き人として振る舞うことね」


「ああ、わかった。……ちなみに、もしもの話なんだが。もし、俺がお前の足を引っ張っちゃったとしたら、その時はどうなるんだ?」


「殺す」


「殺す!?」


「ごめんなさい、やっぱり七割近くだけ殺すことにするわ」


「おい、今までよりもだいぶ容赦なく殺そうとするなよ」


「はぁ……変わりませんね、レイナと少年二人は。喧嘩しないでください。騎士の掟第17条、『仲良しこそ真の騎士団である』、ですよ」


「お前の騎士の掟とやらも、もう意味がわからん……」


「意味がわからない? ふふ、そういうことならいいでしょう。教えてあげますよ、私たち《騎士団クラン》の騎士の理念を。いいですか? 少年も立派な騎士になるのなら……」


「いや、俺は別に騎士になるつもりはないんだが……」


「な!? ……どうやら少年には、騎士の心構えから叩き込んでやる必要があるようですね……!!」


「はぁ!? おいエルシェ、やめろちょっかい出してくるな!」


「……騒がしい人たちね、相変わらず」


 またもや騒ぎ始める俺たちを他所に、先頭の馬車で時計を確認するルナベルが声を張り上げ、後列の馬車に指示を出す。


「───さて! それじゃあ時間になったことだし早速、出発するッスよ!」


 ───こうして、俺たちを乗せたビリジア商会の馬車は動き出した。


 目指すは《鉄国》、エルベラント。


 殺し屋と騎士と、人間もどきと。

《黒い竜》を、《団長》を、そして《神》を探す一人の半神の旅は、まだまだ終わりそうにない。


 夜空にぼんやりと浮かび始めた月は、既に淡い輝きを放ちつつあった。


《了》


 ★


『───それで、我が『同胞』の覚醒には失敗したと、そういう訳だな?』


 薄暗く、冷たい陰鬱な空間に声が響く。


 それは重く、そして低く地の底から響くような声であり、人間の言葉でありながら、まるで人間ではない何かが発しているかのような───違和感。否、圧倒的な存在感と、それに裏付けられた威圧感を孕んだものであった。


「ええ、そうなります。大変申し訳ございません」


 そして、そんな異常性しかないような空間の片隅で声に答え、跪くのは───灰色の髪をした、紳士服を纏った男。

 セルビオーテ連合王国におけるハリス・オズボーン男爵の謀反の裏で暗躍し、結果逃亡した男───クラウス・クラインロート。


 彼は目を瞑り、空間に響く声に対し恭しく膝をついていた。


『───我が同胞たるセラフィムの覚醒にも失敗し』


『挙げ句、我が角の欠片を破壊され』


『ハーツメルトの協力者さえ失って、ぬけぬけと帰ってくるとは驚いた』


「仰る通り、言葉もありません」


『どういうつもりだ、クラインロートよ』


『気でも狂い死を望むか、クラインロートよ』


『ならばその望み叶えてやろう、クラインロートよ』


 声は口々に響き、跪いたまま微動だにしないクラウスを口々に叱責する。


 次の瞬間彼の周囲で無数の影が蠢き、荒い息や牙を鳴らす音がクラウスを包み込んだ。

 狼、蛇、蜘蛛───それぞれのシルエットが闇に潜み、クラウスを取り囲むようにして唸る。

 常人であれば気絶するどころか、正気を失ったとておかしくはないような状況だ。


「連合王国の分離工作───もとい、セラフィムの少女の覚醒には失敗しました」


 しかしにも関わらず、クラウスは平然とその場に跪く。


「ですが、収穫はございます」


『───ほう? 申してみよ、クラインロート』


「今回の工作で得られた有益な情報が二つ。まず一つ、長く行方をくらませていた『公女』殿下ですが、やはり生存していらっしゃることが判明しました」


『───公女が?』


「ええ、やはり噂は本当だったようです。連邦を駆け巡り、殺し屋を名乗って各地でベスタを討伐している……と。そして二つ目───これは公女殿下と関係しているのですが。その公女殿下と、現在行動を共にしているらしき人物が、『神格』を持っていることがわかりました」


『神格、か。では、教団の奴らではないのか?』


「それが……現在判明している教団の使徒の情報に、その人物と合致するものがなく。おそらくは、閣下の仰られている」


『───偽りの神。奴による差し金、か』


「……かと思われます」


『偽りの神の差金が、『公女』と行動を共にしている、と───成程、面白い』


『───成程、興味深い』


『───成程、退屈しない』


 声は交互に、そして口々に空間に響く。


『クラインロート。では、貴様にしばしの猶予と次の指示を与えよう。心して聞くが良い』


「はい、何なりと───」


 クラウスは立ち上がると、暗闇に向かって頭を下げる。


 そして口にした。この世に四体のみ存在する、セラフィムの一柱にしてあらゆる魔獣の頂点に君臨する存在。そして、この国を支配する偉大なる尊き存在の名を。


「───《黒竜》閣下」


 ───再び、風もなく松明の火が消え去った。


 ★


「───ん? そっか、もうそこまで来たんだね」


 蒼穹が、無限に広がる青空。

 果てしなく続く地平線の彼方、一人の少女は雲の上に腰掛けて笑っていた。


「久しぶりに会いたい……けど、私にはここでやることがあるからね。君との再会は、もう少し先のお楽しみってことで」


 太陽の光を反射してキラキラと輝く白いロングヘアに、同じく白い純白の装い。

 すべらかな色白の肌を惜しみなく晒し、しかし日に焼けることなく、黄色い瞳をぱちぱちと瞬かせ、少女───シロは空を仰ぐ。


 特徴的な白い髪を風になびかせ、前髪を手で押さえると、彼女は再び口元に笑みを浮かべた。


「さーてさて、アオイ君……君が大変なのはここからだぞ? 頑張ってよ、『少年』───なーんちゃって、ふふっ」


 ───神を自称する少女は、如何にして神にも迫らん存在となったのか。


 その過去に迫る物語には、黒紫色の髪をした一人の人間が大いに関わってくるのだが───今はまだ、それはアスターのように遠い物語テール

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