6話 すこしずつ歪んでいく日常
そうこうして働きながら、周囲の困っている人を助けていると、
困っている人たちは俺が周囲の散策をしていると自分から寄ってきてくれるようになった。
周囲の仲の良い人たちは、スキルを使う為にしかたないと言ってはいたものの、
あまりにも働きすぎていることを心配しているようだった。
40を超えている人たちはよくろくにならないと言っていたが、意味が分からなかった。
おれも助かっている、彼らも助かっている。なにが問題なのだろうか。
しかし、その意味をすぐに知ることになる。
最近ではお金や食べ物だけでなく、やる気や健康、寿命といったものまで与えていた。
困っている人たちは、いろんなことに困っていた。それはお金と食べ物以外にもあるのだ。
与えることではじめはみんな喜んでいたが、何度も与えるうちにそれが当たり前になってきているのか、あまり喜ばなくなっていた。とはいえ求められた手に救いの手を差し伸べるのは当たり前だ。
寿命や健康などを与えたときはお金をもらうこともあったが、基本的に10回与えて1回お返しがあるくらいだった。
お返しされることはうれしいが、少し申し訳ない気持ちもする。
それと普段お返しを求めていないことが噂に広まってからは本当にお返しされることもなくなった。
慈悲の神様というあだ名のうわさが広がって、いくらか経った頃にそれが起きた。
最近の無理がたたったのか、体調を崩してしまったのだ。
仕事を休み、宿屋でやすんでいた。
仕事場のおじさんには迷惑かけちゃうなと思いながらも、相当疲労がたまっていたのだろう、すぐに寝てしまっていた。
そうして何時間ったのか、俺の部屋のドアを激しくドンドンと叩く音で目が覚めた。