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ヤンと呼ばれて  作者: ヤン・ウェンリー
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ヤンと呼ばれて1

俺の両親が、俺が外国のスパイにねらわれている。

俺は何の事だか分からないふりをした。

だが思い当たるところがあった。

インターネットの世界で俺はヤンとよばれているらしい。

10年前、建築の施工屋をやっていた時、仲の悪いペンキ屋が俺の事を「ヤン、ヤン」呼んでいた。

「何の事だ」と後輩に聞いてみると「さあ、何の事だかさっぱり」と短く答えた。

ペンキ屋が事務所に乗り込んできて「お前、音を大きくするな」と叫んできた。

俺には何の事か分からない、周りの主任や工事長が笑って「コイツには分からんと」となだめていた。

彼らが「先知恵」とよばれる存在であり。

俺が「先道」とよばれる存在である事を後で知ることになる。



その次の年、俺は大手建設会社に出向する事になった。

中小企業の俺にとってそこは天国のように楽勝だった。

俺は副社長から「大手をいわしてこい」と命令を受けていた。

このまま会社に戻っては副社長に会わせる顔がない。

「麻雀教えてください」上司に哀願した。

左官やから「何をしてたんだといわれるよ」と言われたが上司は快く承知してくれて、彼の背中にはりついて、ゲーム機以外の生の麻雀を研究する事になった。

大手のルールは特殊で役が確定しないとなく事ができない。

食いたん禁止のルールで普通より捨て牌を読む能力をある人間が有利になっている。

たまたま1人トイレにいったため代打ちする事になった。

ヤオ九牌が全部そろっていて、あと幾つかの字牌で国士無双が完成した。

幸い大手の麻雀は展開が遅い、真ん中の牌をを捨てて笑っていた連中が青ざめた。

国士無双は完成した。

その後も何度か誘われたが清一ドラ3を決め大手の度胆をぬいた。

副社長からいわしてこいと言われたが、まあこれで怒られずにすむと安堵していた。

「薙野君は麻雀、何処を見ている」聞いてきた。

「色」と素直に答えた。

「ADHLだよ」大手の連中(7人程)が一斉にさわいだ。

「なにそれ」と聞いた。

その時は説明を受けなかったが脳の中の記憶野が論理部に喰われている人の事をそう言うらしい。

「薙野君、ひょっとしたらオタク」と聞いてきた。

「ヤンが確かゲームのコンベンションにきているって」

「オタクの中のオタク、オタキングですわ」オタクであること隠していたが、否定する事が出来ずにカミングアウトした。

「ヤン・ウェン・リーだよ」全員が合唱した。

俺には何の事だかさっぱり分からない。

小説の銀河英雄伝説の二人の英雄の内一人がその名前だった。

「薙野君、北九州で核戦争ゲームで勝った事あるでしょう」と突然聞いてくる。

「ニュークリアウォーなんてマイナーなゲームを何で知っているのですか」と答えた。

「本物だよ」がやがや騒ぎだす。

「ちょっとみていい」と聞いてくる。

「構いませんが」答えた。

「うわー凄い」

「岩田達どんな鍛え方をしたの」驚嘆の嵐だった。

どうも、「先知恵」と呼ばれる霊能者達は霊的力を視ることができるらしい。

「佐藤さんには、気をつけて」真顔でいきなり言ってきた。

そういえば大学時代にも似たような事を言われた。

高校の頃、親友の森巌の影響をもろに受け、笹本祐一や水野良を読んでSF作家かファンタジー作家になりたいと思った。

中学の頃は好きなものさえ分からなかったが図書館で歴史漫画を良く読んでいた。

俺の両親は普通の人でそんなこと相談できる人間ではなかった。

子供の夢を理解できるような人達ではなかった。

はじめは「学者になる」と言って物理学科を受験したが合格しなかった。

貯金してコールドスリープして、目が覚めたら大金持ちになる予定が、銀行が潰れていたという話でも書こうと思っていたし、SF作家として原子力の勉強をしたかった。

欧米では大学教授がSF作家になることがある。

日本でパイオニアになればいいかと思っていた。

人生は思い通りにいかないもので滑りどめの建築学科しか通らなかった。

栗本薫がグインサーガハンドブックでファンタジー版三国志になったと書いていたから、俺はファンタジー版戦国時代でも目指そうかと頭を切り替えた。

城の研究でもするかと思ったが、偏差値の低い大学に入ったせいかそんな観念的な学部はなかった。

それでもちょうど歴史群像シリーズが出始めて、興味あるものを独学で勉強できたし、スーファミ版ででた光栄のシミュレーションシリーズは勉強そっちのけで徹夜でやった。

森巌とは徹夜で大戦略なども対戦していた。

大学時代蟹江と言う友人が学生アパートの隣に住んでいた、毎朝起こしてくれた。

蟹江のおかげで卒業できた。

その蟹江が「佐藤は甘い」とが言ってきた。

俺の電話にいたずら電話がかかってきた。

しかもお経が流されていた。

俺は電話の元栓を引き抜いた。

両親には蟹江に電話をかけてくれと頼んだ。

ただこの時には命を狙われているなどとは思いもよらなかった。

大学の佐藤は辞めたと聞いていたが、実際は妹が刺し殺していた。

一度だけライフルで狙われた事があった。

蟹江が「僕が盾になるから」と言って車道側を歩きだした。

何を言っているだか分からなかった。

蟹江のいうとおりにした。

目の前で石ころがはじけた。

ただ事ではないと思い、「蟹江走るぞ」二人でアパートの影まで走った。

「何だ。いまの」と蟹江に聞いた。

「ナギに開祖の霊がとりついてサイコキネスを使って弾道を曲げたんだ」とこっちにはさっぱり分からない事を喜んで答えた。

「ナギがかわいそうにって言うから殺されるかと思ってたけど。

ナギのそばにいれば、全然大丈夫だぎゃあ」ぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。

この当時、佐藤は大学を辞めたとだけ聞いていた。

後で親友の森巌にとりついた「庄司学」という悪霊から、妹が殺したと聞いた。

まあ今は関係ない事だ。

「薙野君、もう今日で出向終わり。

佐藤さんとも別々に帰り」いきなり命令を受けた。

特別断る理由が無いから従ったが4日後の焼き肉大会には勝手にやって来るつもりでいた。

まさか命が狙われているなんて思いもよらなかった。

東京の直属の上司に「行ってきます」と言って出掛けた。彼は「先知恵」だから俺が拳銃で狙われる事を知っていた。

それでも「先道」の俺に何も告げず送り出さねばならないようである。

着いても歓迎してくれているというよりは、何かに怯えていた。

それでも食べていると土方の親父とケンカして途中退席した。

送迎用のバスに乗ると人材派遣会社から派遣されている佐藤さんが乗り込んできた。

この時拳銃で出せと脅したらしい。

そんなことを知らない俺は隣に座って仲良く話をしていた。

「薙野さん、50万で内の会社に来ませんか」破格の待遇で勧誘を受けていた。

ただ俺は俺の信じる武士道に反すると思い断る事にした。その時佐藤さんは奇妙な笑い方をした。

未来の俺は「庄司学」という悪霊から、この時殺されかけていた聞き。

未来の俺は「先知恵」達に「奇妙な笑い方をする佐藤には気をつけろ、どうも俺を殺そうとするらしい」と告げていたようである、と言うか未来の俺は確かに告げた。

そうとは知らない会社ではヘータロー言われた俺が高く評価され、別れの悲しさも手伝ってポロポロ電車の中で涙を流していた。

「庄司学」が暗殺者佐藤は運転手を拳銃で撃って、俺を尾行していた。

ただ彼も人間で泣いてる人の背中を撃てなかった、と教えてくれた。

別れ際も拳銃で狙っていたが俺が振り向かなかったから撃てなかったらしい。ああいうのは目を見て撃つらしい。

俺の部屋で殺そうと考えていたらしい。

何も知らない俺は帰り道、犬の頭を撫でて空を仰ぎ、手を伸ばして星をつかもうとしていた。

この時、自民党のSPと取りかこんでいた上司は撃たれたのかと錯覚して支持を送った。

俺は背中で大捕物が会ったと知らず、上司に呼ばれて飲み直しにいった。

何も気付かずに。

結局俺は情報を与えられない。

建築家として成長しない日々が続いた。

それでいて土方の仕事は続いた。

東京でしばらくやっている時だった。

俺は小林よしのり先生の戦争論を読んで感動していた時なので、靖国神社参拝をする事にした。

現地につくと「英霊の言葉」を全シリーズを買った。

そこで俺は「タクマ」と出会った。

昭和天皇が「立花宗茂と本多忠勝」を作れと御下命なされた。

俺が宗茂で向こうが忠勝だった。

2、3歳ぐらいの子供を遊就館に連れてきて何か教えていた。

中は僕より若い人達がその若さを散華された事を聖敬された物で、自分の今の生き方を思えば後ろめたさを感じさせる物だった。

最後、入り口のノートに何か書こうとしたが、結局何を書こうとしても指に力がはいらず、ぽとりぽとりとペンを落としてしまった。

俺は何も書けずに立ち上がり、胸に手を当てて「やれる所までやってみます」と全ての英霊に約束した。

次の日上司に「お前、どこにいってきた」と聞かれた。「靖国神社ですが」と正直に答えた。

「お前今までインパールの英霊だけだったのに、タクマの分までお前にとりついたぞ」

「英霊なら味方です」と宣言した。

「ばか、英霊は祟り神だぞ」と短く言ってきた、

会話もそれで終了した。

その後、俺は神戸本社勤務となり、現場途中で呼び戻しをくらった。

本社勤務で現場途中でまた飛ばされた。

いい加減にしろと思った時に専務から、もう一度姫路支店の岩田の所に行けといってきた。

岩田といえば一年目の俺を辞めさせようと虐めぬいた男である。

俺は会社に一生の忠誠を誓うし、昔サムライは首を取ってきていた、現在のサムライは金を稼ぐことが使命だと思っていた。

専務には「九州支店を開設して最初の支店長になる」と、飲み会の時に叫んでいた。

こんなにも心のない会社に勤めてきたのかと絶望した。

俺はその場で用意していた辞表をそっと差し出した。

姫路支店にだけは殺されても行く気はなかった。

「一身上ノ

都合ニヨリ

辞メマス

薙野」

と三下りハンを叩きつけた。

「お前は天皇陛下を投げる道を選ぶのだな」常務が言った。

横にいた人事部長が「ゆっくり投げろょ」と言った。

「何の事ですか?」

「いや、いい。

黄色のタクシーには、気をつけろ」短く忠告してきた。

専務と握手して会社を辞めた。

帰りのフェリーの中で神戸の夜景を見ながら涙でもこぼすのかと思えば、自分は冷たい人間らしい。

何ひとつでてこなかった。

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