26.感謝
俺は、壁に寄りかかり、待っておく。
当然、インビジブルをかけておくのを、忘れない。こんなとこで、捕まったらたまったもんじゃない。
しばらくして、扉が開いた。
「カズハ、お待たせして、すみません。」
カトレアが謝りながら、中に、招き入れてくれた。
「気にしなくていいよ。」
そう言って、中に、入室する。
先程とは違い、雰囲気は和らいでいた。
俺は、再度自己紹介を行う。
「改めて、カズハと申します。」
すると、カトレアの両親たちも、自己紹介をしてくれる。
「私は、この国の王でカトレアの父親である、ロワ・バレンシア。こちらが妻のフラウだ。」
「このような体勢ですみません。私が、カトレアの母親になります、フラウ・バレンシアです。」
フラウさんは、寝た状態で、頭だけを下げてくれた。
「私に話があるとの事だが、先にお礼を言わせてほしい。娘を助けてくれて、ありがとう。」
ロワさんは、俺に深々と頭を下げてきた。
俺は、慌てて、頭をあげてもらう。
「頭をあげて下さい。お礼だけで、十分です。それよりも、今、この国はどうなっているのですか?」
俺は、すかさず話をすり替える。
頭をあげたロワさんはこの国について、話してくれた。
「今この国は、不治の病に苛まれている。一応、私たちは、石化病と呼んでいる。この病気は、体の一部が、徐々に石になっていく。最初の頃は、石化回復薬や回復魔法が効いて治っていたのだが、すぐに再発し、回復薬や魔法の効果を上回り、最後には石になってしまう。今のところ、最善が、回復薬や回復魔法を使用し、石化スピードを少しでも、遅くするしか、方法はない。」
「そうですか。何か原因は?」
「今も調査中なのだが、いまだに、分かっていない。」
この国の現状を知って、俺は、神の祝福で人が石になる原因を調べ始める。
『モンスターなどによる、石化攻撃・・・』
様々な、結果が出てきた。
俺は、さらに細かく調べると、ある結論にいたった。その結果を、伝える。
「たぶん、継続石化魔法ではないのかと思います。」
「継続石化魔法?それは、いったい何だい?」
「今は、禁忌魔法に分類される魔法となっています。効果は、特殊な魔法陣を用いて、その中にいる人たちに継続的に石化をかけ続けるという魔法です。これは、先程言った通り魔法なので、自然発生ではなく、誰かが意図的に発動したものと思われます。」
「誰かが意図的にか…」
「はい。ただ、この魔法は、準備に膨大な時間がかかります。本来なら、大人数で行使する魔法ですが、大人数で行動するとさすがにバレそうなため、たぶん、少人数での犯行ではないかと思われます。」
「信じられない話だが、娘を助けてくれたカズハくんの言葉だ、信じてみよう。だが、なぜその魔法に、かかる者とかからない者がいるのだね?」
「それは、魔法の継続対象者が、その魔法を行使した際に、魔法陣内にいた者が対象だからです。
行使後に、この国に、入国した者は、大丈夫ではないかと思われます。」
「なるほど。私たちは疫病の類いだと思っていたため、何の手がかりも掴めなかったのか。すぐに、怪しい者がいなかったか、調べさせよう。」
「ありがとうございます。」
一応、信じて貰えたようだ。ここでふと何故、フラウさんが横になっているのか疑問に思い、神眼を使う。
ステータスの一番下に"状態"の項目が表示されていた。そこに石化(中)と出ていた。
すぐに、ロワさんに尋ねる。
「まさか、フラウさんも、石化状態に?」
ロワさんは、少し驚いた顔をしたあとに、顔を縦にふった。
カトレアをみると、悲しい顔をしていたため、先程の時に、教えて貰っていたのだろう。
「フラウも、少し前から、石化の症状が出だした。今は、この国にいる、回復魔法使いに、回復してもらいながら、状態を維持している。」
そう、ロワさんは言った。俺は、回復魔法使用してもよいか、尋ねる。
ロワさんは、目を見開き、
「回復魔法が使えるのかね?それなら、こちらからお願いしたいくらいだ。」
使用の許可を得る。
すぐに、フラウさんのところに行き、状態を確認する。
すでに、下半身全体に石化が見られる。
すぐに、アンジュに回復魔法"パーフェクトリカバリー"を発動してもらう。
俺も、使えるのだが、アンジュに一日の長がある。
アンジュが、魔法を使うと、部屋全体が、光に包まれ、やがて光がおさまるとそこには、完全に石化が治ったフラウさんがいた。
石化は、一応完全に治ったようだ。
石化が治った事に気づいたロワさんやカトレアは、すぐに、フラウさんと抱き合い、喜びあっていた。
その間に、再発を警戒し、俺は、異次元ボックスから、ゴーレム作製時に余った、アダマンタイトを取り出し、ゴーレムマスターのスキル"錬成"を発動し、腕輪を3つ作製する。
それに、エンチャントマスターのスキル"スキル付与"を使い、石化無効を付与し完成だ。
喜びあっていた、ロワさんはすぐに、涙ながらにお礼を言ってきた。
「娘だけでなく、妻まで、助けてくれて、ほんとうにありがとう。カズハくんには、感謝してもしたりないよ。」
俺は、少し照れながらも、先程作製した、腕輪を渡す。
「これはなにかね?」
「それは、石化無効の付与がついた、腕輪です。フラウさんは、いつまた、石化するか分からないため、念のため、つけておいて下さい。残りの2つは、カトレアとロワさんの分です。」
ロワさんは、初めは、貰うのに、しぶっていたが、今後の事を考え、必要であることを伝えると、申し訳なさそうにしながら、受け取ってくれた。
その姿が、前のカトレアと一緒で少し笑ってしまった。
腕輪をつけた後は、今後について、話し合った。
次回から、投稿の間隔が開きます。




