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君と僕の言う通り






よく晴れた、お昼間にその出来事は起きた。


「わたくし、悪役令嬢ですの!!」


ここはオルコット公爵家の綺麗な花咲く中庭。


オルコット公爵家の一人娘のアリシアと二人きり。


そのアリシアが僕に向けて言った一言。


"わたくし、悪役令嬢ですの"


……うん。ちょっとよく意味がわからないよね。





僕の名前は ノエル・フェルマ。

フェルマ王国の第一王子である。


目の前にいるのが、公爵令嬢の

アリシア・オルコット。

会うのが二回目になる僕の婚約者。


僕がアリシアに一目惚れしたのだ。

だから、父上に掛け合って婚約者候補であったアリシア嬢を婚約者に決定してもらった。

なのに婚約者になって初めて会う愛しい存在によくわからないことを言われた。


あくやくれいじょう?


うーん。ちょっと聞いたことないなぁ。


「…うん。そうなんだ。で、アリシアが悪役令嬢だったらどうなるの?」


とりあえず話を合わせてみようかな。

よくわからないからね。


「ノエル様信じてませんね?でも、いいです!この後は私の言う通りになるのですから!」


胸を張って笑うアリシア可愛い。


「ノエル様はこの後…18歳ごろですかね。

とある男爵令嬢に恋をして私をフルのです。たくさんの人の前で。『アリシア!お前との婚約を破棄する!私は真実の愛を見つけたんだ!』って。そして私は断罪されて地下牢に幽閉、処刑か修道院送りなのです。その男爵令嬢をいじめたとして」


フルって何だろう……。

婚約破棄って事だから、アリシアと別れるって事かな。うん。ありえないね。

公爵であるアリシアが男爵令嬢を虐めたとして、罪に問われるわけないしね。

それに真実の愛って……。

僕、既にアリシアを愛しているんだけどなぁ。これは真実の愛じゃないの?愛だよね。


「ふーん。でもさ、僕はアリシアが好きだからきっとそうはならないと思うんだよね」


「す、好きとか言わないでください!!勘違いしそうになるじゃないですか!!悲しくならないためにノエル様の事は好きにならないんです!」


アリシアは頰を膨らませて怒ってしまった。

といっても顔が赤いから可愛いだけであるが。


「勘違いじゃないのにね」


くすっと笑ってからアリシアを見つめた。


「な、なんですか!もー見ないでください!」


「ふふっ。大丈夫。僕はアリシアを手放さないよ」


うん。

今日も僕の婚約者は可愛い。

僕は時間が来るまでアリシアを見つめていた。







「ほら。やっぱり言ったとーりになったじゃないですか」


私は教室の窓から中庭を見つめた。

そこにいるのは私の婚約者であるノエル殿下。

その隣に愛らしい笑顔でいるのが男爵令嬢のスフィリア。


ここが私の知ってる乙女ゲームの世界だと思ったのはノエル殿下との婚約がきまってから。もう少し早く気づいていれば、私は婚約者にならないで傷つかずにすんだのかな?


ある日にノエル殿下に言ったんだ。

私は悪役令嬢だから殿下にフラれるって。でも殿下は「僕はアリシアが好きだからきっとそうはならないと思う」って言ったのに。


「……ノエル殿下。やっぱり嘘だったじゃん。やっぱりこうなったじゃん。嘘つき。ノエル殿下なんて大嫌い」


今はエンディング間近かな。

ノエル殿下ルート。

だって明日は婚約破棄される卒業パーティーだもんね。

嫌だなぁ。休みたいなぁ。行きたくないなぁ。

ノエル殿下に捨てられるってわかってるのに、行くなんて事したくないなぁ。


「何してんの?アリシアちゃん?」


声のした方に振り返るとアイルセンがいた。

隣国の第3王子である。

ちなみにアイルセンも乙女ゲームの登場人物で攻略対象。


「何にもしてないですよ。ただ、明日で色々終わりだなぁと思いまして」


嘘は言っていない。

明日、本当に色々終わるから。


「何?色々って」


アイルセンはこてんと首を傾げた。

首をかしげる美男子の破壊力やべぇな。


「色々は色々です」


「ふーん。あ、ねアリシアちゃんさ、ノエルに捨てられたら俺と一緒に来ない?」


気づいたら間近にアイルセンの顔があって。

あ、これいわゆる壁ドン…いや、ここ、後ろ窓だから窓ドン?言いづらいな。


「ふふっ。それもいいかもしれないですね。

隣国に行けば幸せがありますかね?私の好きな人はいないですけれど」


ふっと笑ってアイルセンの目を見つめた。


「だったら俺を好きになればいい。幸せにするよ?アリシア」


好きになる?アイルセンを?

……そうすることができれば、よかったかな。私も、ノエル殿下も。

そう思いながら顔をあげるとアイルセンの顔が近づいて……。


「はい。泣かないでねアリシアちゃん。可愛い顔がもっと可愛くなっちゃう」


目元を拭われた。

……泣いてたのか。

無意識に涙が出るほどだったのか。末期かな。


「はい。もう帰ろう アリシアちゃん。明日も早いでしょう?」


「……そうですね。では、失礼しますね アイルセン様。また、明日」


私はアイルセンとノエル殿下がいるであろう窓の外を見て微笑んだ。





「あーあ。

アリシアちゃんを手に入れることができればなぁ」


ずっとずっと好きだった。

小さい頃に外交で訪れた時にアリシアを見た。まだ、只のアリシアだった頃の。

どうにかして自分を見てもらいたくて。

でも、子供だった自分には何にもできなかった。だから頑張ったんだ。どうにかできる力を手に入れる為に。

そしてやっと手に入れる事が出来たアリシアに俺を見てもらえる機会。

でも、そこに現れたアリシアは王太子の婚約者で………。


さっきまでアリシアのいた腕の中を見つめた。


「泣いてたな。アリシアちゃん」


それもこれもあのノエルが悪いんだ。

あんなクソ女に構って大事なアリシアを蔑ろにして。何がしたいんだよマジで。


窓からさっきまでノエルがいたところを見つめた。


アリシアの顔に近づいた時に、そこからはキスしてるように見える角度にした。

その時のノエルの顔ってば。

俺をすんごい目で睨んできて。

おかしかったなぁー。


「そんな目で見るならアリシアを大事にしろよな」


「さ、俺も帰ろう」


アリシアを本当に連れて帰ることができればなぁ……。







今日は僕の、僕達の学園の卒業パーティー。

そして僕の作戦決行の日。

父上のせいで、大事な大事な彼女を蔑ろにしなければならなかった。

何が『あの子は私の落胤かも知れぬ。調べろ』だよ。自分でやれ。

そのせいで彼女に嫌われてみろ。絶対に許さないからな。

彼女に変な虫までついてしまったしな。


……まぁいい。よくないけどいい。

これから絶対に離さないから。

四六時中ずっと一緒にいるから。


「ああ。今日。今日が婚姻発表会だ。あとは彼女に書類にサインしてもらうだけだ。あぁ。長かった。長かったよ。やっと、やっと彼女を手篭めにできる」


幸せだな。

僕だけの彼女。

絶対に離さないし、僕以外を見ることを許さない。


あぁ。どんな顔をするかなぁ。


「君の言った通りにならなかったね」


僕は婚姻届を大事に大事に抱きしめて、ノエルは蕩ける笑みを浮かべた。


「僕の言った通りになったでしょう?」









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