ファーストコンタクト
前にも書いた通り、これはかなり不定期物です。時々思いついたときに書いています。・・・いや、別にもう一方の本編が思いつかないとかじゃないですよ。たまたまです。
火龍は城に着くまでにも数匹のモンスターと遭遇をした。だが、彼の持つAK-47やP226E2ですぐに絶命する。そんなことを続けること5回ほど、火龍は小さな城の見える城塞都市にまでたどり着いた。見た目は中世のローマのような感じだった。城壁の中に町があり、その奥には城がある。そんなイメージだ。火龍はそう思いながらテルノについていき、城の前にまでついた。そこで見張りの兵が驚いたような声でこういった。
「テルノ様、大丈夫ですか!」
「は?テルノ・・・様?」
「何を言っているんだ。テルノ様はお若いながらもこの城塞都市を立派に統治していらっしゃる国王様なのだぞ!」
「・・・本当か?」
そう。テルノは国王だった。見た目はかなり若いので、せいぜい貴族程度かと思っていたのだが、実際はその上を行っていた。
「とりあえず私が城に戻ったことを内務官知らせておいてくれ。彼は私を護衛してくれた者だ。城の貴賓室に通しておいてほしい。」
「はっ!ただちに!」
そんなやり取りが終わりテルノは城の中へ、火龍は見張りの兵に案内され、貴賓室に入れられた。
「しばらく待たれるように。すぐに担当の者が参る。」
「わかったよ。」
そう言うと見張りの兵は出て行った。その間、火龍は1人で待つことになった。しばらくすると絹のような服を着た男性が現れ、一緒に来るように言われた。言われたままついていくと、そこにはテルノがいた。その姿はさっきまでの服と違い、王様らしい服装になっていた。
「・・・本当にテルノは王様だったんだな。」
「お前!テルノ様になんという口の利き方を!」
「いや、執務官。別にいいから。それに、彼に助けてもらっておいて何にもしてあげていないのだから。」
「しかしテルノ様。それでは民に対しての示しが・・・。」
「いいんですよ。そもそも先代が私の若いうちに病気で亡くなったために継がなければならなくなったのですから。」
「あ~・・・えっと、いくつか質問いいか?」
「どうぞ。」
「まず、ここはどういう国なんだ。」
「ここはミズガルト内にあるガルディア王国です。」
「ミズガルト・・・なるほど。そういうことか。」
「何がですか?」
「いや、こっちの話だ。」
彼はこの瞬間、(そうか。この世界は北欧神話の世界なのか。)と思った。
そう思った火龍は彼自身が覚えている北欧神話のあらすじを思い返していた。
北欧神話。ノース人という現在のノルウェーの人々がキリスト教化される前に信仰していたとされる神話体系の1つ。エルフなどの名前もこのあたりから来ていると言われている。そんな北欧神話の神々は不死ではないのが特徴だ。主神とされるオーディンも不死では無いし、最後はフェンリルに飲み込まれるという伝承がある。そして世界が大きく分けて3つあるという事だ。1つはユグドラシルの中間あたりにあると言われる第1層の世界。その大地の下からユグドラシルの根元あたりまでを第2層、さらにその地面の下を第3層と呼ぶ人もいる。最終的にフィンブルの冬という3回連続の冬が来て生物が死に絶えると言われている。その後、ラグナロクと呼ばれる最終戦争が勃発し、生き残るのはほんの数名の神々と言われている。ちなみに俺はミズガルトの事をミッドガルトと呼んでいる。簡易表記だとMidgardとなるからだ。そんなことを考えていると、黙り始めた火龍に対してテルノは声をかけた。
「・・・どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。それよりも、なんでここに私を?」
そう。呼んだ理由が火龍にはいまいち理解できない。そんな火龍に対してテルノは
「あなたにお礼をするためですよ。助けていただいたのですからお礼をしないといけませんし。」
「お礼?ああ、そういうことか。別にいいよ。面倒だし。」
実は結構こういうことを火龍は嫌う性格だった。彼が自衛隊に入ったのも誰かを助けるためであり、社会的な見返りなどを求めたわけではない。だが、
「いえ、それでは私の心が収まりません。どうしてもお礼をさせていただきます。」
「いや、だから俺はお礼なんていいんだって。」
そんな押し問答を10回繰り返し、とうとう火龍の方が折れた。
「ああ、もう。わかったよ。」
「それでは、どんなものがよろしいですか?」
「そうはいってもな。う~ん・・・。」
正直お礼なんて考えていなかった。そもそも向こうから何かをくれるからお礼であって、どれが欲しいではお礼とは微妙に違う。そんなことを考えていると、火龍はあることを思い出した。この世界に飛ばされる前にヨグ=ソトースは何と言っていたか。『新たな秩序として君臨してほしい』と言っていた。だが、王座というのは無理だろう。何かそれを可能にするお礼は・・・。悩んだ末にあることを思いついた。
「それなら、この城塞都市とあの大樹の下に少しの土地をもらいたい。それと、城塞都市の市民から志願制の自警団を設立したい。」
「貴様!わが騎士団の能力をバカにしているのか!」
「そうじゃない。城壁外と城壁内で管轄を分けてはいかがだろうかという事だ。何せ内外を同じでしては勝手が悪いと思うのでな。」
「別にかまいませんよ。」
「テルノ様!しかし・・・」
「今は騎士団も人員不足です。となれば、内外で管轄を分けるのが良いと思いますよ。」
「・・・わかりました。そのように手配をさせましょう。」
「それじゃ、そろそろいいかな?」
「ええ。貴賓室でしばらくお待ちください。あとでお渡しする土地まで案内人を使わせます。」
「それじゃあなテルノ国王。」
「今まで通りテルノでいいですよ。」
「そうか。じゃあまたな。」
そう言って俺は貴賓室へと再び案内された。
視点:久禮 火龍
「さてと、まずは第1ステップってところか?」
俺がなぜ自警団の設立を行ったか。それには新たな秩序形成に必要だからだ。もちろん変えるのは国家クラスではない。世界クラスで秩序の形成を行うためだ。それはなぜか。さっき考えた言葉の中にラグナロクという終末戦争が起こると言った。それではその後はどうなるのか?生き残った数名の神々が新たな秩序として君臨すると書かれていた。ならば、私の側に着く人間などが多ければどうなるか?相手は神族だとしても、数の暴力にはかなわない。それはどの戦争でも証明されている。技術力に大きな差がある場合は別だが、基本的には人数の多い方が勝つ。そこで、俺はまず仲間を集めることにした。最終目標はラグナロクとその前に起きるとされるフィンブルの冬を耐え凌ぎ、新たな秩序の形成を俺主導で行うことだ。
「問題は戦力差だな。」
知っている限りでは第1層の神々は結構な数がいる。そのもとにいるとされるヴァルキューレの数を合わせるとさらに増える。もっと言えばヴァルハラと呼ばれる、死した勇敢な戦士たちの魂が集う館もそこにあると言われている。グングニールなどの神具も合わせればとてもじゃないが、かなわない。武器、兵士の数、何をとても負けている。つまり、圧倒的な戦力差があるということだ。だが、俺にはそれを上回る力がある。ヨグ=ソトースは言ったじゃないか。どんなものでも生み出せると。武装もAK-47や現代式の戦闘服まで創り出せた。ということは、俺は必要なものを創り出せばいい。神様と言っても多神教の神であれば、その力は絶対的ではない。そこが勝利へのポイントになるだろう。
「まずは・・・この地域の制圧と地図を作ることからだ。」
地図を作るのはあっちの世界ならかなり簡単なことだ。GPS機能などを用いて簡単に出来上がってしまう。だが、ここにはそんなものはない。ましてや、この上に大地がある以上は衛星を打ち上げることも難しい。それに、地球と同じような惑星の状態であるかも怪しいところだ。
「昔は・・・天動説が主流だったよな。」
天動説。紀元前4世紀のギリシアに考えられたとされる説。主に天体が地球の周りをまわるというのが天動説の有名な話だ。北欧神話ができた時代は地球が丸いとされることよりも前の時代だから、さらに面倒なことになる。ある説では地平線の外側は何もないところに落ちて行っているという説すらある状況だったはずだ。となると衛星の打ち上げなどはほぼ絶望的だろう。しかし、地図作製の手段は1つだけではない。そこで俺はもう1つの方法を考え付いた。その1つが上空からの偵察だ。
「・・・RQ-11レイブン。ノートパソコン。」
そう言うと小さなアタッシュケースが2つ出てきた。開けてみるとそこにはやはり部品が入っていた。それを組み立てると白いラジコンが出来上がった。
「こう見えても10kmは飛べるんだよな。」
RQ-11レイブン。アメリカ軍が近距離偵察用に使っているラジコン機だ。手で投げてそれをプロポで操縦したりGPSを使って全自動で偵察するという優れものだ。今回はもちろんプロポを使う。プロポと言っても日本のゲームメーカーが作ったゲーム機のコントローラー使う。それを左手に持ち、右手にレイブン、そして近くの机にノートパソコンを置く。ノートパソコンにはすでにアプリケーションをダウンロードしてある。
「そ~らよ。」
そう言って投げた。見事な滑空をしていく。そして俺は左手のゲームパッドを使ってノートパソコンに写る情報や映像を見て操作をする。
「高度は5000m位までは飛べるんだよな。」
左手で機体の操作をするパッドを操作する。ぐんぐん高度計は上昇していき、高度4500を示す。それを確認して機体を水平に安定させる。同時にCCDカメラを動かして上空から周りを見渡す。
「森の中に1つの城・・・それ以外はどこも森だな。大樹の下は・・・とくになしか。その周りには海・・・と。ん?あれは・・・火か?」
そうしてカメラがとらえた情報を見ていく。わかったことはいくつかあった。1つはこの場所以外の近いところに人がいそうな気配はないという事。2つ目に、少し遠いところであれば人の住んでいるらしい集落があるということ。その周りは海で囲まれているという事だった。さらにもう一つ言うのであれば虹の橋が見えたという事だった。
「あれはビフレストか?ということはあそこがアースガルズのある第1層への入り口なのか。」
そんな風に偵察をして、航続距離の限界が近くなる前に城へと戻した。窓から部屋へと入り、見事なランディングを決めた。
「とりあえずこのパソコンでレポートを書いておくか。」
いわゆる市販のノートパソコンを使っているのでマイク○ソフトのワードくらいは入っている。それを開いて簡易的なレポートを書き上げた。そしてすべての道具をアタッシュケースへと入れなおした。その後で案内役が部屋へと来て、都市内の俺が所有する土地まで案内をされた。