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プロローグ

 世界は、その原初には光しかなかった。闇の無い世界では、全てが光り輝き、全てが平等であり、全てが一つのモノであった。そこでは御父なる神エロヒム自身、他のモノとの区別が出来なかった。

 そこで御父なる神エロヒムは、御子ヤハウェに命を下した。

 熾天使ルシフェル=御子ヤハウェは、天使の三分の一に耳打ちした。


──神に逆らい、御父なる神エロヒムにとって変わらんと


 そして、ルシフェルに従った天使達は、残り三分の二の天使軍に対し戦いを挑んだのだ。しかし、反逆軍は、天の軍勢に敗れ地の底に落とされてしまった。光だったモノ達が地に堕ちることで、世界に闇が現れることとなる。


 光に対して闇が存在することで、物事の境界が生まれ、天と地の諸々が区別され、形を成すことが出来るようになった。

 神々と天使達は天上の天界に、地の底に落とされたモノ達は、神に逆らうも──悪魔(サタン)と呼ばれ、地の底である地獄界に住まうようになった。

 その後、御父なる神エロヒムと御子ヤハウェは、天界と地獄界の中間である地上に、諸々の生物を創り住まわせた。その最後に、(ちり)より最初の人間が創造された。

 その人間はただ一人きりで、両性具有ではあったが、愛を知らず、人間が増えることは出来なかった。そこで、御子ヤハウェは人間の遺伝情報から一部を抜き取りY染色体を持たすことで、最初の男──アダムとなした。そして、アダムの遺伝情報を元に、新たなX染色体を持った第二の人間イブを創った。不完全なX染色体を持たされたイブは、最初の人間とは異なり、両性具有とはならなかった。神は、その姿を女と呼んだ。

 更に、ルシフェル=ヤハウェは、人間に知恵の木の実を与えることで、愛を教え、人間が自分達だけで増えていくことが出来るようにした。

 こうして、最初のアダムとイブから人々が生まれ、地上に増え満ちることとなった。


 だが、地下の悪魔達はそれを良しとしなかった。神々の姦計により貶められた彼等ではあったが、それでも神を慕い愛していた。その愛おしい神が、天使よりも、土くれ(・・・)から成った人間に祝福を与え、愛でるようになったのを見て、憤りを覚え、人間達を憎むようになった。

 これより、神々は人間を愛するもの、悪魔は人間を憎むものとして存在するようになる。


 人間を憎む悪魔達は機会があるごとに、人間を悪へと誘い地獄界に引き入れようとした。それでも全ての人間を地の底に引き入れることは出来なかった。その一生の大部分が繁殖期である人間の増える速度が、地獄に堕ちる数よりも遥かに高かったためである。また、天上界の神々との契約により、神も悪魔も地上の人間には、直接に接することが出来なかったという事情もあった。


 怒り心頭の悪魔達は、人類抹殺のための最終手段(・・・・)を執ることとした。

 一組の選び抜かれた男と女を交わらせ、最高の知能を備えた男を地上に生み出すことに成功したのだ。悪魔によって生み出された男は、その(たぐい)まれなる知能により、最悪の破壊兵器を生み出し人類を最終戦争で絶滅させる運命を持っていた。

 だが、それを知った天上の神々は、精霊ルーハをして、同様に優れた知能を持つ人間を神のエージェントとして生み出した。そして、最終戦争を阻止するよう運命づけた。

 しかし、そこに誤算が生じた。精霊ルーハは神々の落し児を、()として創ってしまったのだ。

 アダムより作られしイブは、結果としてアダムよりも劣化した遺伝子群を持つことになった。その為、落し児の知能は、悪魔の落し児である()に遥かに及ばないものと成ってしまったのだ。それでも、神々はその落し児を愛でた。そして、人を、諸々の生き物を愛するようにさせた。


 悪魔の子と神の子が生まれて幾年かが経ち、共に愛くるしい少年と少女へと成長した。

 そして、二人は、とある偶然から出遭うことになる。当然、悪魔の生み出した天才に、神の子が及ぶべくも無かった。悪魔達は自分達の勝利を疑わずほくそ笑んだ。しかし、悪魔の側にも誤算が生まれた。


 それは、少年が少女に恋をしてしまったということだった……。




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