最終決戦(うそ)
『廻天』
第三十九話 門番
本部。
正門。
朝。
⸻
カイ。
紙袋。
三つ。
持って。
歩く。
⸻
中。
ITO。
売れ残り。
ではない。
予約品。
⸻
門。
前。
いつもの。
男。
⸻
黒い。
ジャケット。
サンダル。
缶コーヒー。
⸻
神代岳。
⸻
カイ。
「おはよう。」
岳。
「ん。」
⸻
カイ。
通る。
⸻
止まる。
戻る。
⸻
「岳。」
「何。」
「仕事してる?」
岳。
「してる。」
「ずっと。」
「缶コーヒー。」
「飲んでるだけに。」
「見える。」
⸻
岳。
門。
指す。
「通していい奴を。」
「通してる。」
⸻
カイ。
「ダメな奴。」
「来る?」
岳。
「たまに。」
「どうするの。」
岳。
缶。
飲む。
「通さない。」
⸻
カイ。
「それだけ?」
「それだけ。」
⸻
後ろ。
レン。
来る。
「何してんの。」
カイ。
「岳の。」
「仕事内容。」
「聞いてた。」
レン。
「ああ。」
⸻
レン。
岳。
見る。
「こいつ。」
「門番って名前の。」
「最終防衛線だから。」
カイ。
「そんな強いの。」
岳。
「大げさ。」
レン。
「お前が言うな。」
⸻
本部。
正門。
⸻
外部から。
侵入。
あった場合。
最初。
会う。
⸻
岳。
⸻
内部から。
何か。
逃げた場合。
最後。
会う。
⸻
岳。
⸻
だから。
門番。
⸻
カイ。
「受付。」
「ではない?」
岳。
「違う。」
レン。
「受付だったら。」
「怖すぎるだろ。」
⸻
カイ。
岳。
見る。
⸻
最初。
会った時。
《観流》。
使った。
⸻
何も。
見えなかった。
⸻
流れ。
ない。
ように。
見えた。
⸻
でも。
違う。
⸻
今なら。
少し。
分かる。
⸻
カイ。
「岳。」
「触っていい?」
岳。
「嫌だ。」
「施術。」
「もっと嫌だ。」
レン。
「揉まれろ。」
⸻
岳。
「何で。」
レン。
「最近。」
「全員。」
「伸びてる。」
「お前も。」
「試せ。」
岳。
「興味ない。」
⸻
カイ。
「無料。」
岳。
止まる。
⸻
「……。」
レン。
「そこ?」
⸻
三十分後。
身体・能力経路調整室。
⸻
岳。
ベッド。
うつ伏せ。
⸻
カイ。
背中。
触る。
⸻
「……。」
⸻
岳。
「何。」
カイ。
「やっぱ。」
「変。」
「失礼。」
⸻
《感流》。
⸻
普通。
人。
触れば。
筋肉。
血流。
能力経路。
重なる。
⸻
岳。
違う。
⸻
筋肉。
分かる。
関節。
分かる。
呼吸。
分かる。
⸻
でも。
能力。
だけ。
消える。
⸻
カイ。
「どうやってるの。」
岳。
「何を。」
「能力。」
「隠してる。」
岳。
少し。
黙る。
⸻
「隠してない。」
⸻
カイ。
「じゃあ。」
「何で見えない。」
岳。
「流してないから。」
⸻
カイ。
手。
止まる。
⸻
「能力って。」
「流れるもんじゃないの。」
岳。
「お前は。」
「そう。」
⸻
岳。
起きる。
ベッド。
座る。
⸻
「能力。」
「出す。」
「前。」
「流れ。」
「作る奴。」
「多い。」
⸻
レン。
壁。
寄りかかる。
聞く。
⸻
岳。
続ける。
「俺は。」
「必要な瞬間まで。」
「作らない。」
⸻
カイ。
「ゼロ?」
「ゼロ。」
「発動した瞬間。」
「できる。」
「終わったら。」
「消す。」
⸻
レン。
「だから。」
「観流で。」
「先読み。」
「できねぇ。」
⸻
カイ。
ようやく。
理解。
⸻
岳。
速い。
から。
読めない。
ではない。
⸻
動く前の兆候が。
能力側に存在しない。
⸻
カイ。
「それ。」
「ずるくない?」
岳。
「技術。」
⸻
レン。
笑う。
「昔。」
「俺も。」
「それで。」
「ボコられた。」
カイ。
「レンが?」
「三回。」
岳。
「五回。」
レン。
「数えるな。」
⸻
カイ。
「能力。」
「何。」
岳。
答えない。
⸻
レン。
代わり。
言う。
「知らん。」
「え。」
「俺も。」
「ちゃんと。」
「知らねぇ。」
⸻
岳。
「必要ない。」
⸻
カイ。
「本部は?」
レン。
「知ってる奴。」
「いるんじゃね。」
岳。
「いる。」
「榊?」
「多分。」
⸻
カイ。
「教えて。」
岳。
「嫌。」
⸻
施術。
戻る。
⸻
肩。
硬い。
腰。
意外と。
張ってる。
⸻
カイ。
「門番。」
「座ってるだけなのに。」
「腰。」
「悪い。」
岳。
「立ってる。」
「サンダル。」
「やめたら。」
「嫌だ。」
⸻
カイ。
揉む。
⸻
《感流》。
筋肉。
拾う。
⸻
《触流》。
僅か。
調整。
⸻
《流転》。
力。
逃げてる。
場所。
戻す。
⸻
岳。
一瞬。
目。
開く。
⸻
「……。」
カイ。
「何。」
「そこ。」
「今まで。」
「使えてなかった。」
⸻
右。
股関節。
奥。
⸻
岳。
普段。
瞬発。
する。
時。
無意識。
左。
偏る。
⸻
怪我。
ではない。
癖。
⸻
カイ。
「ここ。」
「右。」
「使ってない。」
岳。
「使ってる。」
「七割。」
⸻
岳。
黙る。
⸻
「分かるのか。」
「揉めば。」
⸻
カイ。
調整。
する。
⸻
三十分。
終了。
⸻
岳。
立つ。
⸻
レン。
「どう。」
岳。
「分からん。」
⸻
一歩。
⸻
消える。
⸻
レン。
目。
動く。
⸻
次。
岳。
部屋。
反対側。
⸻
レン。
「……。」
カイ。
「速くなった。」
岳。
「そうか。」
⸻
レン。
顔。
引きつる。
「いや。」
「今の。」
「結構。」
「やべぇぞ。」
⸻
岳。
自分。
足。
見る。
⸻
「右。」
「使える。」
⸻
カイ。
「よかった。」
岳。
「もう一回。」
「予約。」
レン。
「ハマってんじゃねぇか。」
⸻
それから。
二か月。
⸻
岳。
週。
一回。
来る。
⸻
毎回。
少し。
違う。
⸻
右。
左。
腰。
肩。
足。
呼吸。
⸻
カイ。
無駄。
見つける。
岳。
直す。
⸻
そして。
岳自身。
自分。
身体。
理解。
始める。
⸻
能力。
強く。
なった。
というより。
⸻
発動の前後。
無駄が。
消えていく。
⸻
門。
前。
⸻
ある日。
訓練。
帰り。
レン。
岳。
見る。
「一回。」
「やる?」
岳。
「嫌。」
「何で。」
「面倒。」
レン。
「ビビってる?」
岳。
缶。
置く。
⸻
「五分。」
レン。
笑う。
「十分。」
⸻
訓練場。
⸻
カイ。
澪。
アキラ。
見てる。
⸻
開始。
⸻
レン。
《穿牙》。
⸻
踏む。
⸻
岳。
動かない。
⸻
レン。
距離。
詰める。
⸻
拳。
届く。
寸前。
⸻
岳。
消える。
⸻
レン。
止まる。
⸻
背後。
⸻
蹴り。
⸻
レン。
ベクトル。
変える。
身体。
捻る。
避ける。
⸻
岳。
「今の。」
「便利。」
レン。
「小技。」
⸻
再び。
⸻
レン。
三方向。
フェイント。
⸻
岳。
一つ。
も。
乗らない。
⸻
理由。
単純。
⸻
岳。
相手。
能力。
見てない。
⸻
身体。
だけ。
見てる。
⸻
肩。
腰。
目。
足。
呼吸。
⸻
能力。
なんて。
後。
⸻
レン。
《穿牙》。
集中。
⸻
岳。
初めて。
構える。
⸻
衝突。
⸻
ドン!!
⸻
訓練場。
床。
割れる。
⸻
カイ。
見る。
⸻
岳。
右腕。
受ける。
⸻
レン。
笑う。
「止めた。」
岳。
「前より。」
「重い。」
⸻
次。
瞬間。
⸻
岳。
レン。
胸。
触る。
⸻
レン。
「え。」
⸻
ゴッ。
⸻
レン。
床。
沈む。
⸻
カイ。
「何した。」
岳。
「押した。」
レン。
地面。
顔。
埋めながら。
「嘘つけ!!」
⸻
五分。
終了。
⸻
レン。
三勝。
ではない。
⸻
一勝。
も。
してない。
⸻
岳。
缶コーヒー。
拾う。
⸻
レン。
「お前。」
「やっぱ。」
「前より。」
「強い。」
岳。
「お前も。」
⸻
レン。
「もう一回。」
岳。
「嫌。」
⸻
カイ。
「岳って。」
「何で。」
「実働。」
「行かないの。」
⸻
岳。
止まる。
⸻
「昔。」
「行ってた。」
⸻
レン。
顔。
少し。
変わる。
⸻
岳。
「でも。」
「攻める。」
「より。」
「守る方が。」
「向いてた。」
⸻
カイ。
「門を?」
「門。」
⸻
本部。
人。
出る。
戻る。
⸻
負傷者。
実験体。
研究員。
一般。
⸻
その全部。
最後。
通る。
場所。
⸻
岳。
「ここ。」
「抜かれたら。」
「中。」
「全部。」
「終わる。」
⸻
カイ。
「だから。」
「いる。」
「そう。」
⸻
レン。
少し。
笑う。
「こいつ。」
「外。」
「出ないから。」
「目立たないけど。」
⸻
岳。
見る。
「本部で。」
「一番。」
「敵にしたくない奴の。」
「一人。」
⸻
その時。
放送。
入る。
⸻
『全実働員。』
『第一会議室へ。』
⸻
岳。
缶。
飲む。
⸻
レン。
「仕事。」
カイ。
「岳も?」
岳。
「呼ばれてない。」
⸻
数秒。
⸻
放送。
追加。
⸻
『神代岳。』
『今回はお前も来い。』
⸻
岳。
「……。」
レン。
笑う。
「呼ばれた。」
⸻
第一会議室。
⸻
六十二名。
⸻
巨大。
画面。
⸻
環生機関。
主要拠点。
⸻
東部第六環生施設。
⸻
榊。
前。
立つ。
⸻
「明朝。」
「掃討する。」
⸻
岳。
画面。
見る。
⸻
レン。
横。
「門番。」
「留守。」
「大丈夫?」
岳。
「代わり。」
「いる。」
レン。
「誰。」
⸻
岳。
後ろ。
見る。
⸻
黒瀬。
いる。
⸻
レン。
「……。」
黒瀬。
「俺。」
「行くぞ。」
レン。
「じゃあ誰だよ!!」
⸻
榊。
ため息。
「別の。」
「警備員。」
レン。
「普通の答えだった。」
⸻
榊。
作戦。
表示。
⸻
第一班。
正面制圧。
指揮。
神代岳。
⸻
カイ。
見る。
岳。
変わらず。
無表情。
⸻
レン。
「久々。」
「外。」
「出るな。」
岳。
「そうだな。」
⸻
榊。
「神代。」
「入口。」
「開けろ。」
岳。
「了解。」
⸻
カイ。
そこで。
ようやく。
分かる。
⸻
門番。
だから。
門。
守る。
⸻
でも。
必要。
なら。
⸻
敵の門も。
開ける。
⸻
翌朝。
午前。
六時。
⸻
東部第六環生施設。
正門。
⸻
岳。
先頭。
⸻
後ろ。
本部。
六十二名。
⸻
レン。
カイ。
澪。
アキラ。
十三。
⸻
榊。
黒瀬。
⸻
敵。
巨大。
隔壁。
閉じる。
⸻
厚さ。
二メートル。
能力防壁。
三重。
⸻
榊。
「神代。」
岳。
缶コーヒー。
カイ。
渡す。
「持ってて。」
カイ。
「うん。」
⸻
岳。
隔壁。
前。
立つ。
⸻
能力反応。
⸻
ない。
⸻
観流。
何も。
見えない。
⸻
岳。
右。
足。
引く。
⸻
カイ。
気づく。
⸻
以前。
使えてなかった。
右。
⸻
今。
完全。
使う。
⸻
一歩。
⸻
拳。
⸻
ただ。
それだけ。
⸻
ゴン。
⸻
一秒。
⸻
巨大。
隔壁。
中央。
凹む。
⸻
二秒。
⸻
三重。
防壁。
全部。
割れる。
⸻
三秒。
⸻
扉。
奥。
吹き飛ぶ。
⸻
沈黙。
⸻
アキラ。
「……。」
十三。
「何世代。」
レン。
笑う。
「だから。」
「天然だって。」
⸻
岳。
手。
振る。
「硬い。」
レン。
「感想それかよ。」
⸻
岳。
カイ。
手。
出す。
カイ。
缶コーヒー。
返す。
⸻
岳。
一口。
飲む。
⸻
無線。
取る。
「第一班。」
「侵入。」
⸻
午前。
六時。
一分。
⸻
環生機関。
東部第六施設。
掃討作戦。
開始。
――第三十九話・了




