軌道
『廻天』
第三十話 通り道
山。
本部管理。
訓練場。
カイ。
レン。
澪。
そして。
火野アキラ。
四人。
立つ。
アキラ。
「で。」
「俺。」
「撃てばいいんですか。」
レン。
「まだ撃つな。」
「はい。」
三秒。
アキラ。
「いつ撃ちます?」
「待てっつってんだろ。」
⸻
澪。
端末。
置く。
「今回。」
「確認するのは。」
レンを見る。
「レンが集めたエネルギーを。」
「アキラへ。」
「渡せるか。」
アキラ。
「なるほど。」
カイ。
「たぶん。」
レン。
「たぶん?」
カイ。
「俺。」
「やったことない。」
「お前が言い出したんだろ!」
⸻
実験。
開始。
まず。
小さい。
鉄球。
装置。
転がす。
レン。
前。
立つ。
鉄球。
来る。
《穿牙》。
意識。
鉄球。
そのものではない。
運動。
拾う。
速度。
落ちる。
レン。
右腕。
少し。
重くなる。
「取れた。」
澪。
「約四%。」
アキラ。
「少な。」
レン。
「最初だからな。」
⸻
カイ。
《観流》。
見る。
レンの。
腕。
肩。
胸。
内部。
運動エネルギー。
流れ。
通っている。
「……。」
レン。
「どう。」
カイ。
「嫌な感じ。」
「具体的に。」
「右腕。」
「ちょっと壊れそう。」
「もう!?」
⸻
レン。
アキラ。
横。
並ぶ。
カイ。
二人。
肩。
触れる。
《結流》。
経路。
一時的。
繋ぐ。
「じゃ。」
レン。
「流す。」
アキラ。
構える。
「来い。」
レン。
自分の。
内部。
溜めた。
運動。
アキラへ。
送る。
⸻
一瞬。
バチン!!
レン。
吹き飛ぶ。
「ぐぁっ!」
アキラ。
反対側。
吹き飛ぶ。
「うわっ!」
カイ。
「……。」
澪。
「失敗。」
レン。
地面。
「見りゃ分かる。」
⸻
アキラ。
起きる。
「今。」
「結構来ました。」
レン。
「撃てそうだった?」
「はい。」
「じゃあ。」
レン。
立つ。
「次。」
カイ。
「待って。」
レン。
「何。」
カイ。
右腕。
触る。
「筋肉。」
「ちょっと切れてる。」
「……。」
アキラ。
「やめます?」
レン。
「やる。」
澪。
「やめます。」
「澪。」
「やめます。」
⸻
翌日。
再試験。
今度。
小さく。
熱。
集める。
レン。
周囲。
暖かい。
地面。
熱。
拾う。
手。
熱い。
カイ。
「もう赤い。」
レン。
「まだいける。」
「その言い方。」
「だいたいダメなやつ。」
⸻
カイ。
《流転》。
レン。
内部。
熱。
散らす。
そこから。
アキラへ。
《結流》。
少量。
送る。
アキラ。
掌。
光る。
「来た。」
澪。
「出力。」
「三%。」
アキラ。
前。
手。
向ける。
《爆炉》。
ボッ。
小さな。
爆発。
標的。
揺れる。
レン。
「……。」
アキラ。
「できた。」
カイ。
「できたね。」
澪。
「一応。」
⸻
レン。
笑う。
「じゃあ。」
「もっと集めれば――」
「無理です。」
澪。
即答。
レン。
「早ぇよ。」
⸻
澪。
レン。
腕。
見る。
「今。」
「外部の熱量。」
「ごく僅か。」
「それでも。」
「レンの体温。」
「局所的に。」
「二度近く上昇。」
カイ。
「運動の時は。」
「筋肉に負荷。」
「熱なら。」
「火傷。」
アキラ。
「電気なら?」
三人。
アキラを見る。
「……。」
アキラ。
「感電?」
レン。
「試さねぇからな。」
⸻
澪。
端末。
画面。
見せる。
一本。
流れ。
外部。
↓
レン。
↓
カイの接続。
↓
アキラ。
↓
放出。
「問題は。」
指。
レン。
「ここです。」
レン。
「俺?」
「はい。」
「外部から。」
「どれだけ大量のエネルギーを。」
「集められるようになっても。」
「必ずレンを通る。」
⸻
沈黙。
レン。
拳。
見る。
アキラ。
少し。
気まずい。
「俺が。」
「もっと上手く撃てれば。」
レン。
「違う。」
アキラ。
「でも。」
「俺が火力担当なのに。」
レン。
「出口は。」
「お前でいい。」
自分。
胸。
指す。
「通り道が俺なのが問題。」
⸻
カイ。
「じゃあ。」
「通らなきゃいい。」
レン。
「どうやって。」
「知らない。」
「おい。」
⸻
カイ。
鉄球。
一つ。
持つ。
転がす。
鉄球。
動く。
「これ。」
レン。
「何。」
「運動。」
「うん。」
カイ。
指。
鉄球。
進行方向。
指す。
「ここから。」
「こっち。」
別。
方向。
指す。
「直接。」
「曲げられたら。」
レン。
「……。」
⸻
澪。
顔。
上げる。
カイを見る。
次。
レン。
見る。
「方向。」
カイ。
「うん。」
「集めなくても。」
「向きだけ。」
「変える。」
レン。
少し。
考える。
「でも。」
「《穿牙》は。」
「集める能力だぞ。」
シュウ。
内側。
『また狭くしてる。』
カイ。
「あ。」
レン。
「何。」
「シュウが。」
「また狭く考えてるって。」
レン。
「……。」
岳。
以前。
言った。
『技だと思うな。』
『好きに使え。』
⸻
その日。
レン。
一人。
訓練場。
鉄球。
見る。
装置。
発射。
ゴロゴロ。
来る。
レン。
手。
伸ばす。
集めない。
止めない。
取らない。
ただ。
向き。
変える。
「……。」
何も。
起きない。
鉄球。
足。
ぶつかる。
「痛っ。」
⸻
二回目。
「……。」
ゴン。
「痛ぇ。」
三回目。
ゴン。
「クソ。」
十回目。
ゴン。
⸻
カイ。
椅子。
座る。
「足大丈夫?」
「黙れ。」
アキラ。
隣。
「俺。」
受け止めましょうか。」
「お前は爆発するから座ってろ。」
「はい。」
⸻
澪。
ずっと。
見ている。
レン。
今まで。
一点へ。
集中。
していた。
だから。
能力経路も。
すべて。
中心へ。
向かう。
それを。
横。
曲げる。
真逆。
使い方。
簡単な。
はず。
ない。
⸻
一週間。
成功。
なし。
レン。
苛立つ。
「無理じゃねぇか。」
カイ。
「じゃあやめる?」
レン。
「やめねぇ。」
「じゃあ続ければ。」
「簡単に言うな。」
⸻
アキラ。
その間。
小さな。
爆発。
練習。
ボッ。
「お。」
もう一度。
ドォン!!
「……。」
レン。
振り返る。
「何した。」
アキラ。
髪。
焦げる。
「力加減。」
「間違えました。」
レン。
「お前も。」
「全然進まねぇな。」
アキラ。
笑う。
「落ちこぼれなんで。」
レン。
「……。」
嫌そう。
顔。
する。
「それ。」
「自分で言うな。」
アキラ。
「?」
「俺が言う。」
「ひどくないですか?」
⸻
さらに。
数日。
レン。
鉄球。
見る。
もう。
何百回。
同じ。
球。
同じ。
速度。
同じ。
方向。
澪。
銀界。
開く。
「三。」
「二。」
「一。」
鉄球。
来る。
レン。
目。
閉じない。
運動。
感じる。
量。
ではない。
速度。
でも。
ない。
どこへ。
向かって。
いる。
それだけ。
⸻
右。
来る。
なら。
左へ。
押す。
ではない。
左へ。
向かわせる。
⸻
一瞬。
レンの。
異能経路。
変わる。
一点。
中心。
集まる。
はず。
だった。
流れ。
横。
逸れる。
カイ。
立ち上がる。
「……。」
シュウ。
『来た。』
⸻
鉄球。
レン。
足元。
直前。
突然。
カッ。
軌道。
曲がる。
九十度。
横。
転がる。
⸻
沈黙。
レン。
「……。」
澪。
目。
見開く。
アキラ。
「今。」
カイ。
「曲がった。」
レン。
鉄球。
見る。
「俺。」
「触ってない。」
澪。
「はい。」
⸻
レン。
右手。
見る。
今まで。
集める。
一点。
ただ。
それだけだった。
でも。
一点とは。
量。
だけではない。
方向も。
一点へ。
揃えること。
だった。
⸻
澪。
小さく。
呟く。
「ベクトル。」
レン。
「何。」
「力には。」
「大きさと。」
「向きがあります。」
「今まで。」
「あなたは。」
「大きさばかり。」
「集めていた。」
レン。
「……。」
「今。」
澪。
鉄球。
見る。
「向きを変えた。」
⸻
レン。
笑う。
ゆっくり。
「なるほど。」
カイ。
嫌な。
予感。
「何。」
レン。
アキラを見る。
アキラ。
「?」
レン。
次。
カイを見る。
そして。
自分。
通り道。
だった。
身体。
見る。
「俺を。」
「通す必要ねぇじゃん。」
⸻
澪。
息。
止まる。
そこで。
気づく。
もし。
これが。
鉄球。
だけじゃない。
運動。
熱。
衝撃。
異能。
あらゆる。
エネルギー。
その。
進行方向。
経路。
向き。
変えられるなら。
レンは。
集めたものを。
自分へ。
通さず。
直接。
アキラへ。
流せる。
⸻
澪。
レンを見る。
珍しく。
少し。
顔。
引きつる。
「レン。」
「何。」
「それ。」
「かなり危ない能力かもしれません。」
レン。
笑う。
「火力ある?」
澪。
「理論上は。」
「あります。」
レン。
「ならいい。」
「よくありません。」
⸻
アキラ。
手。
上げる。
「あの。」
「俺。」
「何すれば。」
レン。
振り返る。
笑う。
「やっと。」
「お前の出番だ。」
アキラ。
「お。」
カイ。
「でも。」
三人。
見る。
カイ。
「まだ。」
「鉄球一個。」
曲げただけだよ。」
⸻
沈黙。
レン。
「……。」
アキラ。
「……。」
澪。
「その通りです。」
レン。
「水差すな!!」
⸻
完成。
までは。
まだ。
遠い。
大量の。
運動エネルギー。
熱。
衝撃。
それらを。
自分を通さず。
別の場所へ。
向ける。
そんな。
使い方。
今は。
まだ。
できない。
でも。
道。
一つ。
見えた。
《穿牙》。
その奥。
新しい。
使い方。
まだ。
名前は。
ない。
ただ。
澪だけは。
思っていた。
これが。
本当に。
完成したら。
一番危ないのは。
レンなんじゃないか。
――第三十話・了




