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「ルミナス・アーカイブ 〜転生者の記憶〜」  作者: 田舎のおっさん|AIで人生再々起中
第二部・最終章「第七封印編」

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無名の存在

 侵食者の分体が消し飛ばされ、

境界世界に一瞬の静寂が訪れた。


 だが――

その静寂はすぐに、異様な“気配”で満たされる。


ゴ……ゴゴ……ゴ……ッ……


 世界のどこからともなく、

音のような振動のような、

意味のない圧力が押し寄せる。


「な、何の音……?」

リリアが震えながら言った。


「音じゃない……これは……

 “存在の波”……」

エルザの顔が真っ青になる。


(存在の……波……?)


 ユウは胸の奥で“始原”の声を聞く。


『ユウ……来ル……

 本体ガ……』


(本体……!)


■ 1 世界の“裏側”が剝がれていく


 視界の端に違和感を覚えた。


 空の一部。

 大地の一部。

 遠くの光の一片。


それらが一瞬――

ノイズのように“ガリッ”と削れた。


「っ……!?

 世界が……“めくれてる”……!」

リリアの声が上ずる。


「本体の力……

 “存在の書き換え”……!」

エルザは震えた。


レオンは歯を食いしばる。


「相棒……

 マジでヤバいの来る……!!」


 そして――


世界の裏側が“剝がれ落ち”るようにして。

そこから、“それ”が姿を現した。


■ 2 “本体”が現れる


 黒でも白でも透明でもない。

 形があるようでない。

 そこにあるのに認識できない。


ただ――

見ているだけで頭痛と吐き気が襲う。


「……なん……これ……」

リリアは視界を押さえた。


「見てはいけない……

 これは……“定義されていない存在”……」

エルザの声は震えていた。


 レオンが吠える。


「こんなの……敵って言えるのかよ……!!」


(これが……

 侵食者アンノウン……)


(“名前も属性も存在の意味もない”……

 そんなものが、どうして……?)


 その時――


本体から、

言葉にならない“波”が放たれた。


――……(……)……


「うっ……!」

「やめて……!!」

「ぐっ……!!」


 三人が耳を覆い苦しむ中、

ユウはただ、じっと侵食者を見つめた。


**


■ 3 ユウだけが“聞こえた”


(……声……?)


(……違う……

 これは……“意味”の圧力……?)


 確かに……聞こえた。


言葉ではない。

音でもない。


だけど、確かに――

“意志のようなもの” が届いた。


(……タスケテ……)


「……っ!?」


 ユウの心臓が跳ねた。


(助けて……?

 なぜ……?)


(この存在が……助けを求めてる……?)


 信じられない感覚だった。


■ 4 侵食者は“敵ではなかった”のか?


 侵食者の本体は、

まるで“足掻くように”揺れていた。


 世界を侵食する腕を振り回しながら、

しかしどこか――


苦しんでいるように見えた。


(まさか……

 侵食者は……)


(僕たちを喰いたくて来たんじゃない……?)


「ユウ……?

 どうしたの……?」

リリアが涙目で問う。


「ユウ?」

エルザも不安げに覗き込む。


 レオンも息を切らしながら問う。


「相棒……

 お前、何か……聞こえたのか?」


 ユウは震える声で言った。


「……“助けて”って。

 そう……聞こえたんだ……」


「えっ……?」

「まさか……」

「相棒……マジかよ……」


 


■ 5 始原が語る“外界の真実”


 ユウの内側で、

始原が静かに語り始めた。


『侵食者ハ……

 本来ノ“存在”デハナイ……』


(存在じゃない?)


『外界……

 “何モナイ空間”デ、

 偶発的ニ生マレタ……

 未完成ノ“概念ノ屑”……』


(概念の……屑……?)


『存在ヲ持タナイガ故ニ……

 存在ヲ求メテ……

 内界ニ侵食スル……』


(存在を求めて……

 この世界に……?)


『侵食ハ悪意デハナイ……

 “渇望”……ダ……』


(……渇望)


(この侵食者は……

 ただ……“存在したかった”――?)


 ユウは拳を握った。


(戦うだけじゃ……駄目だ)


(こいつは……

 “存在したくて暴走してる”だけだ……)


 


■ 6 ユウ、決意する


「みんな……」

ユウは三人を振り返った。


「侵食者は……敵じゃない。

 悪意でやってるんじゃない……」


 三人は息を呑んだ。


「なら……どうするの……?」

リリアが問う。


「ユウ……あれを……救うの……?」

エルザの声は震えていた。


 レオンは拳を握りしめる。


「相棒……

 お前のいつもの“救いたい病”じゃねぇよな……

 本気で……救おうってのか?」


 ユウは静かに頷いた。


「うん。

 だって……僕も“影”を抱えて生きてる。

 始原を救えたなら……

 “存在できない存在”も救えるはずだ」


 三人は、ユウの言葉に胸を打たれた。


(この人は……

 本当に……優しい……)


 


■ 7 侵食者、本体の“初めての涙”


 その瞬間。


侵食者本体の揺らぎから――

一筋の“色”が落ちた。


 黒でも白でもない。

 世界に存在しないはずの色が、

雫となって落ちる。


「……っ!!?」

「いま……涙を……?」

「嘘だろ……相棒……!」


 ユウは一歩前に出た。


「大丈夫……

 僕がいる……」


■ 8 世界が大きく揺れ動く


ゴオオオオオォォォ!!!!!


 侵食者の本体が、

世界規模の悲鳴を上げた。


 その悲鳴は、

怒りでも憎しみでもない。


“存在できない苦しみ”そのものだった。


「ユウ!!!」

リリアが叫ぶ。


「早く……!!」

エルザが手を伸ばす。


「相棒!!行け!!!」

レオンが背を押す。


 ユウは光影の翼を広げた。


「助けるよ。

 君も……!」


 侵食者の中心へ飛び込む――!

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