創生の心
始原の第二形態。
黒と白の双剣を握り、
その存在だけで空間がひずんでいく。
「……カッコ悪いほど強ぇな……あいつ……」
レオンが拳を握る。
「ユウ……本当に……大丈夫?」
リリアが不安げに腕を掴む。
「……ユウ。
あなたは“願って”いいのよ……
自分を守りたいって」
エルザがそっと手を握った。
ユウは、胸の奥にずっと引っかかっていた“違和感”を感じていた。
(僕は……自分のことを……願ったことがなかった)
始原の言葉は突き刺さる。
『己ヲ守ル願イナキ創生ハ、未完成』
それは、
ユウがずっと避けてきた“真実”だった。
■ 1 始原の双剣が世界を割る
「創生ニ……破壊ノ補正……」
始原が双剣を交差させた瞬間、
――バキィン!!!
空が割れた。
境界の大地は、
光と闇の渦に飲み込まれながら崩れ落ちていく。
「うそ……空が……崩れて……!」
リリアが息を呑む。
「この世界の“外側”が見えてる……
そんな……ありえない……!」
エルザの顔色が真っ青になる。
「くそっ……!
本気の始原は次元が違う……!!」
レオンが歯を食いしばった。
■ 2 ユウ、押し込まれる
始原が瞬きもせず双剣を振り下ろす。
「――創生ヲ試ス」
「くっ……!!」
ユウは創生の翼で受け止めるが――
圧倒された。
光の翼がバチバチと砕けていく。
(こんな……力……!
今の僕じゃ……止めきれない……!)
「ユウ!!」
「ユウ!!後ろ!!」
二人の叫びが響く。
しかし、双剣が迫る。
(みんなを……守らなきゃ……!
僕だけで……!!)
その瞬間。
胸の奥がズキッと痛んだ。
(……でも……
本当にそれでいいの?)
■ 3 リリアとエルザの“涙の言葉”
「ユウ!!聞いて!!!」
リリアの声は震え、涙が滲んでいた。
「ユウは……みんなのために戦ってきたけど……
ユウ自身は、誰に守られてきたの!?」
「……っ」
言葉が出ない。
「私たちは……ユウを守りたいの!
ユウがユウを大事にできるように……
そのためにここにいるんだよ!!!」
リリアは涙をこぼした。
続いてエルザ。
「ユウ……
あなたは“自分を犠牲にしすぎる”。
その優しさは……とても素敵。
でも……それだけじゃダメ……」
「エルザ……?」
「あなた自身を……救わなきゃ……
本当の創生には届かない……!」
(僕……の……)
(僕が……僕を……救う……?)
■ 4 レオン、兄のように背中を押す
レオンは殴り飛ばされながらも笑った。
「相棒……
自分の価値をもっと信じろよ!!
俺も、リリアも、エルザも……
“お前の幸せ”を望んでんだ!!
だから――願えよ!!」
(僕の……願い……)
(みんなを守りたいだけじゃなくて……
僕自身も……守りたい……?)
(そんな願い……持っていい……の……?)
■ 5 ユウの“初めての願い”
双剣が振り下ろされる瞬間。
ユウは目を閉じた。
そして、初めて――
“自分のため”の願いを抱いた。
(……僕は……生きたい。
みんなと……もっと笑っていたい。
この世界で……
みんなと……生きていたい!!)
その瞬間。
ユウの胸が、眩い光で爆ぜた。
■ 6 創生、第二覚醒《心核創生》
「……っ!?
ここ、これは……!」
リリアの声が震える。
ユウの身体から、
これまでとは次元の違う光があふれ出した。
エルザの唇が震える。
「これ……創生の“根源”……!?
ユウが……自己を守る願いを抱いたことで……
創生の心核が目覚めた……!」
レオンが笑った。
「うおお……!
相棒が……神かよ……!!」
ユウの背に現れたのは、
光と氷と雷が自然にまとまった三対の羽。
しかし……
その中心で輝くのは――
ユウ自身の“心の光”だった。
■ 7 始原との“初めて対等な衝突”
「始原……!!」
ユウは拳を握った。
「僕は……
創生を……“僕自身のためにも”使う!!」
始原の瞳がわずかに震える。
「……覚醒……?」
「自己ノ願イ……?
器ガ……自ラ……?」
ユウの拳と、始原の双剣が激突した。
ゴアアアアアアアア!!!!
黒白の空間がひっくり返り、
始原が初めて後退した。
「……後退……?」
始原の双眸が揺れた。
(今なら……いける……!
みんながいて、僕が僕を願えたから……!)
■ 8 四人が背中を合わせる
「ユウ!!!」
リリアが光の手を伸ばす。
「ユウ……!」
エルザが氷の加護を重ねる。
「いくぞ相棒!!」
レオンが雷を纏う。
ユウは三人の手を握る。
「みんな……ありがとう。
僕はもう……迷わない」
「「「行こう!!!」」」
四人が完全にひとつの心で結びついた。
世界が震え――
“最終共鳴”の準備が整い始める。




