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「ルミナス・アーカイブ 〜転生者の記憶〜」  作者: 田舎のおっさん|AIで人生再々起中
第2章:遺跡探索と「影」

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第2章:遺跡探索と「影」

封印の森と古代の残響


放課後、ルミナス・アカデミーの中庭には、夕陽が差し込み、芝生を黄金色に染めていた。

ユウはリリア、レオンと共に、学園裏の森へ向かっていた。——古代の遺跡のひとつが、そこに眠っていると聞いたからだ。


「本当に行くの? あの森、昔から“封印の森”って呼ばれてて、危険なんだけど……」


リリアが心配そうに眉をひそめる。


「だけど、校長先生が言ってた。“転生者の力は、古代魔法と深い結びつきがある”ってな」


レオンが肩をすくめて言う。

あからさまに興味津々であり、危険を恐れている様子は微塵もない。


「ユウが自分の力を知るには、ちょうどいい場所ってわけ」


「……そんな簡単に言うけどさ」


ユウは苦笑した。

異世界に来てまだ間もない。魔法についても、ようやく基礎を学び始めたばかりだ。

だがこの世界に来てからずっと、胸の奥でざわつく何かがある——“自分は、この世界で何かをしなければならない”という、言葉にならない確信のような感覚。


(その答えが、あそこにあるのかもしれない)


そんな予感に突き動かされるように、森へ足を踏み入れた。


◆ 封印の森


学園裏の森は、外から見るよりもずっと深く、暗かった。

木々は天高く伸び、その根元には幾重もの苔が厚く生えている。

空気は冷たく、何か古めかしい力が漂っていた。


「……この空気、やっぱり普通じゃないね」


リリアが小さくつぶやく。


「魔力密度が高い。古代遺跡が近い証拠だ」


レオンは険しい目つきで周囲を見渡す。


その時——


ザッ……ッ!


茂みが揺れた。


三人が同時に構える。

現れたのは、灰色の影——牙をむき出しにした魔獣シャドウウルフだった。


「くるよ!」


リリアが風の魔法陣を展開した。

その背後で、レオンが炎を纏わせた槍のような魔力を構える。


「ユウは下がってろ! まだ実戦は早い!」


「いや……やってみる!」


ユウは両手を前に突き出した瞬間、胸の奥が脈動した。

魔力が暴れ出すように流れ込み、視界が白く染まる。


(まただ……この感じ……!)


次の瞬間——


ガァアアアンッ!!


眩い光の奔流が、魔獣の進路を真横に吹き飛ばした。

地面が抉れ、木々が揺れる。


ユウは呆然と手のひらを見つめた。


「い、今の……俺が?」


リリア「ユウ、あなた……中級魔法以上の威力よ!? そんなの普通、何年も訓練しないと……!」


レオン「……チートすぎだろ、お前」


二人は唖然としながらも、ユウの力に危険を感じていた。


「いや、俺だってわからないよ……! 勝手に魔力が暴走したみたいで……」


その時だ。


森の奥から、不気味な音が響いた。

風が止まり、鳥の声が消える。


——ゴゴゴゴゴ……


「……来た」


レオンが低くつぶやいた。


音の方向に目を向けると、巨大な石門が姿を現していた。

蔦に覆われた門の中央には、古代文字のような紋章が刻まれている。


「これが……古代遺跡……」


ユウは息をのみながら近づいた。


すると紋章が淡く光り出し——


ピシ……ッ


門の前にユウの魔力が吸い寄せられるように流れ込んだ。


リリア「なにこれ……ユウ、反応してる!」


レオン「おまえ、本当に何者なんだ?」


ユウ「俺だって知りたいよ……!」


光は次第に強さを増してゆく。


バチバチバチ……ッ!!


光の柱が天へ向かって伸び、周囲の魔力が震える。

その瞬間、石門が重く開き——黒い靄がゆっくりと漏れ出してきた。


「まずい……封印が解けてる!」


リリアの声は悲痛だった。


門の奥から、赤い目を光らせる影が現れる。


レオン「戦闘だ! ユウ、下が——」


「ダメだ、来る!」


ユウが叫んだ瞬間、魔獣が飛びかかってきた。


影は異形だった。

狼のような輪郭をしているが、身体は霧のように揺れ、触れるものすべてを腐食させる邪悪な気配を放っていた。


「《瘴気獣しょうきじゅう》……!?」


リリアが青ざめる。


「なんでこんな上級魔物が、学園の裏に……!」


迫りくる影獣。

レオンは炎の魔法で迎撃するが、瘴気に触れた瞬間、火は消される。


「クソッ! 火が効かねぇ!」


「風も……押し返せない!」


リリアの魔法も霧に吸われて消える。


瘴気獣は大口を開き、ユウめがけて突っ込んできた。


(また……みんなを守れないのか……?)


胸が熱くなり、心臓が焼けるように脈打つ。


《——呼べ》


(……え?)


頭の奥で、まるで誰かの声がした。


《我を呼べ、転生者……》


目の前の光景が、ゆっくりと止まる。

ユウの手のひらに黒い紋章が浮かび上がった。


「これ……遺跡の紋章……?」


光が爆ぜ——


ドォオオオンッッ!!!


眩い光が瘴気獣を吹き飛ばし、地面を深々と抉った。


リリア「すご……!」


レオン「もう笑うしかねぇだろ……」


ユウの身体から溢れる光が、遺跡の紋章へ導かれていく。


石門の奥で、誰かの声が響いた。


《ようやく見つけた……“始原の継承者”よ》


ユウ「……始原?」


その言葉の意味も、声の正体もわからない。


ただひとつだけ確かだった。


ユウの転生には、この世界の根幹に関わる理由があるということ。


光が収まった時、瘴気獣の姿は消え、遺跡の門は静かに閉じた。


リリア「ユウ……今のは?」


ユウ「……わからない。でも、俺の中で何かが目を覚ました気がする」


レオン「……あーあ。もう完全に巻き込まれたな、俺たち」


三人はしばらく言葉を失ったまま、夕闇が濃くなった森を出た。


背後の遺跡は、ただ静かに沈黙していた。


だが——

その奥では、再び目覚めるべき存在が蠢いていた。

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