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「ルミナス・アーカイブ 〜転生者の記憶〜」  作者: 田舎のおっさん|AIで人生再々起中
第二部「七つの封印編」

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氷結の女王

あの夜から三日が経った。

 ユウは古代資料の解読に没頭していた。七つの封印——その真実を知ってから、彼は眠れなくなっていた。

 研究室の机には、何十枚ものメモが散らばっている。

「七つの封印……一つ目は影の王。そして残り六つ……」

 資料には断片的な情報しかない。

 だが、一つだけ確かなことがあった。

 自分の覚醒が、全ての封印を解放する鍵になっているということ。

「僕が……引き金なのか……」

 自分を責める思いと、それでも戦わなければならないという使命感が、胸の中で渦巻く。

 その時——

 窓の外が、ふっと白くなった。

「……雪?」

 季節は初夏のはず。雪など降るわけがない。

 窓に近づくと——

 学園の外が、真っ白な霧に包まれていた。

 そして気温が、急激に下がり始めた。

「これは……!」

 ユウは資料を閉じ、外へ飛び出した。

■ 1 白い霧

 廊下に出ると、生徒たちが騒いでいた。

「寒い……! 何これ!」

「外が真っ白で何も見えないよ!」

「気温が下がりすぎてる……!」

 ユウは窓の外を見た。

 学園全体が白い霧に覆われ、視界がほとんど効かない。

 そして地面には——薄く氷が張り始めていた。

(まさか……第二の封印……!?)

 その時、学園全体に警報が鳴り響いた。

『緊急警報! 学園北側に未確認の巨大魔力反応を確認! 全生徒は速やかに避難せよ! 繰り返す——』

 ミレイア学園長の緊張した声が響く。

 ユウは走り出した。

 リリアとレオンを探さなければ。

■ 2 集結

 中庭で、ユウは二人と合流した。

「ユウ!」

 リリアが駆け寄ってくる。厚手のローブを羽織っているが、それでも寒そうだ。

「この寒さ、尋常じゃねぇ……」

 レオンも息を白くしながら言う。

「二人とも……」

 ユウは二人の顔を見て、決意を固めた。

「第二の封印が目覚めたんだと思う」

「やっぱり……」

 リリアが唇を噛む。

「あの古代資料に書いてあった……」

 ユウは頷く。

「影の王は七つの封印の一つに過ぎなかった。そして僕の覚醒が、連鎖的に他の封印を解いてしまう……」

 レオンが肩を叩く。

「自分を責めるな。お前は世界を救ったんだ」

「でも……」

「でも、じゃねぇ」

 レオンが笑う。

「また戦えばいいだけだろ。俺たち、ルミナス・アーカイブだ」

 リリアも頷く。

「そうよ。一緒に戦いましょう、ユウ」

 ユウは二人を見て——微笑んだ。

「……ありがとう」

 そして三人は、魔力反応のある北側へと走った。

■ 3 氷の玉座

 学園の北門に着いた時、そこはもはや別世界だった。

 地面は完全に凍りつき、木々は氷の彫刻のように固まっている。

 空気は凍てつくほど冷たく、吐く息が瞬時に白い結晶になって落ちる。

「これは……」

 リリアが震える声で呟く。

 そして——

 その光景の中心に、"彼女"がいた。

 巨大な氷の玉座。

 そこに座る、白いドレスの女性。

 腰まで届く銀髪。青白い肌。氷のように透き通った瞳。

 彼女は優雅に立ち上がると、三人を見下ろした。

「ようこそ」

 美しいが、どこか感情のこもらない声。

「始原創生の器よ。そして——その仲間たち」

 ユウは一歩前に出る。

「……君が、第二の封印……」

「そう」

 女性は微笑んだ。

「私の名はエルザ。氷結の女王と呼ばれる存在」

 その瞬間、周囲の気温がさらに下がった。

 地面に敷かれた氷が、ミシミシと音を立てて厚くなっていく。

「君の目的は何だ! なぜ学園を襲う!」

 ユウが叫ぶ。

 エルザは首を傾げた。

「襲う? 違うわ」

 彼女は手を広げる。

「私はただ——この世界を美しくしたいだけ」

「美しく……?」

「そう。永遠の冬で覆い、全てを氷の彫刻にするの」

 リリアが息を呑む。

「そんなことしたら……生き物は全て死んでしまう……!」

「それの何が問題なの?」

 エルザは無表情のまま答える。

「生命など、儚く不完全なもの。時が経てば朽ちて、醜く崩れていく」

 彼女の瞳に、狂気とも呼べる光が宿る。

「でも氷にすれば——永遠に美しいまま」

「狂ってる……!」

 レオンが剣を抜く。

「そんな独りよがりな理屈で、世界を滅ぼすつもりか!」

「独りよがり?」

 エルザが笑う。

 初めて感情らしきものを見せた——しかしそれは、冷たい嘲笑だった。

「あなたたちこそ、自分の命に固執しているだけでしょう?」

 彼女が指を鳴らす。

 次の瞬間——

 三人の足元から氷柱が突き出した。

「うわっ!」

「きゃっ!」

 三人は咄嗟に飛び退く。

 エルザは玉座から降りた。

「さあ、始原創生の器よ。あなたがどれほどの力を持っているか——見せてもらうわ」

 彼女の背後に、巨大な氷の結晶が浮かび上がる。

 それは複雑な幾何学模様を描きながら回転し、凄まじい冷気を放っている。

 ユウは拳を握った。

 胸の奥で、始原創生の力が目覚める。

「……わかった。君を止める」

 白と青の光が、ユウの身体を包み始める。

 エルザの瞳が、興味深そうに輝いた。

「美しい光ね。でも——」

 彼女が手を伸ばす。

「それも凍らせてあげる」

 凄まじい冷気が、三人に向かって放たれた。

■ 4 氷の猛攻

「くそっ! 《フレイム・ウォール》!!」

 レオンが炎の壁を展開する。

 熱波が冷気とぶつかり、白い蒸気が立ち上る。

 しかし——

 炎がゆっくりと青白く変色していく。

「な……炎が……凍ってる!?」

「そんな……ありえない!」

 リリアが驚愕する。

 炎の壁は完全に氷の壁に変わり——砕け散った。

 エルザが優雅に微笑む。

「私の氷は絶対零度。全ての物質の運動を停止させる」

「だから……炎さえも凍る……!」

 ユウが呟く。

 エルザは続ける。

「炎も、風も、光さえも——全ては私の支配下で凍りつく」

 彼女が両手を広げる。

 周囲の空気が白く固まり、無数の氷の刃が出現した。

「《氷刃乱舞》」

 氷の刃が三人に向かって飛来する!

「みんな、僕の後ろに!」

 ユウが前に出る。

「《創生障壁》!!」

 白金色の光の壁が展開され、氷の刃を防ぐ。

 しかし——

 光の壁にも氷が這い上がってくる。

「光さえも凍らせるなんて……!」

 リリアが震える。

 ユウは歯を食いしばる。

 このままでは——押し切られる。

(どうすれば……この氷を止められる……?)

 その時、胸の奥で声が聞こえた。

 始原と創生の残滓——

《氷を溶かすのではない》

《凍結という現象そのものを否定せよ》

 否定……?

 そうか——物理現象を打ち消すんだ!

 ユウは目を閉じ、力を集中させる。

 始原創生の力が、身体の奥底から湧き上がってくる。

「《始原創生・現象否定》!!」

 白と青の光が爆発的に広がった。

 周囲の氷が——消えた。

 溶けたのではない。存在そのものが否定され、消滅したのだ。

 エルザが初めて驚きの表情を見せる。

「現象否定……!? まさか、そんな高位魔法を……!」

 ユウは剣を構える。

「もう一度言う。君を止める」

 エルザの表情が険しくなる。

「……面白い」

 彼女の周囲に、さらに強大な冷気が集まる。

「では——本気で行くわ」

 氷の結晶が巨大化し、複雑な魔法陣へと変化する。

 そして——

 背後の空間が歪み、何かが現れようとしている。

「《氷竜召喚》!!」

 巨大な氷の竜が、咆哮とともに姿を現した。

 全長二十メートルを超える巨体。

 全身が透明な氷で構成され、内部には青白い魔力が渦巻いている。

「うそ……でしょ……」

 リリアが呆然とする。

 レオンも青ざめる。

「あんなの……どうやって倒すんだよ……!」

 氷竜が口を開き——

 凄まじい冷気のブレスを放った。

「くるぞ!!」

 ユウが叫ぶ。

 三人は必死に飛び退くが、ブレスが地面に触れた瞬間——

 半径十メートルが完全に凍結した。

「一撃で……こんな……!」

 エルザが玉座に座り直す。

「さあ、始原創生の器よ」

 彼女は冷たく微笑んだ。

「あなたの全力を見せてちょうだい」

 氷竜が再び口を開く。

 ユウは深く息を吸った。

 胸の奥で、始原創生の力が激しく脈打つ。

(行くしかない……!)

「二人とも! 僕の魔力に合わせて!」

「わかった!」

「任せろ!」

 三人の魔力が共鳴し始める。

 白と青の光、赤い炎、緑の風——

 三つの力が一つに溶け合っていく。

「行くよ——《トリニティ・バースト》!!」

 三人の魔力が融合した巨大な光弾が放たれ——

 氷竜のブレスと激突した。

 ドゴォォォォンッ!!!

 凄まじい爆発が起こり、白い光が世界を覆った。

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