覚醒の境界
深い闇と眩い光が入り混じる世界。
ユウは、また意識の内側へ引きずり込まれた。
しかし今回は違う。
前回は闇だけの世界だったが――
今回は、闇と光が二つに分かれ、対峙していた。
片方は黒い影。
“始原”。
もう片方は白金色の輪郭を持つ人影。
“創生”。
二つの力が互いに押し合い、世界そのものを揺らす。
始原《我が器に勝手に触れるな、創生》
創生《お前こそ、この魂を独占するつもりか。
この少年は“二つの系譜”を継ぐものだ》
ユウは叫ぶ。
「勝手に決めるなよ!!
俺の身体なんだぞ!!」
二つの存在がユウに向く。
始原《少年よ。お前は我が力を受け入れ、第二段階に至った》
創生《そして今、お前の魂は“創生の欠片”にも適合した。この世界には珍しい、完全なる器だ》
ユウ「そんなこと知らない!!
俺は……ただみんなと生きたいだけなんだ!!」
始原《ならば力を制御するために、さらに進め》
創生《私も同意しよう。二つの力を持つならば、覚醒の境界を超えねばならない》
ユウ「覚醒の境界……?」
創生《第三段階――。
始原と創生、二つの根源が並立する唯一の境地》
始原《その領域に至ることで、お前は“存在の崩壊”を免れる》
ユウは息を呑む。
つまり――
第三段階に達しなければ、自分は死ぬ。
創生《だが危険だ。
肉体も魂も、覚醒の負荷で砕け散るかもしれぬ》
始原《それでも進むのか?》
ユウは拳を握る。
思い浮かぶのは――
レオンの叫び。
リリアの涙。
仲間たちの顔。
「……戻りたい。
あいつらのところに」
創生《ならば決めよ、ユウ》
始原《第三段階へ至る覚悟を》
ユウ「もちろんだ……!」
二つの存在が同時に手を伸ばす。
光と闇がユウの胸へ突き刺さる。
「ぐあああああああああああっ!!」
魂が引き裂かれるような痛み。
身体が燃えるような熱。
それでも――ユウは叫ぶ。
「絶対に……負けない!!」
光と闇が爆発し、世界が砕ける。
次の瞬間――
ユウの身体が現実世界で跳ね上がった。
レオン「ユウ!! 戻ってきたのか!!」
リリア「ユウ!! 意識は!? 大丈夫なの!!?」
ユウの瞳がゆっくりと開き――
そこには白と青、二つの光が宿っていた。
レオン「……お、おいユウ……目が……二色に……!」
ユウは静かに立ち上がる。
胸の奥から、以前とは比べ物にならない、
“静かで圧倒的な力”が溢れていた。
ユウ「……多分……
俺、“第三段階の入り口”に立った」
リリアは震えた声で言う。
「ユウ……あなた……もう“人間”じゃない……」
レオンも呆然とつぶやく。
「どこまで……行くんだよ、お前……」
ユウは二人を見て、微笑んだ。
「どこまでも行くよ。
みんなを守るために」
――その時。
遺跡の天井が砕け、巨大な魔力が降り注いだ。
黒と金の混ざり合った、神話級の気配。
リリア「なん……なの……この魔力……!」
レオン「やべぇ……桁が違う……!」
遺跡の奥から、巨大な影が姿を現す。
六つの翼。
燃える黄金の瞳。
瘴気と神光を同時に纏う異形。
リリアが震えながら名を告げた。
「……“混源獣”……!
始原と創生の力を受けて誕生した、伝説級の怪物……!」
レオン「なんでそんなもんがここにいるんだよおおお!!」
ユウは静かに、その怪物を見据えた。
第三段階の力が体中に満ちる。
ユウ「……ちょうどいい。
力のテスト相手には、丁度いいかもしれないな」
レオンとリリアが叫ぶ。
「ふざけんな!!」「無茶よ!!」
しかしユウの瞳には、はっきりとした自信が宿っていた。
――ユウの“真の覚醒”が、始まろうとしていた。
次回
第10話──混源獣との死闘(第三段階解放)




