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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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77話 外伝『あなたの腕の中で15』報告

アデルはとても辛そうな顔をしているのに、エドワードはとても嬉しそうだ。


どうしてそんな顔をしているの? 


アデルが不思議に思ってエドワードを見ていると、エドワードがコホンと一つ咳ばらいをする。


「アデル、よく聞いて。父上が、国王陛下が、俺たちの交際を認めてくれたんだ。」


「・・・えっ?・・・う、うそ・・・?」


アデルは、エドワードの言葉をすんなりと飲み込むことができなかった。


「ははは、嘘じゃない。本当のことなんだ。」


「そんなの・・・、信じられない。」


「本当なんだってば。それを証拠に、護衛のフレッドもカイルも一緒に来ている。もし、国王が認めてなかったら、俺はここには来れないよ。この二人が俺を抑え込んで動けなくしてしまうからね。」


アデルはフレッドとカイルを見たが、まだ信じられなかった。


「フレッドさん、カイルさん、本当なのですか?」


「はい。陛下には護衛をしっかりと務めるようにと仰せつかっております。」


フレッドが真面目な顔で言うと、カイルも「その通りです。」と同調する。


「でも・・・、婚約者がいるのに、どうして・・・?」


「そのことだけど、父上が言うには、解消するには時間がかかるらしいんだ。だから気長に待てと言われたよ。ともかく、もう、誰にも気兼ねせずに俺たちは会っていいんだ。約束だよ。今まで通りに付き合ってくれるね。」


アデルにとっては晴天の霹靂で、まさか、こんなに早く障壁が取り除かれるとは思ってもみなかった。


愛するエドと、これからも会って良いのだと思うと、ジワリと涙があふれてくる。


「エド・・・、本当なのね。私・・・、どうしたらいいのかわからない・・・。」


「ア、アデル・・・」


アデルの涙を見ておろおろするエドであったが、ポケットからハンカチを取り出し、アデルの涙をそっと拭った。


「アデル、いつも通りでいいんだよ。あなたの休日に合わせて俺も休日にする。そして今まで通り、一緒に過ごそう。ああ、でも、今まで以上に仕事に励むって父上と約束したんだ。だから、会う日は減るかもしれない。」


「あなたに会うことが許されたのなら、それくらい・・・我慢します。」


「ああ、アデル、愛しているよ。」


エドワードは、ぎゅっとアデルを抱きしめた。


そのままキスをしたい衝動にかられたが、後ろに控えているフレッドとカイルの視線を感じ、それ以上のことはしなかった。


「今日はこの報告をしに来たんだ。では、俺たちは帰るよ。次の休日にまた会おう。」


三人を見送った後、アデルはふわふわした気持ちで足が地についていないような気がした。


まだ、実感がわかないわ・・・。まるで夢の中にいるみたい・・・。




屋敷の中に入ると、母マーゴットが心配そうな顔でアデルを待っていた。


昨夜、アデルは屋敷に戻ってから、一人になりたいと言って誰にも会おうとしなかった。


マーゴットが心配して声をかけたが、アデルの気持ちは固く、気持ちが落ち着いたら話しますと言うだけで、エドワードとの間に起こったことはまだ話していない。


今日エドワードが来ても、アデルは屋敷の中には入れずに外で話すことを選んだ。


いったい二人の間に何があったのだろうと、マーゴットの心配は膨らんでいた。


「アデル、もし良ければ、何があったか教えてくれる?」


アデルはマーゴットの顔を見て、昨夜からどれだけ心配をかけたのだろうと、申し訳ない気持ちになった。


だが、まだエドワードの婚約が解消されてないのだから、事実を話せば、母親としての心配がますます増えるかもしれない。


エドワードの身分も置かれている状況も、全てを話すのは、何もかもが終わってからにしようとアデルは思った。


「お母様、心配かけてごめんなさい。エドと喧嘩してしまったの。でも、もう大丈夫よ。さっき仲直りができたの。またいつも通りにエドと会えるわ。」


「そう・・・。それなら良かったわ。もう大丈夫なのね。」


娘のことを心から心配しているマーゴットは、エドワードのことをまだ子爵令息だと信じている。


アデルはマーゴットのためだとは思いながらも、ちくりと胸が痛んだ。




エドワードが約束した通り、アデルの休日に合わせてエドワードも休暇をとり会いに来た。


すごく嬉しそうな顔をしているが、目の下にうっすらクマができている。


アデルは、この日のためにエドワードが相当無理したのではないかと思う。


「あの・・・、会いに来てくれるのは嬉しいのですが、無理はしないでくださいね。エドの身体が心配です。」


その言葉に、エドワードはますます嬉しそうな顔をする。


「アデル、心配してくれるんだね。でもね、俺は、今すごく仕事が楽しいんだ。この仕事が終わればアデルに会えるって思うと、俄然力がみなぎってくる。今までも仕事は大切にしていたけれど、今と比べたら無機質な世界の中を漂っていたように思うんだ。今は、俺の世界が灰色から色鮮やかな世界に変わったんだよ。それもこれもアデルのお陰だ。」


エドワードのそばには護衛のフレッドとカイルがいるのだが、フレッドは半ば呆れて聞いていた。


恋は人を変えると言うが、こうも変わるものなのか・・・


カイルは相変わらず、思春期の弟を見守るような目で見ていた。




アデルとエドワードのデートは、ごく普通の恋人同士のように平凡なもので、カフェでお茶を飲んだり、公園を散策したり、時には手を繋ぎ、時にはキスをして仲の良い時間を過ごしていた。


それからしばらく経ったある日、アデルがエドワードを屋敷で待っていると、珍しくビクターも一緒にやって来た。


「まあ、ビクター様、今日はどうしたのですか?」


ビクターが実は北に位置するノースロップ王国の第二王子であることを、アデルはエドワードから聞いている。


「君に話したいことがあってね。僕一人で来たら、こいつが怒るだろうから、連れてきてもらったのだ。」


隣にいるエドワードが「当然だろ!」と拗ねたように言う。


アデルはぷっと吹き出しかけたが、なんとか我慢してビクターに視線を移した。


「お話とは?」


「しばらく国に帰るから、それを伝えておこうと思ってね。ほら、ノースロップに来たくなったらいつでも訪ねてくるように言っただろう?君がその気になったのに、僕がいないのでは話にならないからね?」


「だから、アデルはお前の国になんて行かないって。」


エドワードが少し不機嫌そうに口を挟んだ。


「国に帰ると言っても、一週間したら戻ってくるから、それ以降はいつでもどうぞ。」


「まあ、一週間ですか? ずいぶん慌ただしいのですね。」


「ああ、実は妹の命日なんだ。母上は、妹の死をなかなか受け入れられなかったのだが、ここ数年でやっと受け入れることができてね。神殿で祈りを捧げるのだが、僕がそばについて支えてあげたいと思っている。」


「まあ、そうなのですね。では、道中お気をつけてお帰りくださいませ。」


「ああ、ありがとう。ところで、君をスカウトする話。僕は本気だから。その気になったら、いつでもおいで。」


「ビクター、しつこいぞ!」


エドワードはむっとしながら言うのだが、ビクターは気にも留めずに、笑いながら去っていった。




この日もいつもと変わらず、二人の楽しく甘い時間を過ごしていたのだが、アデルの心の中にある不安が完全に拭い去られているわけではなかった。


婚約者のフィオナ嬢は今頃どうしているのだろう? 


もうエドワードに新しい恋人ができたことを知っているのだろうか? 


だとしたら、何を思っているのだろうか・・・。


気長に待つとは、いったいどれくらい待てばよいのだろうか?


王族が進めることだから、自分が思い悩んでも詮無いことだとわかっている。


だから、アデルはふたをした。


できるだけ考えないようにしたのである。


ところが、考えずにはいられない出来事がアデルに訪れた。


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