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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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70話 外伝『あなたの腕の中で8』初デート

アデルとエドワードに見つからないように隠れて護衛を続けるフレッドとカイルであるが、主の変わりようにフレッドは戸惑い、カイルは思春期の弟を見ているように感じていた。


「カイル、殿下の変わりようを、そなたはどう思う?」


「ああ、確かに変わられた。初めての恋に夢中になっているようだが、決して公務を疎かにしていない。さすがは殿下だと思っている。」


「まあ、確かに、仕事は相変わらず的確で、問題なくこなされているが・・・。」


「そうだろう? それに、アデル嬢に会う時間を確保するために、さらに仕事に対する集中力を上げたと思うぞ。」


「それに関しては否定はしない。だが・・・、カイル、殿下は、今日こそは本当のことを言うのだろうか。早く真実を告げないとお互いのためにならないと思うのだが・・・。」


「幼い頃から一緒に過ごしてきたフレッドだからこそ、そう思うのは仕方がないことだとは思うが、そんなに焦らなくても良いと思うぞ。私は、殿下にとってこの恋は大きな成長になると思うのだ。臣下がこんなことを言うのも何だが・・・。」


「だが、傷つくのはアデル嬢だぞ。できるだけ早い方が・・・。」


「確かに殿下は初めての恋に浮かれているようだ。だが、今まで国と民のことしか考えなかったお方が、それ以外のことも考えるようになったのだ。殿下は聡明なお方だ。信じて待つのも良いではないか。」


「カイルの言うことにも一理あるとは思うが・・・」




エドワードは歩き始めてからずっとアデルの手を握っていたが、その感触に感動していた。


病院で初めて見たアデルの手は、てきぱきとまったく無駄な動きはなく、的確にフレッドの傷を消毒し、薬を塗り包帯を巻いた。


その手を見て、きれいな手だとは思ったが、隙の無い動きに機械のようだとも感じていた。


だが、こうやって手を握ると、温かくて柔らかくて、か弱く小さい女性の手なのだ。


ああ、俺が守ってやりたい・・・


誰にもこの手を渡したくない・・・


エドワードのアデルに対する想いはますます膨らんでいった。


予定していたおしゃれなカフェでお茶を飲み、一緒に店を巡った。


アデルが何気なく見ていた宝石店のウインドウの中に、キラリと光る青い宝石で作られたネックレスを見つけた。


大粒の宝石をトップにあしらったネックレスである。


大粒の宝石の他に装飾のないシンプルなデザインが、宝石の青色を強調している。


まあ、まるでエドワードの瞳みたい・・・。


アデルがじーっとネックレスを見ていると、エドワードも一緒に覗き込む。


「中に入ろう。」


「えっ、でも、ここは高級店でどれも高いから・・・」


アデルが躊躇していると、エドワードは握った手を引っ張ってアデルと一緒に店の中に入った。


「今日の二人の記念だよ。」


店主にウインドウに飾っている青い宝石のネックレスが欲しいと言うと、


「お目が高い。あのサファイアはめったにお目にかかれない最高級品でございます。石の良さを強調するためにシンプルなデザインにしているのですよ。」


と、いかに素晴らしい宝石であるのかを説明してきた。


値段を聞いて、アデルはびっくりしたのだが、エドワードは平然としている。


アデルは、子爵の次男が出せる金額ではないのでは?と心配になったのだが、その顔を見てエドワードはふっと微笑んだ。


「アデル、今日は君に何かプレゼントしたいと思っていたんだ。お金のことは気にしないで受け取ってくれる?」


「え?ええ、エド・・・、本当にありがとう。」


「喜んでくれて嬉しいよ。俺がつけてあげる。後ろを向いて。」


アデルはくるりと反転すると、ピンクブロンド髪を束ねて前に垂らした。


露わになったアデルのうなじにエドワードはドキリとしたが、なんとかごまかして平静を装い、ドキドキしながらネックレスを付けた。


「見てごらん。よく似合っているよ。」


鏡に映るアデルの胸元に、キラリと大粒のサファイヤが光る。


まるで胸元にエドワードを抱いているような気がして、アデルはポッと赤くなるのであった。


一緒に鏡を見ているエドワードは、鏡に映るアデルの赤く染まった頬をみてドキリとした。


うなじから頬にかけて熱を帯びたようなアデル。


このまま抱きしめてしまいたいという衝動に駆られる。


だが、そんなことは店内ではできないと首を振る。


もっと女性に慣れた男性であるのなら、誰に見られていようが構わず抱きしめることもキスをすることもできるのかもしれない。


だが、恋愛初心者のエドワードにとって、それはとてもハードルが高いものだった。


誰にも見られない場所で、アデルと二人きりになりたい・・・。


店を出れば、護衛のフレッドとカイルが隠れてエドワードを見守っているのだが、それは絶えず監視されているのと同義。


どこかで、二人きりになりたいという欲望を、エドワードは振り払うことができなかった。


フレッド、カイル、許せ・・・


「店主、裏口から出たいのだが案内してくれるか?」


ネックレスの代金を払った後で、エドワードは店主に問う。


大金を受け取った店主は、ほくほく顔でその要望に応えた。


「どうぞどうぞ、こちらでございます。それではお気をつけてお帰りくださいませ。」


丁寧に礼を言うと、裏口のドアを開けて二人を送り出した。


「エド、どうして裏口から?」


アデルが不思議そうな顔をする。


「こっちの方が行きたい場所に近道なんだ。さあ、行こう。」




宝石店の近くで、フレッドとカイルは、二人が出てくるのを待っていた。


だが、いつまでたっても出てこない二人に、フレッドはいら立ち始める。


「どうして出てこないんだ?」


「フレッド、もし、私の弟だったら、初デートを監視されるのなんて、きっと嫌がると思う。」


「いや、殿下はそなたの弟ではない・・・、あっ、もしかして・・・」


フレッドが店の窓から中を覗くと、二人はいなかった。


店の中の宝石を見ている客は、まったく見ず知らずの客だった。


「しまった!で、殿下が・・・」


「やはりな・・・。」


カイルは両掌を上に向け、肩をすくめてさもありなんという顔をする。


「フレッド、町を知り尽くした殿下のことだから問題は起きないと思うが・・・、護衛は私たちの仕事、探しに行くしかないな。」


「ああ、言われなくてもわかっている。だが・・・、いったいどこへ行ったんだ?」




町を何度も視察しているエドワードは、どこへ行けば誰にも見られずに二人きりになれるのか知っていた。


公園の中に、低木に囲まれたベンチがある。


そこなら、フレッドにもカイルにも見られることはない。


「エド、次はどこへ行くの?」


「一緒に公園を散歩したいと思っていたんだ。花が咲いているしきれいだよ。」


「ふふふ、私はエドとなら、どこへ行っても楽しいわ。」


二人は手を繋ぎ、公園内の道を散策した。


そして、エドが目指していたベンチに着いた。


「疲れただろう。ちょっと休憩しよう。」


エドワードに促されて、アデルはベンチに座る。


エドワードはずっとアデルの手を握って離さない。


エドワードもアデルも無言になって、二人の間に静寂が訪れた。


小鳥のさえずりがチュンチュンと聞こえてくる。


風のさらさらと流れる音も聞こえてくる。


その静けさの中、二人とも胸のドキドキとした鼓動が相手に伝わらないかと恥ずかしくなる。


「ア、アデル・・・」


「は、はい・・・。」


「抱きしめてもいい?」


アデルは真っ赤になって頷く。


エドワードはそっとアデルを抱きしめた。


初めはそっと、だが、しだいに手に力が入り、最後は強くぎゅうっと抱きしめた。


「アデルの良い香りがする・・・。」


「・・・」


アデルは嬉しさと恥ずかしさで、言葉が出てこない。


ただただ、エドワードに身を任せて抱かれていた。


エドワードの抱きしめている力が少し緩んだ。


「アデル、こっちを見て。」


アデルは言われた通りにエドワードに視線を移すと、エドワードの顔が近づいて来た。


アデルはそっと目を閉じた。


アデルの唇にエドワードの暖かく柔らかい唇が重なる。


初めは優しかった重なりが、徐々に激しさを増し、いつの間にかアデルの口腔内はエドワードの舌で蹂躙されていた。


アデルは舌が絡み合う濃厚なキスに、初めは戸惑いはしたが、決して嫌だとは思わなかった。


むしろ、エドワードとのこの行為は、アデルの胸を熱くした。


二人は、初めてのキスに夢中になっていた。


ああ、エド・・・、愛する人に唇を奪われることが、こんなにも心地良いよいなんて・・・。


ああ、アデル・・・あなたの唇はなんて柔らかいんだ・・・でも、唇だけじゃ物足りない。もっと深く愛し合いたい・・・。


木に囲まれた二人の気が遠くなるほどの長いキスを、小鳥だけが見ていた。

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